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ドレスコーズ 『12月24日のドレスコーズ』 恵比寿The Garden Hall公演

ドレスコーズ | 2017.01.06

 その朝の東京には抜けるような青空が広がっていた。今夜はきっと澄んだ夜になるだろう。陽が沈んだばかりの恵比寿はまだ明るさが残り、イルミネーションもその美しさを十分に発揮できないでいる。そんな中、2016年のクリスマスイヴを満喫しようと、辺りはカップルや家族連れで混雑していた。後に志磨の口から“地獄”と例えられる光景が、今まさに繰り広げられていたのだった。

 ホールの中は暖かかった。それは温度管理の行き届いた暖房のせいだけでも、温もりあるオレンジに包まれた客席のせいだけでもなく、これから始まるショウの雰囲気を予感させるものだった。まだ誰もいないステージは、緑と赤のクリスマスカラーに彩られている。椅子に腰かけ、どこかにこやかな表情で開演を待つ人々。もうすぐ志磨にかけられる夢のような魔法を誰もが待ち望んでいたに違いない。

 開演時刻をほんの少し過ぎた頃、会場の灯りが消えた。ゆっくりとメンバーが入場。ピンとピアノが鳴らされると、各々が静かに音を重ねてゆく。弦楽隊によるオープニングナンバーは「Silent Night」。志磨は後ろを向き、右手で指揮をとる。後ろ姿も長いシルエットも絵になる男が、ゆっくりとこちらを向いた。「序曲(冬の朝)」。右手を挙げ朝日を仰ぐ志磨。かつてバンドを共にした盟友・栗本ヒロコ、菅大智がそこにいることの不思議と、そして喜び。「恋するロデオ」でステージが明るくなった瞬間の何とも言えない幸福感。ホーンセクションは3人、ストリングスは4人。今日のドレスコーズ、メンバーは総勢16人。志磨の口から今日のライヴが3部構成であることを告げられる。『ひとりぼっちの皆さんにおくります』。「Lily」。可愛らしい弦の音色とパーカッション、バンジョーがクリスマス感を醸し出す。クラシックアレンジが施された「新Trash」。シャンソンよろしく歌い語る志磨。『僕はクズだ』と歌った彼は、今とても自由なのだと再認識する。この曲が心地よく響くのを、すべてクリスマスのせいにしてみよう。ボーイズ&ガールズの優しさに満ちたダイアローグ「ダンデライオン」。温かい拍手が沸き起こる。『今年、最低な1年だったとしても、今日、私がここでケリをつけてさしあげましょう』。ありがとう。ホーンが加わった「あん・はっぴいえんど」でキッスの雨が降り注ぐ。『最低な未来へ!「贅沢とユーモア」!』。生のホーンセクションが加わる贅沢。「みなさん、さようなら」。観客の手拍子に乗せ、華麗なターンをキメた志磨は、なんだかはしゃいでいるようにも見えた。

 休憩を挟んだ第2部。さっきまでの幸福な空間は、あっという間に真っ黒に塗りつぶされた。志磨をはじめバンド全員が黒ずくめの衣装に身を包んでいる。ベースはナガイケジョー、ギターは有島コレスケ、ドラムは菅大智。出来たばかりだという新曲「common式」では毛皮のマリーズにもドレスコーズにもなかった破壊力ある爆弾を投下。これは狂気の沙汰。食い入るように聴き入る観客の度肝を抜く。『ものすごいものを作ってしまった。僕は今、燃えている』。MCもそこそこに演奏されたのはまたしても新曲「エゴサーチ・アンド・デストロイ」。電子音×生バンドのケミストリー。ついついスリリングなサウンドに気を取られてしまうが、そこから立ち昇るメロディは際立っている。だが目はその場を走り続ける志磨を見つめているしか術がない。呆然とする観客を尻目に、演奏が終わるとすぐさまステージを去るメンバー。黒い黒いこの時間は一体なんだったのか。ドレスコーズに予定調和という言葉はないのだと思い知らされる。

 三度目のお色直しをして登場する志磨。呆気に取られたままの客席を、また一瞬で多幸感に包み込む。第3部。『クリスマスソングで踊ろう!』。ビッグ・バンドスタイルでのカバー「Sleigh Ride」「Jingle Bells」。クリスマス気分再び。板倉真一のピアノに導かれ、ストリングス隊もステージに上がる。聴き覚えのあるフレーズに手拍子。ステージギリギリまで歩み寄る志磨。ステージからは足が半分はみ出ている。「愛のテーマ」で再び投げキッスを。彼は今日、何度投げキッスをしただろう。『どうもありがとうございました!』。大きな肉声が客席に響き渡る。ハッピーな時間というのは、なんとあっという間に過ぎてしまうものなのだろう。とても幸せだ。そしてキュッと切ない。

 アンコールに応えて、再びフルメンバーがステージに。『すべての幸せを祈って』。ラストは毛皮のマリーズが最後に残した曲「クリスマス・グリーティング」。バンマス・長谷川智樹のアコギに乗る、すべてを洗い流すような、柔らかで清らかな歌声。『おやすみ 僕の愛するきみよ おやすみ すべての思い出よ』。思いきり腕を伸ばし、高く高く掲げられたピースサイン。この日をずっと忘れることはないだろう。

 すっかり夜に包まれた恵比寿の街。美しさを増した煌びやかなイルミネーション。ごったがえす人々の波をかき分けながら駅へと向かう。『東京でここがいちばん、ロマンチックな夜よ』。数日前に綴られた志磨の言葉を思い起こしながら、パンパンに人が詰まった、ゆっくり進む歩く歩道を足早に逆方向へ。さあ、暖かいうちに家へと急がなければ。夢のような1日よ。『おやすみ 東京』。メリークリスマス&ハッピーニューイヤー。

 冬至を過ぎ、冬を超え、あとは春を待つばかり。日射しがほんのりと温かくなる季節、ドレスコーズ5枚目のアルバムが届けられる。

【撮影:古渓一道 森好弘】
【取材・文:篠原美江】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル ドレスコーズ

リリース情報

人間ビデオ[通常盤]

人間ビデオ[通常盤]

2016年10月12日

キングレコード

[CD]
1. 人間ビデオ(フル3DCGアニメーション映画「GANTZ:O」主題歌)
2. コミック・ジェネレイション(映画「溺れるナイフ」主題歌)
3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
4. コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)

セットリスト

ドレスコーズ 『12月24日のドレスコーズ』
2016.12.24@恵比寿The Garden Hall

  1. M-1.Opening(Silent Night)~序曲(冬の朝)
  2. M-2.恋するロデオ
  3. M-3.Lily
  4. M-4.新 Trash
  5. M-5.ダンデライオン
  6. M-6.あん・はっぴいえんど
  7. M-7.贅沢とユーモア
  8. M-8.みなさん、さようなら
  9. M-9.弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」
  10. M-10.common式
  11. M-11.エゴサーチ・アンド・デストロイ
  12. M-12.Sleigh Ride
  13. M-13.Jingle Bells
  14. M-14.愛のテーマ
ENCORE
  1. M-15.クリスマス・グリーティング

お知らせ

■ライブ情報

the dresscodes TOUR2017
ツアータイトル: “タイトル未定”

03/17(金) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
03/18(土) 宮城SENDAI CLUB JUNK BOX
03/20(月祝) 札幌PENNY LANE24
03/25(土) 広島Cave Be
03/26(日) 福岡BEAT STATION
04/01(土) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
04/02(日) 大阪BIG CAT
04/09(日) 新木場studio COAST
*詳細は後日発表

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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