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話題の新世代バンド・Nulbarichのワンマン追加公演をレポート!

Nulbarich | 2017.03.06

 ソウル、アシッドジャズなどのブラックミュージックを基本とした極上のグルーヴとソングライティングにより話題を呼んでいるNulbarich(ナルバリッチ)。バンド名と楽曲、謎に満ちたアートワークといった限られた情報しか世に出ていないにも関わらず、アルバムはヒットし限定シングルは即完。そして2月3日に東京・渋谷WWWで行った1stワンマンライブ“Guess Who?”も即日ソールドアウト。そんな話題が話題を呼ぶ新世代バンド・Nulbarichの2度目のワンマンライブの模様をお届けする。


 渋谷WWWでの1stワンマンライブ“Guess Who?”の即完を受けての追加公演となったこの日、より大きな会場での公演になったにも関わらずチケットは当然のようにソールドアウト。おそらくその期待に応えるようにギリギリまで集客したため、会場は超満員。フロアから溢れんばかりのクラウドとその熱気で、長袖では汗をかくほどだ。

 開演時刻から10分ほど経過したところで客電が落ち、入場SEなしでバンドメンバーがステージに登場する。1stアルバムをリリースしたばかりの新人バンドらしい、実にシンプルでストレートな登場。オーディエンスの期待が高まるのを感じていると、ステージ上のバンドは一斉に音を鳴らす。ズドンと響くその音圧にまず驚かされた。ロックバンドというよりもブラックミュージックの出音を感じさせるパンチ力。音源に偽りなしだ。

 ほどなくボーカルのJQが登場し、「初っ端からぶっ飛ばしていくんで、よろしくお願いします」の第一声とともに「TOKYO」がスタート。赤い照明がアダルトな雰囲気を演出するなか、ファンクサウンドが客の身体を揺らしていき、サビでは青いライトが広がりアーバンなメローサウンドが展開。ワウが効いたギターソロは、まるで夜の代官山に春の夜風が吹くかのようですらある。

 そして続くのはエレピからのジャジーなベースが絡むイントロ。1stシングル「Hometown」だ。「しっかり耳を研ぎ澄まして、しっかり感じ取って楽しんで帰ってください」というJQの言葉に反応するように、オーディエンスはバンドサウンドの1音1音、そしてコーラスの隅々まで感じるように聴き入っている。ブリージンなサウンドのなか、軽快に刻むギターのカッティングが高揚を煽る。この平熱と微熱を行き交うバンドサウンドは、今の東京という街の体温に合ってるから、多くのオーディエンスが平日の夜に代官山に押しかける理由のひとつなのかもしれない、と感じる。

「Nulbarich初めて観たぜって人、初めまして。よろしくお願いします。こういう感じなんです。お面着けてくる思った? せめてサングラス? 残念、普通でしょ。僕も人間として生まれてますからね」とうそぶくJQ。そう、彼らNulbarichの活動は基本覆面バンドのようにも見えるが、、ライブではそうしたギミックは皆無。個々のメンバーの高い演奏力と、それらが合わさったときに生むグルーヴを主体とした、実にミュージシャン的なミュージシャンと言える。

 この日特に大きな歓声が上がったのは、アルバム『Guess Who?』からのリードトラックであり、7インチシングルとしてもカットされた人気曲「NEW ERA」が始まった瞬間。それまで少し動きが硬かった印象があるフロアのオーディエンスも思い思いに身体を揺らし、大サビではパーソナルな多幸感が会場を包んでいく。Nulbarichのソングライティングによるところもあるが、 みんなが大合唱するようなシンガロングな光景はなく、あくまでそれぞれが自分のスタイルでバンドサウンドを楽しむのがこの日のライブのムードだった。

 そしてデジタル音楽配信サービス“Spotify”限定で配信されている「Ordinary Boy」とバンドセッションを連続して披露。このセッションに顕著だったのが、音源よりも遥かに強烈なファンクサウンド、グルーヴである。これが彼らのライブの特徴のひとつと言えるだろう。
「どんだけやばいか判断して行ってよ!」というJQの自信に満ちたMCも納得せざるをえない、ギターソロのリレーからのツインリードギター、そしてベースソロ、ピアノソロと、各パートがソロを重ねるセッションは圧巻。ソウル、フュージョン、ハードロックをクロスオーバーするバンドサウンドには多くのオーディエンスが手に汗握ったはずだ。

 爪弾かれるメロウなギターとボーカルが切なく、しかしピースフルに絡む「Everybody Knows」から、ハンドクラップで会場が一体となる「SMILE」。続いて演奏されるのはファンキーなギターとディスコビートがステップを踏ませるダンスナンバー「Lipstick」。そしてディアンジェロを思わせるムーディーでスウィートな「Spread Butter On My Bread」が披露され、会場は満ち足りた雰囲気に。

「終わっちゃいます。次の曲で。今日は本当に皆さんお忙しかったろうに、ありがとう。暇な人が集まるわけないからね」とJQはライブの終わりを告げ、自身の想いを話し始める。

「このNulbarichと出会うことで、僕の人生が180度変わった。変わったんですよ。熱いこと言うつもりもないんですけど、どう考えても僕は皆さんに支えられてるんですよ。照明当たって誰もいないところでライブしててもしょうがないしね。去年の6月にリリースして、そろそろ本格始動して一年が経とうとしている。“すげーグッドミュージックだから買ったぜ”って人もいると思うんですけど、わざわざここに来てくれた人たちは、俺らに“行けよ!”と期待してきたんでしょう。行くよ!せっかくみんなからもらった愛、音楽で返さないとプロ失格なんで。ちゃんと返すよ。今日来てくれて本当にありがとうございます!」

 そして2017年の春から夏にかけてEPをリリースすることをアナウンス。「日々曲作ってて、次のやつもマジでやべえから。今年はフェス出まくって、もっとバンドを大きくして、大きな会場でやりましょうね。でも、みんなの手を引っ張っていくほどの優しさは持ってないから、ついて来ないと置いてっちゃうからね。今年本当によろしくお願いします」

 切々と歌い始め、やがてバンドサウンドがその歌声を優しく包む「LIFE」で本編は終了。鳴り止まないアンコールに応えて「心を込めて歌います」と演奏されたのは「NEW ERA(English Version)」。キーボード、ベース、リズムマシンによるアレンジで、ビーチサイドで鳴らされる80年代のラジオかのような世界観で、まるで違う表情の楽曲に。

 そして「とりあえずありがとう。……とりあえず。だって続くでしょう!」との言葉とともに、ライブは「I Bet We’ll Be Beautiful」で大団円を迎えた。

「全然終わりたくないんだけど、また会いましょう!」――。計2時間と大満足のボリュームも含め、Nulbarichの2度目のワンマンライブは、彼らの初期を総括し次への展望を覗かせる、ひとつのピリオドと言って間違いのない大充実のライブだった。

【カメラマン:佐野円香】
【取材・文:照沼健太】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Nulbarich

リリース情報

HMV限定7inchアナログ盤『Lipstick c/w Spread Butter On My Bread』 

HMV限定7inchアナログ盤『Lipstick c/w Spread Butter On My Bread』 

2017年02月08日

レインボーエンタテインメント

A-side 「Lipstick」
B-side 「Spread Butter On My Bread」

お知らせ

■ライブ情報

第3回 雑貨大賞 Supported by Village Vanguard
03/24(金) 代官山UNIT

ZIP-FM presents JAMZ vol.1
04/07(金) 名古屋JAMMIN’

SYNCHRONICITY’17
04/08(土)
TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest

FONS 5UP
04/14(金) 札幌Sound lab mole

ARABAKI ROCK FEST.17
4.29(土) - 30(日)
みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

POP HILL 2017 in 金沢
05/07(日) 石川県産業展示館4号館

GREENROOM FESTIVAL’17
05/20(土) - 21(日)
横浜・赤レンガ地区野外特設会場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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