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COMIN’KOBE17”出演バンドとの絆の深さ”を感じた伝説の1日をレポート!(第1弾)

COMIN’KOBE | 2017.05.26

「COMIN’KOBEは他のフェス、ライブイベントとは違うから」。
 今年で13回目を迎える日本最大規模の無料音楽チャリティーフェス「COMIN’KOBE」、通称カミコベを人に説明する際、最初に口から出てくるのがその一言。

 地元、神戸でライブハウスの店長を務めていた松原裕氏が実行委員長となって2005年に「GOING KOBE」(2010年より「COMIN’KOBE」に変更)という名称でスタートしたこのフェスには明確な趣旨があって、それは、1995年に襲った阪神大震災を風化させずに伝えていくこと。被災地支援の手を差し伸べてくれた世界に感謝の想いを伝えること。新たに起きている災害に支援の輪を広げてゆくこと。その趣旨に賛同した企業の協力やボランティアのサポート、そして出演バンド、参加者の手で作られている。チケットは無料で、場内には縁日のような催しもあり家族での来場者も多い。会場内にはいくつも募金できるスポットがあり、小銭を握りしめた子供から大人までいつでも好きな時に支援活動ができる気軽さも嬉しい。今年は5月17日までの集計で1,200万を超える募金が集まったと公式サイトで発表されていた。昨年、松原氏のガンがわかり闘病しながら文字通り命をかけての開催となった13回目の今年は、これまで以上に出演バンドと実行委員長である松原氏の絆の深さを改めて感じ入る場面がいくつも見られた。

 今回初めて、神戸ワールド記念ホールの広いLIVEDAM STUDIUMに登場したMy Hair is Bad。1秒も立ち止まることなくステージを動き続ける椎木は声を張り上げ、「アフターアワー」「告白」を歌い、「いつか今日のステージを思い出して」と言う。圧巻だったのは最後の「フロムナウオン」。10分を超す曲中に、「愛は地球を救うっていうけど、結局集めてんのは愛じゃなくてカネだろ?」「俺が本当のこと言わないとあんたらも本当のこと言わないだろ?」「彼女が欲しい。いい彼女が欲しい」とありったけ叫び続け、ステージからすべてを放出。今日この場でしか体験できないライブを見せてくれた。思い出すどころか、到底忘れられない。

 メンバーが現れ、音が鳴った瞬間にジャンプしていない人はいないんじゃないかと思うほど会場が揺れたヤバイTシャツ屋さん。周りにいる人ほぼ全員が、「あべのハルカスめっちゃ高い!」と歌っている。「カミングコウ!」とボーカルのこやまが叫べば、お客さんが「べー!」と返す。その驚異的なヤバTセンスの浸透力に腹の底から笑いがこみあげてくる。「キュウソが向こうでやってんのにここにいていいの? でもすごくいい曲やるから!」と最後に「あつまれ!パーティーピーポー」。人波をかきわけるようにしてステージ前方を目指す人も、飛び跳ねながら声を上げる人も、ヤバTの楽しみ方を熟知しているようだ。

 間髪入れずに隣のステージで夜の本気ダンスのサウンドチェックが始まる。いったん退いた4人が再び現れ「WHERE?」でステージが始まると、小さな子供まで一緒になって踊っているのが目に入る。UKロックの流れを汲む彼らのダンスナンバーに、フロアは暴れるのではなく両手を挙げてまさにダンスで応える。「Fuckin’ so tired」では、ボーカルの米田がハンドマイクを握ってフロアに向かいコール&レスポンスを呼びかけると、ただでさえ長身の姿が一段と大きく映える。ラストは「戦争」で一気に駆け抜けた。

 黒猫チェルシーが終わり、SiMがサウンドチェックで「MAKE ME DEAD!」を鳴らした途端、詰めかけた人々の間にうねりが湧き起こる。アリーナの床がまったく見えないほど詰めかけた何千もの人たちが、「Faster Than The Clock」「Blah Blah Blah」で一斉にヘドバンする様は芸術的ですらある。さらに壮観なのは、お客さん達の歌声のデカさ。モッシュも、後ろから前へとクラウドサーフも止まらない。「アタマ振れ!」のMAH(Vo)の言葉には、スタンド席のファンも揃って頭を振り、手を挙げて応える。SiMは4年ぶりにカミコベに帰ってきた。「松原さんに恩返しを」との想いで逆オファーをかけ出演が決まった経緯を話し、松原氏に向かって「簡単に死なせねぇぞ!」と絶叫。coldrainのMasato(Vo)を迎えた最後の「f.a.i.t.h」ではサークルモッシュを指し「死ぬ気でやれ」と。一見無軌道に見えても節度を持って楽しんでいるファンへの信頼の現れであるその一言に、大きな拍手と歓声が起きた。

 ステージに登場したメンバーが「声聞かせてー!」と呼びかけると、フロアは大きな歓声で応える。カミコベではすでにおなじみの彼ら。「俺らが大阪のFABLED NUMBERや!」「一生懸命歌うから、一生懸命ついてきて」という威勢のいい掛け声で始まったステージは、ロックをベースに持ちながら、EDMやエレクトロが溶け込んだダンスミュージックが、広い会場を心地よく揺らす。とんでもなくハッピーな空気でいっぱい。が、終盤にはそれが地響きのようなうねりに変わる。ミドルテンポが心地よい「AAO」もあれば、ラウドに畳みかける「YES」という具合に多彩な音楽性は魅力十分。

 ワールド記念ホールのworld stageが、まるでワンマンのようにステージに向かって叫び歌う人で満ちていた。スタンド席の通路にも人があふれている。3人が現れる前から10-FEETのタオルを掲げる人、京都大作戦のTシャツを着ている人もそこら中にいる。「その向こうへ」の曲中、「やっと出れたぞ! COMIN’KOBE!」とTAKUMA(Vo・Gt)が叫んだ時、涙をぬぐっている人がいた。京都で聴く10-FEETと、カミコベのこの会場で聴く10-FEETは違う。スタンドから見ていると、アリーナは人でできた海のよう。まさに「goes on」の歌詞にある通り。「もうすぐ終わるよ!」「ケンカすんなよ!」と声を張り上げ、「RIVER」を。“人が波のように優しくなれたら”と歌う曲で、“君は泣いた”と歌いながら聴く人に力を贈る歌で、傷つけあったり喧嘩なんかしてたまるかという気になる。「あと1分あるからこれやって終わろ」と最後は「DO YOU LIKE...?」で颯爽とステージを下りて行った。

 すさまじくキャッチーで、初めて聴く人も間違いなく虜にしながら結成から12年走り続けてきたSUPER BEAVER。ボーカル渋谷のゆるぎなく強い歌声は広い会場を包み込むようにこだまし、一番後ろにいる自分のところまでまっすぐに飛んでくる。とにかくすごい人、人、人と熱気で動けない。フロアの手拍子だけで歌い始めた「美しい日」。いつまでも「La la la la…Oh oh oh」とコーラスし続けた「秘密」。「四星球の後にやりたくないって願いがいつまでも叶わない」と笑わせた後、「松原さんだけじゃなく戦ってる人に」「ちゃんとまっすぐに伝えたい」と最後に「ありがとう」を。歌いながら、何度も「ありがとう」と声を上げ続ける。その、音楽でも言葉でも届けたいという彼らの想いを胸いっぱいに受け取った。

 開口一番、「俺たちに与えられた20分間で全部ひっくり返すステージをやる!」と叫んだパノラマパナマタウン。オープニングの「世界最後になる歌は」をはじめ、オルタナティブなロックにヒップホップやファンクの要素を惜しみなくブチ込んだ楽曲は、踊ってもいいしジャンプしながら聴く人も、気持ちよさそうに揺れながら楽しむ人も。昨年よりも広いステージでトリを務めた彼らだけれど、「正直めっちゃ悔しい。次はもっとデカくなって神戸に帰ってきて、もっとデカい会場で逢いたいです!」と、最後は「odyssey」を。手の届きそうなライブハウスでも、大きな会場でも、同じだけの熱量で揺るがすだけの力を彼らの楽曲に感じた。

 今年、松原氏のたっての願いもあり、Hi-STANDARDがシークレットで登場し、「stay gold」「brand new sunset」ほか4曲を演奏した。カミコベの最後を締めくくったガガガSPのステージで、松原氏と同い年であるコザック前田(Vo)は阪神大震災で被災した時、Hi-STANDARDのアルバムを貸してくれた友人がいて、「あの頃からハイスタに救われていたのかもしれない」と話した。松原氏の闘病を奇跡と語り、「(カミコベは)去年で終わると思っていた」と話しながら、「松原が生きている限りコレ(COMIN’KOBE)をやるから!」と、アンコールに応えて「線香花火」を最後に披露した。自身を「日本最古の青春パンクバンド」と語ったコザックはこの夜、大人の本気の青春パンクを大声で打ち鳴らし「ライブハウスで逢いましょう!」と叫んでステージを下りて行った。一年に一度のカミコベのステージを思う存分楽しむために、ロックバンドはロックを鳴らし、私たち音楽ファンはライブハウスに向かう。今日を生きるための一歩を、確実に前に踏み出す力をくれる音楽に出会うために。

【取材・文:梶原有紀子】




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