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Anly ワンマンツアーの追加公演となった原宿アストロホールをレポート

Anly | 2017.07.03

 Anlyが初めて東京でワンマン・ライブを行なったのは2016年6月28日、渋谷eggmanだった。そこから1年。彼女はライブアーティストとして大きな成長を遂げていた。筆者は昨年6月の初ワンマン以降も、ビッケブランカとの2マンライブ(2016年9月11日・渋谷O-nest)を始め、何度か彼女のライブを観てきたが、今回のワンマンはぶっちぎりで一番よかった。成長著しいとはこのことだ。

 「1st Live Tour “anly one”」。原宿アストロホールで行われたこの日のライブは、そのツアーのファイナル(同会場で6月17日に行われた東京公演の追加)。序盤こそ少しだけ歌にカタさがあったが、徐々にバンドの音と一体化し、彼女の表情も声も生き生きしたものに。とりわけ弾き語りのコーナーでは十二分に実力を発揮し、そこから後半にかけてライブはよくなる一方だった。

 順を追ってレポートしよう。客電が落ち、BGMが鳴りやんでから一瞬の間をとってAnlyの歌で始まったのが、アルバム『anly one』収録のハードなロックナンバー「FIRE」。♪オ~オ~オ~オ~ と歌われるところでAnlyは何度も拳を突き上げ、観客たちも同じように拳をあげてシンガロング。彼女は「もっと大きな声で歌ってほしい」と促すように、自分の耳に手をあてて「聞こえないよ」のポーズ。続く2曲目はロックンロール・ナンバー「Enjoy」で、Anlyはタオルの端を持って高い位置でグルグル回し、観客たちも一緒にタオルをグルグル。レゲエのライブから生まれた「ヘリコプター」と呼ばれるアレだ。そのようにライブはのっけからパッショネイトなロック曲で観客と一体になっての盛り上がり。引き込み度合いはバッチリだった。

「anly oneツアーへようこそ! 後ろも見えてますか? 私は見えてます」「今日がホントにホントにファイナルです。でも気持ちだけは初日です!」「これで最後だと思って全力でいくので、最後までよろしくお願いします!」。バンドと共に2曲歌い終えたところでAnlyはそう挨拶し、「次の曲は一緒にジャンプしてください!」とも。そしてアコギをジャカジャカ弾きながら初期のイーグルスに通じる軽やかなカントリー・ロック・テイストの「傘」を歌い、サビでは観客に手拍子を促したり、ジャンプして歌ったり。そこから一転して、次は切ないバラードの「いいの」。アコースティックで始まり、途中からバンド・アンサンブルが際立つ展開となると、Anlyのヴォーカルに含まれる切なさ成分もまた増していった。

「全公演ソールドアウトになって本当に嬉しいです」と言ったあと、故郷である伊江島から出てきた頃を振り返って、次のように話すAnly。「東京に来たばかりの頃は不安もあったし、大きいビルが立ち並んでることにもドキドキしていたんですけど、でも“みんな目的地があって一生懸命歩いてるんだな”と思ったら、怖いなと思ってた街がそうじゃなくなったんです」。そして「私の目的地はみなさんの心です。歌となって誰かの心に寄り添えたらなって思ってます!」と力強く表明。さらに「次の曲は、これからの決意表明として歌いたいと思います」と言い、デビュー曲の「太陽に笑え」をダイナミックに歌唱。“歩け 歩け 負け続けても その続きはきっと誰もが予想できない”“うつむかないで 目線は上へ”。歌詞のその一節は、自分自身と集まったみんなの両方を同時に鼓舞しているようでもあった。

「太陽に笑え」を歌い終わると、ここでバンド・メンバーが一旦はけて、ステージはAnlyひとりに。「ここからはいつも通り、弾き語りをしたいと思います」と言ったあと、彼女はループペダルについての説明をし、「“なんか面白いことやってんなぁ”くらいの気持ちで、楽しんでもらえたら嬉しいです」と続けて、エド・シーランの「Don’t」をカヴァー。因みにエド・シーランはAnlyが敬愛する英国のシンガー・ソングライターで、彼女がループペダルを使って歌い始めたきっかけとなった人(エドはギターとループペダルだけで巨大なスタジアム公演も行うアーティストだ)。ギター音に、コーラスにと、ひとりでひとつずつ音を録ってループさせ、それに重ねて歌うAnlyのその技術は見事なもので、ミュージシャンとしての確かな実力が伝わってきた。エドの「Don’t」からメドレーで自身の曲「Coffee」に繋げるあたりの自然さもなかなかどうしてたいしたもの。そう感心しながら見ていると、歌い終えたAnlyは「いつかみんなもやってみてね」とサラッと言ってのけ、会場から笑いが起きる。さらにはギターのチューニングをしながら、次の曲紹介をする前にうっかり「レモンティー」のイントロ部分を弾いてしまい、「あっ、次の曲、弾いちゃった。アハハハ。バレちゃった?」と慌てつつ笑ったりも。天然というかなんというか、このおおらかさもまたAnlyの大きな魅力のひとつである。そして、伊江島ではいつも窓辺で父親のギターを聴いていたという話をしながら、その父親もAnlyも大好きなエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘブン」の出だしだけを弾き、そこからフォーキーな「レモンティー」へ。こういうパーソナルなアコギ曲とAnlyの声の相性は非常によく、そこに爽やかな風が吹いている気がした。

 もう1曲アコギの弾き語りで、「だから」を目の前にいる誰かに優しく語りかけるように歌うAnly。サビでは声が強くなり、後半はまた切なく歌うという、そのメリハリある歌唱表現に心が持っていかれる。そして再びバンド・メンバーたちが登場。「今日、沖縄は慰霊の日です。私が今こうして歌えているのも、命の繋がりによってだと思っています」と言い、そんな思いも込めながらバラード「笑顔」を熱唱した。

 続いて高校時代に書いた「サナギ」をリラックスしたトーンで歌うと、Anlyは「次の曲は『anly one』のなかでも一番思い入れの強い曲」と言い、「東京に来たからこそ(この曲が)書けたんだと思います」と話して「カラノココロ」を。「自身の新しい方向性を示すことができた」と以前語っていたシングル曲だ。透き通っていながらも力強い高音ヴォイスが会場に響いて、ラップ調の彼女の節回しと共にバンドの演奏もグルーヴを増す。「光に その手 かざせ」「その手を 空に かざせ」のところでは観客全員が手の平を空にかざす形をとっていた。このように歌詞を理解してそのフレーズに合わせた動きをする観客が増えることは、ファンにとっても絶対的に嬉しいことだろう。

 ライブはここから終盤の盛り上がり時間となり、Anlyは「東京・ファイナル! 声を聴かせてください」と叫んで、オ~オ~オ~のコール&レスポンス。「名古屋に負けるな! 大阪にも! 沖縄にも!」と煽ると、観客たちの声もどんどん大きくなる。そしてAnlyの全楽曲のなかで最もハードかつドライブ感のあるロック曲「Don’t give it up」をここで投下。すぐさま着火。ギタリストは前に出てハードに引き倒し、ステージの上もフロアも一気に熱が上昇するのだった。さらにハードな3rdシングル曲「Emergency」で火に油を注ぐと、観客たちはますますヒートアップ。Anlyもタガの外れたハードロッククイーンのように激しく歌い、「サイコー!!」とシャウトすると、観客たちは思い思いの声の出し方でそれに応えていた。

 この大きな盛り上がりで本編は終了するかと思いきや、彼女はここで「みなさんにお知らせがあります。秋のツアーが決定しました! 全国7カ所を回ります。あなたの故郷にも行くかも」と嬉しい発表を。そして「次の曲で最後になってしまいます」「スキマスイッチさんと3人で書かせていただいた曲です。人生の節目にお二人に出会えて幸運でした。大切に歌わせていただきます」と話して、スキマスイッチとのコラボ曲「この闇を照らす光のむこうに」を熱唱。スケール感を有したこの曲はまさしく希望の光のようで、実にドラマチックな本編ラストとなった。

 当然のことながら鳴りやまない拍手。そして少しずつ大きくなっていく観客たちの「Anly! Anly!」という呼び声。つまりはAnlyコールだ(アンコールとはAnlyコールの略だったんじゃないか、などという思いもよぎったりする)。そしてアルバム『anly one』のジャケットのイラストがプリントされているTシャツに着替えたAnlyとバンド・メンバーたちがステージに再登場。すぐに次の曲に移ろうとしながら、彼女はハッとして「あ、待って。その前にAnlyバンドを紹介します。あー、危ない。忘れるとこだった」と苦笑い。しっかりとドラム、ベース、ギターの3人を紹介し終えると、カントリー・ロック調の「Bye-Bye」でもう一度観客たちとの一体感をそこに生み出した。

 それから彼女は8月9日に6枚目のシングル「北斗七星」をリリースすることを伝え、その曲を書くきっかけとなった家族のエピソードを話した上で、「この曲を聴いて、みなさんが大切な人を思い出したり、空を見上げたいと思ってくれたら嬉しいです」と語った。そうしてしっとりと歌い上げたバラードの「北斗七星」は、聴いているどの人の心にも深く沁み入るものとなったはず。夏の星空を想起させもするこの曲は、Anlyの代表曲のひとつになるに違いないと、そんな予感もしたのだった。

 その曲の素晴らしさもあったのだろう、歌い終えて舞台袖に消えていくAnlyに対してもう一度アンコールを求める声が広がる。少しの時間のあと、驚いた様子でひとりステージに戻ったAnlyは、「考えてなかったよ~」と笑ってから「ホントにやっていいの?」といったふうに袖にいるスタッフに確認し、「じゃあ最後に故郷の歌を歌います」と言って『anly one』でも最後に収録されていた「Come back」を歌唱。楽曲の持つ郷愁の成分が会場全体を満たしていく。「ふるさとのぬくもりを ずっとこの胸に抱きしめて 抱きしめたまま 歩きだそう」と、伸びやかな声で歌われたそのフレーズは、まさしく“これまで”と“現在”を抱きしめながら“これから”を見つめている、そんな彼女の気持ちそのものだったに違いない。

【取材・文:内本順一】
【撮影:HAJIME KAMIIISAKA】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル Anly

リリース情報

北斗七星

北斗七星

2017年08月09日

ソニー・ミュージックレコーズ

1. 北斗七星
2. ie
3. この闇を照らす光のむこうに -anly only version-
4. 北斗七星 -instrumental-
5. ie -instrumental-

セットリスト

1st Live Tour “anly one”
2017.6.23@原宿アストロホール

  1. 01.FIRE
  2. 02.Enjoy
  3. 03.傘
  4. 04.いいの
  5. 05.太陽に笑え
  6. 06.Don’t (Ed Sheeran カバー)ループペダル
  7. 07.Coffee ループペダル
  8. 08.レモンティー
  9. 09.だから
  10. 10.笑顔
  11. 11.サナギ
  12. 12.カラノココロ
  13. 13.Don’t give it up
  14. 14.Emergency
  15. 15.この闇を照らす光のむこうに
  1. EN-1.Bye-Bye
  2. EN-2.北斗七星
  1. W-EN.Come back

お知らせ

■ライブ情報

Anly Live Tour 2017 ☆北斗七星☆
10/10(火) 仙台・LIVE HOUSE enn 2nd
10/11(水) HEAVEN’S ROCK宇都宮 VJ-2
10/14(土) 福岡・Queblick
10/15(日) 広島・BACK BEAT
10/19(木) 名古屋・CLUB QUATTRO
10/20(金) 梅田・CLUB QUATTRO
10/24(火) 渋谷・CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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