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PELICAN FANCLUB、初のフルアルバムを携えて行った圧巻の全国ツアー東京公演をレポート

PELICAN FANCLUB | 2017.07.06

 過去3作のミニアルバムではそれぞれに異なる表情を見せてきたPELICAN FANCLUB。彼らにとって初のフルアルバムとなる『Home Electronics』は、いよいよバンド=世界観の図式を立体的に具現化なし得たまさに会心の一撃だった。このアルバムを作ったからなのか、だからこそこのアルバムが作れたのか、それは鶏が先か卵が先かを論じるようなもので正直なところわからないが、この日、目の前にいた4人はおそらくこれまでのどの彼らより強く、しなやかだったのではないかと思う。ひとり一人の奏でる音は笑ってしまうほど心地好く噛み合い、相乗し合って“×4”を遥かに超えて生み出されるスケール感。メンバー各自はバンドの中の“1/4”ではすでになく、むしろその範疇を大胆にはみ出しては嬉々として互いの領域に踏み込み、バンドの輪郭線を内側から押し広げていく。アルバム『Home Electronics』を携えて全国7ヵ所を回るツアー“Electronic Store”3本目の東京・代官山UNIT。名古屋、大阪公演に続くワンマンライブとなったこの夜、PELICAN FANCLUBに見たものはたしかな進化と未来だった。

 “家電”を意味するアルバムタイトルと、それをもじって“電子製品販売店”と名付けられたツアータイトルだからだろうか、大小20台以上ものブラウン管テレビが積み上げられてレトロフューチャーなムードを醸し出すステージ。客電が落ち、4人が姿を現すと、その画面にはサイケデリックな配色で“Home Electronics”のロゴが浮かび上がり、同時にまるで誘蛾灯に惹き寄せられるかのようにフロアの人波がグッと前方へと動いた。

「一生で一度の2017年6月25日、“Electronic Store”。最高に楽しんでいきましょう、よろしく!」

 アッパーかつ軽やかなオープニングを畳み掛けてエンドウ アンリ(Vo・Gt)が力強くそう呼びかけると、応える拍手と歓声で場内は早くも朗らかな空気に満たされる。リリースから1ヵ月半とあって予習にぬかりはないらしく、「Esper」での“♪あはは”のコーラスでは4人の声に重ねてフロアいっぱいに明るい歌声を響かせては、ファンタジックなポップチューン「Luna Lunatic」の疾駆感あるリズムにも躊躇なく身を委ねて揺れ踊るオーディエンスが頼もしい。セットリストの主軸を担うのは『Home Electronics』の楽曲群だが、「Variety Mania Talent System」や「M.U.T.E」など絶妙に配置された過去のミニアルバムからの曲たちがライブというひとつの物語をよりダイナミックに彩っているのも印象的だ。また一方では、いっそう盤石さを増した今のPELICAN FANCLUBのモードによって、そうした過去の曲のポテンシャルがグッと引き上げられているように感じられるのも面白い。

「明日からまた平日で。いろんなものに対して腹が立ったり、喜んだり、悲しんだり、いろいろあるでしょうが、そういった感情がすべて音楽にぶつかればいいと僕は思ってます。みなさん、喜怒哀楽は持ってきましたか? お互いにぶつけていきましょう!」

 軽快な幕開けから曲を重ねるにつれ徐々に内省を帯び始めたアンサンブルはエンドウのMCを挟むや、エモーショナルに振り切れた。真っ赤なストロボライトが容赦なく瞬いてステージを、4人を、不穏に染め上げた「プラモデル」。2ndミニアルバム『PELICAN FANCLUB』の1曲だが、剥き身の刃物を振りかざすようなエンドウのシャウトは狂気を孕みながらも美しく切実で、対照的にクールさを失わず淡々と紡がれる演奏が余計にそら恐ろしさを増幅させる。そうして、なだれ込んだ「Black Beauty」「許されない冗談」の、バンド一丸となった鬼気迫るパフォーマンスはただ圧巻の一語に尽きた。タイトなリズムで性急さを煽るシミズ ヒロフミ(Dr)、カミヤマ リョウタツ(Ba)のベースラインはとことんニヒルにうねり、クルマダ ヤスフミ(Gt)がかき鳴らすギターはどこまでもヒステリックだ。エンドウは吐き散らしても行き場のない自嘲をそれでもなおオーディエンスのみぞおちを殴りつけるかのようにアヴァンギャルドに歌い叫ぶ。ついには勢い余ってマイクスタンドを倒しかけてヒヤリとさせる一幕もあるなど、これがオープニングと同じバンドなのかと目をみはってしまうほど。しかも感情に任せているようで演奏の体幹はまるでブレていないから驚く。

 スイッチを押しただけで食事を温めてくれる電子レンジ、あるいはご飯を炊いてくれる炊飯器、あるいは汚れた物を綺麗にしてくれる洗濯機、遠くの人と当たり前のように会話できる電話。ちょっとした魔法みたいな不思議なもの=“家電”が今や生活になくてはならない。そんな事実を自身にもなぞらえて、そうありたいという願いを込めて名付けられた『Home Electronics』。ここに収められた1曲1曲、この日演奏された1曲1曲は彼らの願いそのままに、私たちにとっての不思議な必需品だ。ときにドリーミーで甘やかで、ときにポップかつ爽快、ときにダーク&アグレッシヴな音楽はどこか現実離れしているようで、だからこそ現実では埋められない隙間をそっと満たしてくれる。そしてその不思議な必需品はライブという100%生身の場で奏でられることで、かけがえのない現実として聴く者の胸に刻まれるのではないか。堂々と全身全霊を懸けてひとり一人に音楽を手渡そうとしている今日の彼らのステージにはそう思わせる説得力がある。再びポジティブに加速した後半戦。フロア一面に揺れる手のひらが“♪1.2.3.4”に合わせて一斉に指折り数えた「深呼吸」、疾走感溢れる「Night Diver」の♪ラララの大合唱がこの上なく温かだった。

 アンコールでは「これ、すごくない? これ、大変なんだよ」とステージ上のブラウン管テレビについてシミズが語り始めようとすると、すかさずエンドウが足元に置いてあったリモコンを拾い上げ、「ボタンに番号あるでしょ? これを押すと(会場内の)誰かが“バンッ!”て(飛び跳ねる仕草」と冗談めかすというやり取りも。「じゃあ5番押して」とのシミズのリクエストに応えてエンドウが押すと次の瞬間、「ウッ!」と胸を押さえて床に転がるカミヤマ迫真の茶番。しかもこれ、打ち合わせなどまったくなしの完全なるアドリブだというから息が合いすぎ。ノリ良すぎ。「オマエかよ!」とツッコむシミズにオーディエンスも大爆笑の素敵なひとときだ。

「誰がなんと言おうと自分が好きなら、それがすべて。今日ここに来てくれてるってことはみんなの中でPELICAN FANCLUBが胸張って好きって言えるものなんだと思うし、自分たちもそう思って音楽やってます。だからPELICAN FANCLUBについてきて。絶対に大きくなるから」

 この日の最後にエンドウがはっきりと口にした約束。もしかすると彼らはペリカンどころか猛禽の迫力さえ備えつつあるのかもしれない。まだまだ底知れないポテンシャル、大きく羽ばたいた彼らがたどり着く先には一体何が待っているのか。最新の家電でなくてもいい、オンリーワンであり続けてほしい。そんなことも思った。

【取材・文:本間 夕子】
【撮影:Makoto Shinkawa】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル PELICAN FANCLUB

リリース情報

Home Electronics

Home Electronics

2017年05月10日

DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.

1.深呼吸
2.Night Diver
3.Luna Lunatic
4.Black Beauty
5.You’re my sunshine
6.夜の高速
7.ダダガー・ダンダント
8.許されない冗談
9.Trash Trace
10.花束
11.朝の次へ
12.Esper

セットリスト

PELICAN FANCLUB TOUR 2017“Electronic Store”
2017.6.25代官山UNIT

  1. 01.Esper
  2. 02.Luna Lunatic
  3. 03.アンナとバーネット
  4. 04.Variety Mania talent System
  5. 05.M.U.T.E
  6. 06.Trash Trace
  7. 07.夜の高速
  8. 08.プラモデル
  9. 09.Black Beauty
  10. 10.許されない冗談
  11. 11.ダダガー・ダンダント
  12. 12.深呼吸
  13. 13.Night Diver
  14. 14.記憶について
  15. 15.花束
 ENCORE
  1. EN-1.クラヴィコードを弾く婦人
  2. EN-2.Dali
  3. EN-3.朝の次へ

お知らせ

■ライブ情報

PELICAN FANCLUB TOUR 2017
“Electronic Store”

07/11(火) 新潟CLUB RIVERST
07/12(水) 石川VAN VAN V4
07/13(木) 宮城enn3rd
07/14(金) 千葉LOOK

NIGHT ON THE PLANET!presents
「the depth of …」

07/08(土) 新宿LOFT

The Skateboard Kids presents
PEOPLE AND ME #2″Dreamend”
Release Party !

07/17(月) 愛知ell.SIZE

TRY TRY NIICHE 1st Full Album
“NEWTRAL” Release Party
「トラトラ日記 Page1 -東京編-」

07/20(木) 新代田FEVER

ドラマストア presents
白紙台本ツアーファイナル
「DRAMA FESTA 2017 in OSAKA」

07/28(金) 大阪MUSE

KIND OF MAGIC VOL.1
08/09(水) 渋谷La.mama

UKFC on the Road 2017
08/16(水) 新木場STUDIO COAST

RockSteady’17
-HIRABI NO HATCH-

08/17(木) なんばHatch

大ナナイト vol.109
08/29(火) 渋谷O-Crest

RADIO BERRY
ベリテンライブ2017

08/31(木) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2

Plastic Treeメジャーデビュー二十周年“樹念”主催公演
虚を捨てよ、町へ出よう 弍 ~千葉新宿赤坂豊洲、4ツノ町ヘト出カケ(マス)、首都圏一日サァキット編~

09/09(土) 新宿BLAZE

※その他のライブ情報詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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