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米津玄師 ワンマンライブ「米津玄師 2017 LIVE / RESCUE」 東京・国際フォーラム

米津玄師 | 2017.07.28

 米津玄師が約7ヶ月ぶりにステージに立ったワンマンライブ「米津玄師 2017 LIVE / RESCUE」。7月14・15日、東京・東京国際フォーラム ホールAで行われたこのライブには、2日間で1万人のオーディエンスが集まった。私が足を運んだ15日、胸に「RESCUE」とプリントされたブルーのTシャツ姿の人たちが、昂揚した面持ちで会場の階段やエスカレーターを上り席へと急いでいた。14日も同じ光景だったに違いない。米津がステージに立つのは、昨今のアーティストにしては珍しいほど少ない。今回も彼のライブを始めてみるという人が大半だっただろう。それだけにオープニング前から、ただならぬほどの熱気が会場に溢れていた。そうしたオーディエンスの期待に十分過ぎるほど応え、さらに未来へと繋いだ素晴らしいライブだった。

 溢れる熱気に応えたオープニングは「ナンバー・ナイン」。イントロが流れると手拍子が起こり、マイクスタンドを両手で握りしめた米津はハリのある声で歌いだした。殺伐とした未来を塗り替えていく新世代を歌うこの曲ほど、この日の幕開けにふさわしいものはない。間奏では、両手を広げて歓迎の意を示し、場内の熱気を受け止めた。続く「フローライト」では自ら弾くギターでテンポよく曲を進めて腕を振ってオーディエンスにコーラスを促し、暖かな空気で包んだかと思ったらエンディングは彼の声だけが響くアカペラで緊張感を生む。甘っちょろい一体感には寄りかからない進行が米津らしい。程よい緊張感で進んだ「メランコリーキッチン」は、シャープな照明が空気を引き締めた。歌い終え、「米津玄師です、今夜はよろしく!」と、明るく力強い声で挨拶をした米津が輝いて見えた。  シンセがイントロを告げた「あたしはゆうれい」は、ステージ後方のディスプレイが一面黄色に染まる中で蓮っ葉な歌で米津は曲のキャラを生かし、ラストは堀正輝のドラムだけでコーラスに。照明が白一色になった「翡翠の狼」ではギターの中島宏が叩くパーカッションと共に”ワオーワオー”と遠吠えのように歌ってみせた。テンポよく進んでいくステージに目も耳も釘付けだ。背景とステージ上方のスクリーンが一つになって幾何学模様が曲に合わせ踊った「Black Sheep」は、レゲエからダブになる間奏がヒプノタイズな空気を醸し出し、米津もサウンドに酔うようにコーラスを繰り返した。

 「新曲やります」と唐突に宣言し歓声の中で始まった「砂の惑星」は、背景のスクリーンにアニメーションが映し出され、その映像と重なるように手にマイクを持った米津が、踊るように体を動かしながら歌った。初音ミク「マジカルミライ2017」テーマソングとしてハチ名義で発表したこの曲を、本人が歌うのはこれが初めて。南方研究所によるアニメーションでセンターに立つ初音ミクは少し大人びて見えた。

 ステージが銀河のような照明に包まれた「orion」は伸びやかなヴォーカルでドラマチックな曲を伝え、ステージ前方に降りたスクリーンに少女のアニメーションが映し出された「ゆめくいしょうじょ」は一層ヴォーカルだけで物語を紡いだ。映像越しに見える米津は全身を歌に注ぎ、この曲が持つイメージを声で映し出していた。終盤のほぼアカペラで歌った、美しい瞬間は忘れがたい。

 長い拍手が感動を伝える中、「まだ行けますか!後半もよろしく!」と米津が声をかけると歓声が起こった。一転してアッパーな空気に染めた「ゴーゴー幽霊船」「駄菓子屋商売」「ドーナツホール」と初期の曲を続けていく。米津自身が手がけたトラックの色を損ねることなくバンド・アレンジにして完成度を上げていることに改めて驚かされた。ボカロP”ハチ”とシンガーソングライター”米津玄師”はシームレスに繋がり移行しているようだ。それを実感させるように、米津が弾くギターで歌い出した「アイネクライネ」。寄る辺のない思いを振り切れる存在に出会った喜びをかみしめているのは、ハチとしてまた米津玄師として歩んできた彼自身なのではないか。そう思うとシニカルな歌詞の「LOSER」の、マイクを手にひときわ力強く呼びかけるように歌った一節、”聞こえてんなら声出していこうぜ”が自然と繋がり、ベースの須藤優が跳ねた最新シングル「ピースサイン」の力強いコーラスが会場をひとつにした。

「最近出した「かいじゅうずかん」についていた曲をやります。そのあとに、こないだレコーディングしたばかりの、まだ発表してない新曲を」
と一息入れた米津が言うと歓声が起きた。それが落ち着いたところで
「最近よく思ってることなんだけど、子供の頃のことを思い返すことが増えて、子供の頃を思い返すほど自分が大人になったのか子供に還ってるのかわからない。最近はそんな曲をたくさん書いている」

 単行本「かいじゅうずかん」に付属した「love」は、幻想的でドラマチックな曲を象徴するような生命を感じさせるアニメーションが後方に映され、11月に始まるツアーのタイトルでもある新曲「fogbound」は抑制の効いた曲をカラフルな映像の前で披露、そして本編最後も未発表の「春雷」。メリハリの効いた構成が未来への歩みを加速させるようだった。

 両手を広げて「どうもありがとう」と応えたアンコールは、力強く歌った「アンビリーバーズ」に続き、メンバー紹介から米津が幼馴染で”なかちゃん”と呼ぶギターの中島が”2階席!1階席!”と呼びかけ沸かせた。最後に米津が 「子供の頃を思い返すと、早くここから出ていきたいと思っていた。昔は地元があんまり好きじゃなかったから、遠くに行きたいと思ってた。今は東京に来て、気がつけば、こういうステージにサポートメンバーやスタッフがいて、見に来てくれる人がいて……。俺から言えることがあるとすれば、遠くへ行け!」

 そんな思いを綴った「Neighbourhood」が、切実に響いた。出口がないように見えても、どこかに道はある。米津が見せてくれるのは、そんな未来かもしれない。11月1日から始まるツアー「Fogbound」は霧の向こうの世界を見せてくれるにちがいない。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:中野 敬久】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル 米津玄師

リリース情報

ピースサイン

ピースサイン

2017年06月21日

Sony Music Records

1.ピースサイン
2.Neighbourhood
3.ゆめくいしょうじょ
4.ピースサイン(Instrumental)

セットリスト

米津玄師 2017 LIVE / RESCUE
2017.7.15@東京国際フォーラム ホールA

  1. 01.ナンバーナイン
  2. 02.フローライト
  3. 03.メランコリーキッチン
  4. 04.あたしはゆうれい
  5. 05.翡翠の狼
  6. 06.Black Sheep
  7. 07.砂の惑星 <新曲> ※初音ミク「マジカルミライ 2017」テーマソング
  8. 08.orion
  9. 09.ゆめくいしょうじょ
  10. 10.ゴーゴー幽霊船
  11. 11.駄菓子屋商売
  12. 12.ドーナツホール
  13. 13.アイネクライネ
  14. 14.LOSER
  15. 15.ピースサイン
  16. 16.love
  17. 17.fogbound <新曲>
  18. 18.春雷 <新曲>
 ENCORE
  1. En1.アンビリーバーズ
  2. En2.Neighbourhood

お知らせ

■ライブ情報

米津玄師 2017 TOUR / Fogbound
11/01(水) 大阪フェスティバルホール
11/02(木) 大阪フェスティバルホール
11/04(土) 神戸国際会館こくさいホール
11/05(日) 神戸国際会館こくさいホール
11/08(水) 大宮ソニックシティ
11/09(木) 大宮ソニックシティ
11/18(土) 鳴門市文化会館
11/19(日) 松山市民会館
11/23(木・祝) 福岡サンパレス
11/24(金) 福岡サンパレス
11/26(日) 鹿児島市民文化ホール第一
11/29(水) 新潟県民会館
12/01(金) 北海道 ニトリ文化ホール
12/07(木) 仙台サンプラザホール
12/09(土) 郡山市民文化センター 大ホール
12/14(木) パシフィコ横浜 国立大ホール
12/16(土) 名古屋国際会議場センチュリーホール
12/17(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール
12/23(土・祝) 岡山市民会館
12/24(日) 広島 上野学園ホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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