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TRICERATOPS 日比谷野外大音楽堂でのデビュー20周年記念AFTER PARTYをレポート

TRICERATOPS | 2017.08.04

 デビュー20周年記念日の7月21日に豊洲PITで『20TH ANNIVERSARY TOUR “ROAR×20”』のファイナルのステージを行ったその翌々日の7月23日、AFTER PARTYとして開催されたのが、この日比谷野外大音楽堂でのステージだった。1曲目はツアーと同じ「KING OF THE JUNGLE」だった。日比谷公園の木々に囲まれた会場内に林幸治の骨太なベースが彷徨をあげるように鳴り響いていく。さらに和田唱のソリッドなギター、吉田佳史のパワフルなドラムスが加わり、和田の「Yeahhhh!!」というシャウトが始まりの合図となった。ツアー・タイトルにある“ROAR”を直訳すると、“吠える”という意味がある。そのタイトルにふさわしい始まり方だ。さらに「Shout!」へ。和田の歌声に林と吉田がハモりを入れ、観客もハンドクラップで参加して、一体感あふれる祝祭的な空間が出現した。

「雨、やんだ? すごいね。なんかのパワーが働いたとしか思えないね。AFTER PARTYだからって、オレらが飲みながら楽にやるようなものを想像したら大間違いだからね。もちろんパーティーなんだけど、本気で行きます!」と和田が言うように、彼らは気迫あふれる演奏を展開して、ツアーの集大成+スペシャルな夜となった。初期の曲もたくさん演奏されたのだが、どの曲も新鮮に響いてくるのは、彼らが向上心を持って音楽と対峙していて、音色、グルーヴ、アンサンブルが日々更新され続けているからだろう。クールなリズムとせつないメロディとが融合した「GOTHIC RING」など、彼らの唯一無二の歌が披露されていく。本ツアーでは披露されなかった「トランスフォーマー」では会場内からシンガロングが起こって、温かな空気が漂った。

 和田のソロ・コーナーではまずアコースティック・ギターによるインスト演奏で「Over The Rainbow」を披露。繊細かつ端正かつ豊潤な演奏が素晴らしい。雨上がりの日比谷の空に虹は出ていなかったけれど、目をつぶって和田のギターに耳を傾けると、虹の存在を感じ取れそうだった。さらにアコギの弾き語りで「Fly Away」へ。どちらの曲も野外のこのシチュエーションで聴くのが最高だ。ここで林と吉田が登場して、和田がエレピを弾くアコースティック編成で「if」、さらにレアな曲「ラストバラード」へ。歌心あふれる演奏も、3人の息の合ったコーラスワークも見事だった。こうした豊かな演奏は20年やり続けてきたからこそだろう。

 AFTER PARTYということで、豪華なシークレット・ゲストも駆け付けた。姿を現す前に一足早く音での参加。ロックンロール・スピリッツとブルース・フィーリングあふれるギターがスリーピースの演奏に加わっていく。

「野音がメチャクチャ似合う男です。もっともっと大人になったら、こんな人になりたいと思っていました」と紹介されて登場したのは仲井戸“CHABO”麗市だった。まずはCHABOのオリジナル曲「GIBSON」から。CHABOと和田のギターのかけ合いを聴いているだけで、つい顔がほころんでしまう。CHABOが和田を指で指すと、和田が弾き、和田がCHABOを指さすと、CHABOが弾く。背中合わせになったり、向き合ったり。リードボーカルも二人が交互にとっていく。林も吉田もこの瞬間を思いっ切り楽しんで演奏している。和田とCHABOとは過去にも何度かアコースティック編成で共演しているのだが、エレクトリック編成ではこれが初共演だ。「お招きいただき光栄です」とCHABO。「野音にCHABOさん!」という和田の言葉に胸が熱くなってしまったのは、CHABOと故・忌野清志郎が在籍していたRCサクセションが、野音をホーム・グラウンドとするバンドだったからだ。「GIBSON」に続いての共演は「NEW WORLD」。ここでも歌のかけ合い、ギターのかけ合いが楽しい。林のベース・ソロも交えて、セッションがどんどん白熱していく。CHABOの指笛が入ってくる瞬間もあった。フォーピースでの演奏が馴染んでいた。

 仲井戸“CHABO”麗市がステージから去ってからは再びスリーピースでの演奏。スモークが照明で赤く照らされる中での「SMOKE」は、陰影の深い歌と演奏が魅力的だった。「ロケットに乗って」では林のベースのストラップが切れるハプニングもあった。しばしストラップなしでの演奏。和田も吉田も笑いながら演奏している。アクシデントに動じないところにも、20年培ってきた経験値の高さが表れている。続いては林と吉田による「HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE」。二人の放つ強力なグルーヴが空にまで広がっていきそうだ。野外の開放感あふれる空間での自在なセッションが気持ちいい。和田と入れ替わりで林と吉田がいったん退場。

「オレらの音楽って王道を行ってないけれど、好きでいてくれて、こうやってライブに来てくれて。これはすごいことだよ。より絆が深いよね。せっかく20周年なので、ルーツ的な洋楽のカバーを、ここ数年、冬によく合うお友達…というか大先輩と一緒にやりたいと思います」という和田の言葉によって登場したもうひとりのシークレット・ゲストは小田和正だった。演奏されたのは一昨年の『クリスマスの約束』でも演奏されたマイケル・ジャクソンの「Heal The World」と「The Girl Is Mine」のメドレー。小田と和田がアコギを弾きながら、歌い、そしてハモっていく。二人のピュアなコーラスも絶品だった。マイケルへのリスペクト、お互いへのリスペクトなどなど、音楽への愛があふれる歌と演奏が胸に染みてくる。ここから林と吉田も交えて4人でのステージ。「小田さんが新たなメロディを考えてくれました」とのことで、小田がコーラスのアレンジをした「FEVER」へ。音楽の魔法の調味料がもうひとつ加わることで、さらなるきらめきを放つナンバーになった。2人の豪華なゲストの参加はTRICERATOPSが日本の音楽の歴史を継承しているバンドであることの証しでもあるだろう。ちなみに小田が野音のステージに登場したのは45年ぶりとのこと。そんなレアな機会を作ってしまうTRICERATOPSもすごい。

 ゲストが登場して大盛り上がりした直後に、さらなるピークを作っていけるところにもTRICERATOPSというバンドの懐の深さがある。観客とのかけ合いもまじえての「スターライトスターライト」でもラブ&ピースあふれる感動的な空間が出現した。本編ラストの「GOING TO THE MOON」ではファイティング・スピリッツあふれる演奏に会場が揺れた。あたりはすっかり暗くなって、夜空が広がっていた。月は見えないけれど、彼らの奏でるサウンドは分厚い空を越えて月まで届いていきそうだ。アンコールでは「Believe The Light」、そしてバンドの歴史の始まりを告げた曲「Raspberry」が演奏された。バンドと観客が一体となって、歌い、踊り、そしてこの20年を祝っていく。バンドが観客を誇りに思っているだけでなく、観客がTRICERATOPSの音楽を好きでいることを誇りに思っていることも伝わってきて、胸が熱くなった。

「いろんな景色を味わえたよ。次会う時まで笑顔でいてほしいと思います。日々いろいろあると思うけれど、オレたちの音楽がみんなのエネルギーになってくれたら、うれしいです。ぜひ使ってやってください。みんなのこともCHABOさんと小田さんがゲストで出てくれたことも誇りに思います。そして何よりも変わらない3人でここまでこれたことを誇らしく思うかな」という言葉には盛大な拍手が起こった。彼らはスリーピースの表現の可能性を追求してきたバンドだ。ルーツ・ミュージックへの敬愛の念を持ちながらも、常にクリエイティブで音楽的に豊か。3人ともが向上心を持って音楽と接して、成長し続けているからこそ、今の彼らがある。とは言え、小田和正も仲井戸“CHABO”麗市もデビュー48年目。TRICERATOPSの20年なんてまだまだひよっ子、いや恐竜にたとえると、卵から孵って歩き出したくらいのところか。本編ラストの「GOING TO THE MOON」での“まだ足りないから”というフレーズがリアルに届いてきたのは彼らが過去ではなく、未来を見つめて演奏していたからだろう。20年という年月のかけがえのなさ、尊さも感じたが、過去ではなくて、未来へと思いを馳せたくなるステージでもあった。

【取材・文:長谷川 誠】
【撮影:山本倫子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TRICERATOPS

リリース情報

Shout!

Shout!

2015年11月25日

Trinity Artist

1.Shout!
2.スターライト スターライト
3.GOOD ENOUGH

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セットリスト

20TH ANNIVERSARY TOUR
“ROAR×20”AFTER PARTY
2017.07.23@ 日比谷野外大音楽堂

  1. 01.KING OF THE JUNGLE
  2. 02.Shout!
  3. 03.SECOND COMING
  4. 04.GOTHIC RING
  5. 05.GROOVE WALK
  6. 06.トランスフォーマー
  7. 07.【SHO’S SOLO】Over The Rainbow
  8. 08.【SHO’S SOLO】Fly Away
  9. 09.if
  10. 10.ラストバラード
  11. 11.GIBSON
  12. 12.New World
  13. 13.SMOKE
  14. 14.ロケットに乗って
  15. 15.HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE
  16. 16.マイケルジャクソンメドレー (Heal The World?The Girl Is Mine)
  17. 17.FEVER
  18. 18.スターライト スターライト
  19. 19.赤いゴーカート
  20. 20.GOING TO THE MOON
 ENCORE
  1. EN 01.Believe The Light
  2. EN 02.Raspberry

お知らせ

■ライブ情報

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017
08/05(土) 国営ひたち海浜公園

SLOW LIVE ’17
09/02(土) 池上本門寺特設野外ステージ

PIA 45th ANNIVERSARY MUSIC COMPLEX 2017
09/10(日) 新木場・若洲公園

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017
09/23(土) 岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ

Reiny Friday -Rei & Friends- Vol.7
10/06(金) 東京都shibuya duo MUSIC EXCHANGE
◆和田唱ゲスト出演

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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