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水曜日のカンパネラ 「IN THE BOX TOUR」 東京公演レポート

水曜日のカンパネラ | 2017.08.23

 客電が徐々に暗くなり、漂い始めた白いスモーク。波の音や虫の声が聴こえてきて、いつの間にか会場内は非日常の空間となっていた。そしてステージを覆っている幕の中央部分がわずかに開き、向こう側から漏れてきた光……その中からコムアイが歌いながら、ゆっくりと歩いて登場した。1曲目に届けられたのは「ゴッホ」。幕が完全に開いて露わとなったステージ上に聳え立っていた巨木のオブジェの存在感がすごい。原生林で行われている儀式のような幻想的なオープニングであった。

 ライブの前半はMCを殆ど挟むことなく、水曜日のカンパネラの音楽の世界を、とことん観客に体感させる構成となっていた。「嬴政」「チャップリン」「オードリー」「メロス」……妖艶な音像、刺激的なビートが響き渡る中、しなやかに踊りながら歌い続けたコムアイ。「バク」が始まると、ステージを完全に覆った紗幕の表面にコムアイの姿が影絵のように揺らめいた。曲の途中で紗幕は切って落とされたのだが……その端を両手で掴み、ベールように頭上に掲げたコムアイ。そして彼女が立っている床部分が、観客のいるフロアの真っ只中へと突然移動し始めて仰天! 移動に伴い、フロアの前半分くらいがすっかり紗幕で覆われ、まるで波打つ海面のように揺れる。巨大なミラーボールの真下に立ち、海の上に立っているかのような姿を煌めかせた彼女の姿が、とても神々しかった。

「ウランちゃん」「ユタ」をフロアのど真ん中、360°を観客に囲まれながら歌った後、コムアイが立っていた台は、スタッフによって運ばれながらゆっくりと移動。「ピカソ」を歌い終えた頃には、下手後方のバルコニー辿り着いていた。「どうもー! 水曜日のカンパネラです。今日は本当にありがとうございます」と挨拶をした直後、近くにいた女性客が「シンガポールに行く!」と話しかけたらしい。「シンガポール行くの? ハウパーヴィラっていうところは、絶対に行ってほしいです。タイガーバームを作った人のテーマパーク。中国の神話とか民話とかが蝋人形になってるの。蝋人形の顔のほとんどが私に似てる(笑)。あと、バクテー(肉骨茶)食べた方がいいよ。シンガポールで「ユニコ」のMVを撮ったんです。今年まだまだライブで海外に行く予定があるので、よかったら来てください。旅行がてらね。待ってまーす!」……先ほどまでの神々しさから一転。友だちとの日常会話のようにリラックスしまくったMCなのが面白い。観客は和やかな時間を存分に楽しんでいた。

 下手バルコニーで「ライト兄弟」を歌い始めたコムアイは、徒歩で移動。バルコニーのさらに上にある2階席を通過し、観客を沸かせ続けていた。続いて「ツチノコ」は、再び移動式の台に乗って歌いつつフロア内を移動しながら、メインステージへ。神出鬼没の彼女を目で追いながら興奮している内に、新木場スタジオコースト全体が1つの大きな舞台と化しているのを自ずと感じた。観客の大合唱が響き渡った「シャクシャイン」。和的な情緒が漂うダンスフロアと化していた「世阿弥」。夢中になって踊る観客のエネルギーがものすごかった「坂本龍馬」……舞台セットや照明などと同様、あの場にいた全ての人がコムアイのパフォーマンスと曲を彩る美しい要素となっていた。

 本編を締め括ったのは「桃太郎」。イントロが流れるや否や大喜びの歓声を上げた観客。《♪きびだーん きびきびだーん おにたーいじ おにおにたーいじ》、歌いながら腕を動かす振り付けや、時折飛び出す合いの手の一体感が素晴らしい。途中で「いろんな東京みやげを持ってきました!」と、お菓子の袋らしきものをばら撒いた後、コムアイは透明のウォーターボールの中に入り、フロアにいる観客の頭上を転げまわった。ウォーターボールのパフォーマンスは恒例となっているが、何度観てもドラマチック極まりない。エンディングを迎えて、手を振ってステージを後にした彼女に大きな拍手が送られた。

 アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきたコムアイ。「ありがとう! あと数曲やらせてもらっていいですか? 今年は人生の中でもいろいろある年でして、ツアーのスタッフもほとんど変わり、“前から知ってたけど、何で一緒にやってなかったんだろう?”っていう人たちとやっています。本当に来てくれてありがとうございます。頑張りますので、これからも遊びに来てください。じゃあ、お礼の意味をこめて。頑張ってくれているスタッフのみなさんにも愛情をこめて」というMCを経て、「一休さん」を披露。巨木のオブジェに登りながら歌っている姿が、とても楽しそうだった。続いて「アマノウズメ」。巨木から下りてフロアに突入した彼女は、天井からぶら下がっているミラーボール風のブランコに乗った。光の粒子をキラキラと四方に放ちながら揺れ動く様が美しかった。

 ラストの曲「マルコ・ポーロ」を、フロア内に置かれた脚立の上に立って歌い始めたコムアイは、やがて移動式の台に乗ってメインステージへ。巨木のオブジェに活けられていた花を手にすると、再びフロアに突入した。そして上手側の扉が開き、会場内に差し込んだまぶしい光の中へと彼女は消えて行った……ヒグラシの声が流れ、終演を迎えたことを悟った観客は、夢から覚めたような表情を浮かべていた。

 最初から最後までがワクワクする刺激の連続となったこのライブは、水曜日のカンパネラのかけがえのない魅力を改めて噛み締めさせてくれた。聴覚だけでなく、あらゆる感覚を揺り動かしてくれるこんなライブは、他では絶対に味わえない。生の水曜日のカンパネラを未体験の人は、今後、ぜひ機会を見つけて会場に足を運んでほしい。

【撮影:横山マサト】
【取材・文:田中 大】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 水曜日のカンパネラ

リリース情報

[配信]ピカソ

[配信]ピカソ

2017年07月28日

WARNER MUSIC JAPAN

1 ピカソ

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セットリスト

水曜日のカンパネラ・ワンマンライブツアー 2017 〜IN THE BOX〜
2017.7.26@新木場・STUDIO COAST

  1. 1.ゴッホ
  2. 2.嬴政
  3. 3.チャップリン
  4. 4.オードリー
  5. 5.メロス
  6. 6.バク
  7. 7.ウランちゃん
  8. 8.ユタ
  9. 9.ピカソ
  10. 10.ライト兄弟
  11. 11.ツチノコ
  12. 12.シャクシャイン
  13. 13.世阿弥
  14. 14.坂本龍馬
  15. 15.桃太郎
 ENCORE
  1. EN1.一休さん
  2. EN2.アマノウズメ
  3. EN3.マルコ・ポーロ

お知らせ

■ライブ情報

IN THE BOX TOUR
10/13(金) Legacy TAIPEI(台北)
10/14(土) Legacy TAICHUNG(台中)

SWEET LOVE SHOWER 2017
08/26(土) 山梨交流プラザきらら

SENDAI OTO Fes2017
09/02(土) セキスイハイムアリーナ

OTODAMA’17〜音泉魂〜
09/03(日) 泉大津フェニックス

BAYCAMP2017
09/09(土) 川崎市東扇島東公園・特設会場

氣志團万博
09/17(日) 千葉県・袖ケ浦海浜公園

ULTRA JAPAN
09/16(土) - 09/18(月・祝)
お台場ULTRA JAPAN特設会場

CAMPFLOG GNAW CARNIVAL 2017
10/28(土)、29(日)
LA・エクスポジションパーク

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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