前へ

次へ

当サイト独占!!ゴスペラーズ・村上が原点と言ったアカペライベントをレポート

ゴスペラーズ | 2017.09.06

 WAVOC(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター)による「WAVOC presents 災害ボランティア支援 ゴスペラーズ アカペラコンサート」。ゴスペラーズ主催で2011年から毎年開催されてきたコンサートだ。全アクトがアカペラで出演するというスタイルのこのイベントも本年で7回目となる。開催する会場の規模も徐々に大きくなり、一昨年よりチケットもソールドアウトするようになった。初回から、このイベントを観て来て思うが、この数年で、このコンサートの存在意義が、しっかりと観客に浸透してきたように思う。

 8月19日、土曜日。8月に入ってからぐずついていた天候が、久々に夏らしさを取り戻した暑い1日だった。17時過ぎ。満員の川崎市教育文化会館。暗転する会場。暗闇にハーモニーが響く。ゆっくりと緞帳が上がると、そこにはゴスペラーズ、トライトーン、クリス・ハートが揃っていた。
3組による「夢伝説」でイベントはスタート。挨拶と出演者の紹介を兼ねた、この日最初のMCでは、過去最高の動員数となったことを告げ、改めて観客に感謝の意を伝えた後、村上てつやがこうつなげた。「毎年、WAVOCに結構な金額の支援金をお渡しできているのは、ここにいる皆さん自身です。皆さんにこのイベントの主旨をご理解いただき、こうしてご来場いただいていること、本当に御礼申し上げます」この言葉に合わせて、ステージ上の全員が深々と一礼した。
初出場となるクリス・ハートが「人生で1番緊張しました。でも本当に楽しかった。こうやってみんなでアカペラするなんてないから。いつもは1人だから」と、「夢伝説」を歌った感想を述べ観客を笑わせた後は、“EMTG MUSIC”サイトと連動して行われたアカペラグループオーディションから選出されたTasky5の紹介へ。

 ゴスペラーズが在籍していた早稲田のアカペラサークル“Street Corner Symphony”に所属する5人。メンバー全員4年生で就職も決まったという話が出ると、「でも大学は4年以上行けるから!」と安岡がつっこんで爆笑を誘った。ステージ中央に集まるTasky5。その中に、村上てつやも混ざろうとし、他メンバーに半分ひっぱられるようにステージ袖に引っ込む。本イベント恒例となりつつあるこのボケアクションに、会場は続・大爆笑。
ゴスペラーズは、しっかり観客を温めて、後輩・Tasky5の背中を押した。「教会音楽、聖歌を5人で奏でています。この場所に立てたことをとても光栄だと思います。頑張って歌います」と、グループの個性を伝える流暢なMCを交えながら、厳粛な中に温もりのあるハーモニーで2曲披露した。

 再びゴスペラーズが登場。アカペラの“カペラ”は、チャーチ=教会が語源だというトリビアを交えながら、だからこそこのイベントをやるにあたり、彼らは本当に素晴らしい音楽をやってくれた、ハーモニーの萌えポイントがたくさんあった(北山)と、Tasky5の歌を称えた。「じゃあ、我々も気合い入れて!ゴスペラーズのライヴを」と村上。
WAVOCのイベントでは、懐かしい曲を掘り起こすのも自分たちのテーマだと告げた後「この曲なんか、リリースは15年くらい前になるのかな」と「シエスタ」。初めてこの曲がステージに乗ったのは、今は無き新宿・シアターアプル。当時はスイートなポップスという印象だったが、久々に聴く「シエスタ」は、ゴスペラーズと一緒に月日を重ね、包容力のあるミディアムバラードになっていた。
「次の曲は歌ってそうで、ステージで本当に歌ってない」と紹介された「未来」。イントロの一音で大歓声に変わったのが「参宮橋」。久しぶりに歌う曲があると、観客がイントロと同時に反応する。ゴスペラーズのライヴでは珍しくないシーン。観客の記憶の中で、ゴスペラーズの楽曲がいつまでも生きている証拠だ。4月~7月に開催された2年ぶりの全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance”」でも、同様のシーンが何度もあった。
6人目のゴスペラーズと呼ばれる日も近いかもしれない(あくまで個人的観測です、すみません)“ルーパー”が登場し「FIVE KEYS」、続けてクリス・ハートを呼び込み「Just The Way You Are」を。前者はドープなアフロビート風のアレンジで漢気を別ベクトルでアップさせた。対して後者は少しスペーシーでライトなビートをループさせロマンチック&オシャレにリメイク。そのふり幅は“ゴスペラーズwith ルーパー”の今後の可能性を感じさせるに、十分なクオリティーだった。
「Just The Way You Are」ではクリス・ハートにもルーパーに声を吹き込んでもらい、ルーパー体験もしてもらった。「この曲は1人で歌うのが寂しい。また一緒に歌いたいなと思っていたから、嬉しい」というクリス・ハートの言葉を受け「続く道」のアカペラバージョンを。この曲は、ゴスペラーズがコーラスで参加した、クリス・ハートのオリジナル曲で、このようにコラボレーションを生で再現出来るのも、このイベントの醍醐味だろう。曲調同様、ハッピーでピースフルなムードが会場全体を包んだ。

 次にステージに登場したのはトライトーン。1曲目の「Isn’t She Lovely」から、アドリブで5人揃ったキュートなラインダンス風のジェスチャーが飛び出す。このアドリブに、歌いながら「ダサい!」と笑顔でツッコミを入れるのはリーダーの多胡。阿吽の呼吸に観客からも笑いがもれる。2017年で活動25周年を迎えた彼らは、活動当初のレパートリーであるカバー曲を3曲続けた後「今年作ったオリジナル曲です」と「音の波、言の葉」へ。抒情手的でドメスティックなメロディーと優しいハーモニーが特徴の新曲を観客の心に響かせた。軽快なアップチュ―ン「アカペラでゆこう」では、リズムにのって会場全体からクラップが起こった。
多胡がゴスペラーズを呼び込み、ゴスペラーズとトライトーンのセッションで聴かせたのは、村上と多胡がアカペラアレンジを手掛けた「あの鐘を鳴らすのはあなた」。エンディングでは、大きな鐘が鳴っているのをイメージさせる、斬新なコーラスアレンジで会場を余韻に浸らせた。

 「アカペラ人たちの祭典、楽しんでいただけてますでしょうか」という村上の言葉から、再びゴスペラーズのステージへ。ここまで一貫して生明り中心だった照明に色や宿り、少しずつ楽曲を彩っていく。「Love me! Love me!」では、黒沢が歌詞を忘れ、マイクを通して「あっ!」と言ってしまうハプニング発生。このアクシデントに、5人5様のリアクションをしたゴスペラーズメンバー。酒井は黒沢をのぞき込み、安岡は視線だけを動かし黒沢をチラ見。北山は笑わないように一瞬下を向いた後、表情に力をこめた。村上は、歌いながら少し天をあおぎ、客席に満面の笑顔(半分苦笑?)を向けた。黒沢本人に至っては、左手で額のこめかみあたりに手を当て、そのままうつむき、頭を軽く振るジェスチャー。黒沢の背後に“困惑”という文字が見えた気がしたのは、私だけじゃない、はず? 
続く「Street Corner Symphony」では、会場を3パートに分け、観客と一緒にハモる“なりきりゴスペラーズ”。「結構、難しいから!」と言いながらも、“でも余裕だよね、これくらい”という表情でレクチャーしていくゴスペラーズに、観客は大音量の素晴らしいハーモニーでレスポンスした。ハーモニーを介してつながったステージと客席。人間と人間。それはメロディーを繰り返すたびに重なり、大きくひとつになった。

 5人が、この日、本編最後に選んだ曲は「Promise」だった。アンコールでは、出演者全員で「坂道のうた」を。東日本大震災を受け、大船渡の幼稚園の園歌として作られたこの曲は“津波がきたら高いところまで逃げなさい”というメッセージが込められている。「ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance”」で、つい先日、大船渡市を訪れたことに触れながら、歌唱する前に、今1度、歌の意味を説明した村上。最後はこう締め括った。 「何度も歌うことで、先人の教えを体に染みこませる…こういう形で歌の力を借りることもあるんだな、と。あってもいいんじゃないかなと思います」
ステージの中央に立った北山が指揮を取り、出演者全員が息を吸い込み歌い始める。「坂道のうた」。言葉にメロディーにそれぞれの思いを込めて、全員が歌に力を吹き込んでいるようだった。

 ゴスペラーズの本領が発揮されるのはライヴだ。そして彼らには“本領”が多様にある。歌、ハーモニーのバリエーション、観る者の緊張を解くMC、ダンス、ライヴ全体のコンセプトや流れ……細かく上がればきりがない。 しかし、このアカペライベントで露わになったのは、彼らの本質だった。ストイックにエンターテインメントを追及し、本領を増やし続けてきたゴスペラーズの本質は、他人との声のつながりがないと成立しない音楽=アカペラ(ハーモニーもここに含まれる、これ重要)にあったのだ。

 この日、村上は言った。「アカペラを楽しみにしてくれている皆さんがいること、それは、僕らにとって、本当に嬉しいことです」  本質を分かってくれる人がいるから、メンバー以外にも声と声をつなげてくれる人たちがいるから、ゴスペラーズは、いつでも新しいことにチャレンジ出来るのではなかろうか。

 本領と本質。また新たにゴスペラーズの魅力を見つけた、真夏の夜だった。

【撮影/市橋照子】
【取材・文/伊藤亜希】

tag一覧 J-POP ライブ ゴスペラーズ

リリース情報

Soul Renaissance

Soul Renaissance

2017年03月22日

Ki/oon Music

1. イントロ’17
2. GOSWING
3. Dream Girl
4. All night & every night
5. Hide and Seek feat.RHYMESTER
6. Recycle Love
7. 暁
8. インター’17
9. Deja Vu
10. Silent Blue
11. Let it shine
12. angel tree
13. Liquid Sky
14. Fly me to the disco ball

セットリスト

WAVOC presents 災害ボランティア支援 ゴスペラーズ アカペラコンサート
2017.8.19@川崎市教育文化会館


[ゴスペラーズ、トライトーン、クリス・ハート]
  1. 1.夢伝説

[Tasky5 ※オーディション出演グループ]
  1. 1.O Holy Night
  2. 2.How Great Thou Art

[ゴスペラーズ]
  1. 1.シエスタ
  2. 2.未来
  3. 3.参宮橋
  4. 4.FIVE KEYS
  5. 5.Just The Way You Are(with クリス・ハート)
  6. 6.続く道(with クリス・ハート)

[トライトーン]
  1. 1.Isn’t She Lovely
  2. 2.Love Letters
  3. 3.Moon River
  4. 4.音の波、言の葉
  5. 5.心をつないで
  6. 6.アカペラでゆこう

[ゴスペラーズ、トライトーン]
  1. 1.あの鐘を鳴らすのはあなた

[ゴスペラーズ]
  1. 1.夜をぶっとばせ
  2. 2.Love me! Love me!
  3. 3.Street Corner Symphony
  4. 4.Promise

[ゴスペラーズ、トライトーン、クリス・ハート、Tasky5]
  1. 1.坂道のうた

お知らせ

■ライブ情報

ゴスペラーズ橋ツアー2017
11/28(火)鳥取・湯梨浜 ハワイアロハホール
11/29(水)岡山・音楽文化ホール ベルフォーレ津山
12/01(金) 山口・ラポールゆや

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る