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『LILI LIMIT presents Archive』全国6都市で開催されたワンマンツアーの東京公演をレポ

LILI LIMIT | 2017.10.03

 スッと暗転する空間。雑踏のような効果音。オーケストラのチューニングのSEが流れる。バックからの白いライト。メンバーのシルエットがスタンバイする。教会のパイプオルガンを思わせる音。その和音が大きくなっていく。ドラムス丸谷のカウント。
『LILI LIMIT presents Archive』。全国6都市で開催されたワンマンツアーの東京公演。9月16日、SHIBUYA WWW Xでのライブは、このバンドが初期(上京当時)から大切に育ててきたポップチューン「at good mountain」でスタートした。
グッドメロディに、ネオアコやギターポップを思わせるサウンドアレンジ。バンド然としたサウンドで聴かせるポップチューンだが、ヴォーカル牧野の歌声の“出音”が、これまでのライブと比べて明らかに変わっていた。反響し、楽曲に別の表情を添えていたのだ。
このバンドの大きな個性として、楽曲を再現する際、作品(CD)とライブに対する向き合い方が大きく違うという要素がある。リミックスとまではいかないが、楽曲をライブアレンジにしてくる。デビュー前からそうだったし、これまで、自分たちが描くライブの完成形に近づくために、様々な葛藤とチャレンジの繰り返しが見て取れた。それが、ひとつの完成形を見せたのが、今回のワンマンツアーだったのではなかろうか。
1曲目の牧野のヴォーカルの出音の変化は、この日のライブをそう予感させるに十分な刺激があった。
この予感は即座に確信に変わる。次の曲から4曲を、ライブアレンジで、鮮やかにつなげてみせたのである。どういうことかというと、DJのように、ノンストップで次々と楽曲が繰り出される形だ。
牧野が「夏を思い返せ!」と紹介した2曲目「h.e.w.」は、ベースをハウリングぎりぎりまで音圧を上げ、ダヴの効果も出しながら大きくグルーヴさせた。エンディングでカラフルなライトが旋回する中、リズムの出音が変わっていく。生ドラムから打ち込み4つ打ちがメインに。ミニマルテクノの如くフロアライクな音圧と、鍵盤のループする短いフレーズで観客を躍らせた「Observe」では、牧野がハンドマイクで前に出てきて、自らも躍った。低音が残る中「東京で見た景色を!」と牧野が叫んで「N_tower」へ。ファンクの定番、シンコペーション・ギターのアプローチも印象的なファンキーチューンに、客席が大きくうねる。最後の ♪ La La La~ ♪ は大合唱になった。混沌としながら表情を変えていくバンドサウンド。「観たことのない景色に行こうぜ」と牧野。序盤から、ギターを弾きながら、ステージ上のミキサーをいじる八面六臂の活躍を見せた土器が、ラウドなギターでイントロ。「Boys eat Noodle」でバンドは、サウンドを会場に叩き付けるような激しさを見せた。変革という言葉が浮かぶようなバンドのエネルギー。彼らは、序盤から惜しみなくそのエネルギーを放った。リリースを重ね、ライブを重ね、スキルが上がり、タフになった。そして何よりも観客をグルーヴにライドオンさせていこう、自分たちの空間に巻き込んでいこうという意識が感じられた。彼らの楽曲は、大きな塊になっていた。
最初のMC。「みんな今日はありがとう、LILI LIMITです。最高です」と牧野が挨拶。6月末に発売されたEP、並びに今回のツアーは、次のステージに行くためというテーマがあったと言い、人生では次のステージのことを考えなくちゃいけないタイミングがある、本当は大胆に生きたいんだけどできない、と、自らを省みて本音を吐露。その後、少し声をはり、こう締めくくった。「だから俺は、臆病者の味方になると決めてこの曲を書きました」と「LIKE A HEPBURN」。途中 ♪ ほんの少し 私はね 勇気が欲しい ♪ と歌った後「みんなもそうでしょ?」と語りかけながら客席に笑顔を向けた。
中盤には、彼らにしては珍しい8ビートの「Wink,Blink」や、女性2人のコーラスが讃美歌の様に響く「in your site」、本ツアーで初めて演奏された「nnmnd」などを披露。「まだまだあげていきます!愛をこめて!」と牧野が叫び、ライブは後半へ。「今日、最高の盛り上がりを見せてください」と「Kitchen」。間奏では、リズムに合わせて観客がジャンプする姿も見えた。次の曲のイントロが鳴る。歓声が上がる。会場のあちこちで手が挙がる。牧野の「みんなこの曲、好きでしょ?」という、強気な性格が出た(?)言葉からキラーチューン「Girls like Chagall」へ。歌詞に合わせて観客が、1、2、3、と順番に指を出していくお馴染みの光景が目の前に広がった。
長めのMC。少し前、日本列島を駆け抜けた“アラート”のニュースについて思うことを語る牧野。いつどうなるかわからない今の世の中、だから出逢いを大切にしたい、今日ここで皆さんと出逢ったこともとても大事なことと告げ「出逢ってくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを述べた。牧野が続ける。こういう時代だからこそ、皆の何かに残るような、そういうバンドになりたいと述べた後、こうまとめた。「皆が、ある瞬間にこの空間の雰囲気とか、音楽の匂いとかを思い出せるような、そういう存在になりたいと思っています」
「A Few Incisive Mornings」。あげる曲を中心に構成された今回のセットリストの中で、唯一のダウンテンポ。じっくりと聴かせた。本編最後は、観客のクラップと一緒に「LAST SUPPER」。「歌える?」と牧野が客席にマイクを向ける。そこにいる全員が一緒に歌った。アンコールでは、バンドとして初めて全員で作った曲「STREET VIEW」を。白い光と薄いブルーのライトが、優しくステージと客席を照らす。大胆でクールで、フロアライクなサウンドを土砂降りの様に降らせながら、クールになりきれない彼らの素がのぞく。
それはまるで、ゲリラ豪雨が去った後の雲間からの光のようにきれいで優しくて。厳粛でもあった……なんて書いたら褒め過ぎかな。でも、きっとそう心の底から感じるくらいまで、彼らは自分たちを持っていってくれるのではないか、持っていって欲しいと切に願う。
そうなるには課題もあるだろう。フロアライクの音圧とグルーヴを楽曲の軸に据えた際の出音のバランスも含めたヴォーカルのポジション、メロディの扱い方、それぞれのステージパフォーマンスなど、進化していく中での変化を期待したい。
頼むよ、LILI LIMIT。まだ知らないあそこまで、連れてってくれるよね?

【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】

tag一覧 ライブ LILI LIMIT

リリース情報

LAST SUPPER EP

LAST SUPPER EP

2017年06月28日

Ki/oon Music

01. LAST SUPPER
02. LIKE A HEPBURN
03. ERAION
04. STREET VIEW

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セットリスト

LILI LIMIT presents Archive
2017.9.16@SHIBUYA WWW X

  1. 1. at good mountain
  2. 2. h.e.w.
  3. 3. Observe
  4. 4. N_tower
  5. 5. Boys eat Noodle
  6. 6. LIKE A HEPBURN
  7. 7. Wink,Blink
  8. 8. in your site
  9. 9. A Short Film
  10. 10. Naked
  11. 11. nnmnd
  12. 12. vanilla ice claim
  13. 13. ERAION
  14. 14. Living Room
  15. 15. Kitchen
  16. 16. Girls like Chagall
  17. 17. A Few Incisive Mornings
  18. 18. LAST SUPPER
  19. en1. STREET VIEW

お知らせ

■ライブ情報

FM802 MINAMI WHEEL 2017
10/8(日) 心斎橋JANUS
※LILI LIMITは18:15〜の出演になります。

夢チカLIVE VOL.123
10/21日(土)[北海道]KRAPS HALL

パナフェス2017
12/17(日) 神戸ライヴハウス3箇所

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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