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出し惜しみや助走は一切なし!ビッケブランカ、高揚感に包まれたツアーファイナル東京公演をレポート!

ビッケブランカ | 2017.10.27

 明かりが消えた会場に響く雷鳴は、アルバム1曲目でもある「FEARLESS」の不穏な鍵盤のメロディーへ。ステージを覆っている紗幕に怪しげな光と影が行き来し、高まるバンドサウンドのもと、サーチライトが見覚えある帽子姿のシルエットを捉えた。敬礼、そして出航のカウント!切って落とされた幕の向こうに広がっていたのは、色鮮やかなガーランドが視界いっぱいにはためく海賊船の甲板だった。頭上には、巨大な「FEAR」のネオン。キャプテンハットを被ったビッケブランカとその仲間たちの航海は、会場(海上)に渦巻く興奮をごっそり独り占めするかのように、「Take me Take out」からスタートした。

 ちょうど1ヶ月前。ビッケブランカの地元、名古屋ダイヤモンドホールからスタートした「ビッケブランカFEARLESS TOUR 2017」が、この日赤坂BLITZでファイナルを迎えた。回を重ねるたびに確かなものになっていったライブの楽しさと、7月にリリースされたアルバム『FEARLESS』の手応えがとんでもなく高い位置で結実しながら始まったツアーの最終日だ。会場の熱気とか人々の興奮が目に見えるとしたら、この日は開演前から”ものすごいモノ”がステージに向けて放たれていた気がする。だけどいざライブが始まると、バンドもその期待感を先回りして上回るかのように「Take me Take out」、「ココラムウ」、「アシカダンス」とキラーチューンを連発。出し惜しみや助走は一切ないセットリストで、オーディエンスに向き合っていた。

「長いようで短いような1ヶ月のツアーでした。ファイナル赤坂BLITZ、こんなにいい景色が見れるとは思わず。ありがとうございます。昨日コンタクトを新しいのにしまして。2 WEEKで14日間使えるやつだったんですが、BLITZなんだから当然新品でしょということで、4日で捨ててやりました(笑)!みんなの顔がよく見える(笑)!今日は楽しい時間になればいいなと思います!」

 相変わらずのビッケ節でツボを突いてくるMCだ。「Bad Boy Love」~「Natural Woman」では、高揚感の中にあってもどこかどっしりとしたリズムを効かせていたのが印象的。ひと呼吸おいて始まった「Broken」への流れでは、それぞれのメンバーが豊かな音の表情を流し込んだバンドサウンドを堪能することが出来た。「追うBOY」と「Want you Back」は、オーディエンスのコール&レスポンスも楽曲を構成する重要な要素。ベースラインもCDよりグッと迫ってくるようで、ライブならではの生々しい音の感触が楽しめた2曲だった。

 後半は「変形!」の号令によってメンバーがステージ前方に並んでのアコースティック・スタイルから。CDの音とはまた違った角度から、聴く人の心に沁み渡ればと言葉を添えながら、まずは「さよならに来ました」を披露。続く「幸せのアーチ」に関しては、自分が作った曲にも関わらず、出来上がった瞬間にすごいエネルギーを感じた曲だと語っていた。言葉の粒、そしてそこに込めたメッセージがよりダイレクトに伝わって来る歌だ。バンド編成に戻って演奏されたバラード「Echo」では、そのビッケブランカの声にそっと寄り添うようにオーディエンスの声が加わる。呼応する静かなエネルギーはエンディングに向かってどんどん熱を帯びていき、曲が終わった瞬間には、会場中が讃美の拍手と歓声に包まれていた。

 マリンバもしくはスティールパンのような音色をパッドで叩きながら始まった「Stray Cat」のビートが、熱を帯びたままの会場の空気をさらに動かしていく。ライブもいよいよ後半戦だ。<強いわけじゃない 強くありたいだけ 誰だってそうやって生きていく>と歌われる「THUNDERBOLT」。賛同する力強いオーディエンスの声がエネルギーとなり、ひときわ大きな雷鳴が轟いた。掲げられていた「FEAR」のネオンが2つに砕け、フロアからは大歓声が沸き起こる。嵐の大海原を抜けたビッケブランカ号、次なる「Moon Ride」では降り注いできたカラフルなバルーンの海へ!「Slave of Love」そして「ファビュラス」と続いていった本編ラストは、ステージとフロアの垣根を飛び越えたところで、気絶しそうなほどの高揚感が生まれていた。まさに人生ファビュラス!そう叫びたくなるような景色だった。

 アンコールを待つフロアからは「THUNDERBOLT」の一節が繰り返されている。ステージに現れたビッケブランカはまずお礼を伝え、少しだけ昔を振り返る話を始めた。子供の頃から曲を作ることが大好きだったけど、そのまま聴いてもらうことができなかったからライブが嫌いだった。でもいろんな出会いや経験を経て、今は真逆。今はライブが出来ないと生きていけない。ライブでみんなからの”返事”をもらえることこそが生き甲斐。作った曲を一緒に楽しみたいと素直に思えるようになったし、今日は今までの人生でいちばん楽しいライブだったとまっすぐに気持ちを伝えていた。音楽で人を救うなんて調子のいいことを言うつもりはないけど、それが届いた時に、ちょっとでもいいことが起きますように。そんな願いを込めてこれからも頑張っていきたいと語っていた。アンコールで歌われたのは、「Wake up sweetheart」。幸せな気持ちを噛みしめるように歌い届けた最後は、今回もありったけの気持ちを込めたこの言葉だった。

「みなさん本当にありがとうございました!幸せになってください!」

 ツアーのファイナルを最高の形で締め括ったこの日。なかなか鳴り止まなかった拍手は、きっと次なる航海への追い風となっていくはずだ。

【取材・文:山田邦子】
【撮影:星野 健太】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル ビッケブランカ

リリース情報

FEARLESS

FEARLESS

2017年07月05日

avex trax

01. FEARLESS
02. Moon Ride
03. Take me Take out
04. Want you Back
05. Stray Cat
06. さよならに来ました
07. Postman
08. Broken
09. 幸せのアーチ
10. Like a Movie
11. Slave of Love
12. THUNDERBOLT

セットリスト

「FEARLESS TOUR 2017」
2017.10.14@赤坂BLITZ

  1. 01. Take me Take out
  2. 02. ココラムウ
  3. 03. アシカダンス
  4. 04. Bad Boy Love
  5. 05. Natural Woman
  6. 06. Broken
  7. 07. 追うBOY
  8. 08. Want You Back
  9. 09. さよならに来ました
  10. 10. 幸せのアーチ
  11. 11. Echo
  12. 12. Stray Cat
  13. 13. THUNDERBOLT
  14. 14. Moon Ride
  15. 15. Slave of Love
  16. 16. ファビュラス
  17.  ENCORE
  18. 01. Wake up sweethear

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