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今、フレデリックがクアトロ公演を行った意味とは。 「フレデリズムツアー2017 QUATTRO編~僕のTOGENKYO~」東京公演をレポート

フレデリック | 2017.11.09

 バンドにとっての大きな挑戦を前にして、フレデリックは自分たちの足場をより強固なものにしようとしていた。来年4月30日に初となる神戸ワールド記念ホールでのアリーナワンマンを発表した彼らは、その前哨戦として全国12ヵ所の秋ツアー「フレデリズムツアー2017 QUATTRO編 ~ぼくらのTOGENKYO~」と、前哨戦として、東名阪クアトロをまわる「フレデリズムツアー2017 ~僕のTOGENKYO~」の開催を決定。特にクアトロはいまのフレデリックには狭いと感じるライブハウスだが、あえてその場所からスタートすることに彼らは意味を持っていた。この日、渋谷クアトロのステージで三原健司(Vo・Gt)は「大きな会場でもお客さんとの距離は変わらない」と何度も言っていたが、きっと大切なのはそれだけじゃない。自分たちのこだわりを捨てないこと、その意志を伝え続けること、音楽を楽しむこと。これまで大切にしてきた一つひとつを胸に抱いたまま、彼らは初アリーナへと向かう。そのために、この日のライブはフレデリックが自分たちの居場所を確認する意義深いライブとなった。

「フレデリズムツアー2017、僕のTOGENKYO、はじめます」。健司のオープニング宣言から、ライブは意外な選曲の「シンクロック」でスタートした。『かなしいうれしい』のカップリングに収録されているこの曲はゆったりとしたグルーヴに哀愁のメロディがのる、フレデリックの新機軸となるナンバーだ。それを1曲目に置くことにはバンドの前進の意志が刻まれていた。歌詞の一部を“たった2時間ちょっとのワンマンのために 君はどれくらい心を揺らしてくれんの/たった1秒6文字のこのバンドで 僕はずっと思い描いてるんだよ”と替えると、会場からは大きな歓声が湧き起こる。さらにフレデリック印の繰り返しが中毒性抜群の「リリリピート」から「トウメイニンゲン」へ。生演奏でありながら、DJタイムのような趣で楽曲と楽曲をノンストップにつないでフロアを踊らせていった。

「フレデリックのディスコで遊びませんか?」。健司のMCは極めて短いまま、そこから6曲をぶっ通しで畳みかけ、中盤はいっそうディープなフレデリックの世界へとお客さんを引きずり込んでいく。三原康司(Ba)と高橋武(Dr)が繰り出す黒いグルーヴがたまらない昂揚感を生んだ「ディスコプール」や「ナイトステップ」という極上のダンスナンバーから、ステージ一面をスモークがすっぽり包み込むお馴染みの演出で魅せた「うわさのケムリの女の子」、社会への冷笑的な皮肉をワハハという乾いた笑いと共に綴った「まちがいさがしの国」や混沌とした音像で童謡が持つ独特の不気味さを増幅させたような「峠の幽霊」へ。フレデリックの曲のなかでも特に濃厚な曲たちに浸る感覚は、たとえばルイス・キャロルの物語の世界へと迷い込んだような、なんとも得体のしれない陶酔感がある。

「ここからはめっちゃ喋りますね。さっき(演奏を)やってた人とは全然違いますので(笑)」。そんな健司のMCで現実世界へと引き戻された。ここで今年5月に晴れて正式メンバーになったドラマーの高橋武を改めて紹介すると、たっぷりと時間をかけて4人それぞれの自己紹介コーナーへ。もともと関西在住でいまは東京に住むメンバー。赤頭隆児(Gt)が「2年前と変わったことは、マップを見んでも(渋谷クアトロに)来られるようになったこと。すっかり都民です」という“バンドの成長”を報告すると、ひょんなところから始まった将棋ネタでは、「小学校4年生のとき、囲碁将棋部だった」(健司)、「健司は顧問の先生を倒してたよな。王をとるだけじゃなくて、全部駒をとってた」(康司)という、お互いの幼い頃を知る双子ならではのやりとりでも会場を和やかなムードで包み込んだ。

 そして、ライブの後半は健司と康司がぴったりと声を合わせてタイトルをコールした「ふしだらフラミンゴ」から怒涛のクライマックスへと向かう。“踊ってない夜を知らない”のフレーズでフレデリックの名前を一躍全国区へと押し広げた「オドループ」では、お客さんによる息の合ったハンドクラップと合いの手を巻き込んで、“この瞬間だけの「オトループ」”を作り上げていった。“自分たちこそオンリーワンの存在になる”というバンドの意志を明確な言葉に刻み込んだ「オンリーワンダー」のあと、これ以上高まりようもないような熱狂のなかライブを締めくくったラストソングは「オワラセナイト」。“終わらせないと なにもはじまらないから”。そんなふうに歌うナンバーは、この場所からバンド史上最大の挑戦に向けて旅に出るバンドの、前哨戦となるライブの終わりに相応しいものだった。

 “TOGENKYO”という最新ミニアルバムの作品名を冠したツアーでありながら、気がつけば、この日のライブで本編のメインとなったのは、どちらかと言うと、これまでフレデリックが大切にしてきた曲たちだった。それもまた今回の東名阪クアトロがフレデリックにとって自分たちの原点を確認するほうに重きを置いていたからだろう。だが、アンコールは「2017年いちばんかっこいいフレデリックをお届けします」という健司の言葉とともに、「かなしいうれしい」と「TOGENKYO」というバンドの最新ナンバーで締めくくった。心の共鳴を求めたメッセージ性の強い歌詞、深みを増すサウンドアプローチ、そして洗練された歌。全てがアップデートされた最新のフレデリックの楽曲たちは、ツアーを経てますます研ぎ澄まされていくだろう。「俺たちの夢を音楽で叶えてきます。音楽で居場所を作ってきます」。“いってきます”の代わりに、健司が伝えたツアーにかける意気込みは力強かった。

ここから半年をかけて、フレデリックは全国のライブハウスをまわりながら、さらにアリーナへの覚悟を固めていく時間になるだろう。「アリーナをやることで“遠くに行った”と思われるかもしれない。でも、俺たちはライブハウスで始まったバンドだから、この熱をアリーナに持っていきたいと思っています。だから、今回のクアトロを決めました。俺たちは絶対に遠くに行かない。この熱が大事なんです」と、MCで健司は言っていた。今回の東名阪シリーズのツアータイトルは“僕”のTOGENKYOだったが、以降のツアーでは“ぼくら”のTOGENKYOになる。バンドの意志は示された。この想いを半年かけて“みんなのもの”にできたとき、フレデリックはいよいよ神戸ワールド記念ホールに立つ。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:Viola Kam (V’z Twinkle)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル フレデリック

リリース情報

TOGENKYO

TOGENKYO

2017年10月18日

A-Sketch

1. TOGENKYO
2. スローリーダンス
3. かなしいうれしい
4. たりないeye
5. ミッドナイトグライダー
6. パラレルロール
7. RAINY CHINA GIRL

お知らせ

■ライブ情報

フレデリズムツアー2017
〜ぼくらのTOGENKYO〜

11/11(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
11/12(日) 高松festhalle
11/19(日) 札幌FACTORY HALL
11/25(土) 金沢エイトホール
11/26(日) 松本 ALECX
12/02(土) 福岡DRUM LOGOS
12/03(日) 広島CLUB QUATTRO
12/08(金) 仙台 RENSA
12/09(土) 新潟NEXS NIIGATA
12/16(土) 大阪 Zepp Osaka Bayside
12/17(日) 愛知 Zepp Nagoya
12/21(木) Zepp Tokyo

フレデリズムツアー リリリピート公演
〜みんなのTOGENKYO〜

2018/01/13(土) 新木場STUDIO COAST
2018/01/14(日) 新木場STUDIO COAST

FREDERHYTHM ARENA2018
〜KOKYOのTOGENKYO〜

2018/04/30(月) 神戸ワールド記念ホール



MERRY ROCK PARADE 2017
12/23(土)-24日(日) ポートメッセなごや 1号館~3号館

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
12/28(木) インテックス大阪

COUNTDOWN JAPAN 17/18
12/29(金) 幕張メッセ 国際展示場1~11ホール、イベントホール

MASHROOM 2018
2018/01/21(日) 新木場STUDIO COAST

Fear, and Loathing in Las Vegas
「New Sunrise」Release Tour 2017-18

2018/03/31(土) 沖縄 桜坂CENTRAL

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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