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THE BACK HORNの20年の歴史にまた一つ伝説を加えた日比谷野外音楽堂ワンマン

THE BACK HORN | 2017.11.07

 雨は降っていたが覚悟の上で雨具を纏って集まった人たちには、むしろ気合の入るスペシャルエフェクトぐらいのものだろう。ステージに現れたTHE BACK HORNの4人にとっても、熱いライブをやる燃料のようなものだったのではないだろうか。このシリーズでは3回目6年ぶりの日比谷野外音楽堂ワンマンとなった『「KYO-MEIワンマンライブ」~第三回夕焼け目撃者~』は、3000人のオーディエンスとバンドが共鳴し、THE BACK HORNの歴史にまた一つ伝説を加えた夜となった。

 荘厳なSEが響く中、吠えながら登場した菅波栄純(Gt)、彼らを歓迎する声に笑顔で応えた松田晋二(Dr)、岡峰光舟(Ba)はいつものようにベースを持ち、山田将司(Vo)はマイクを握ると「野音へようこそ!」と幕開けを告げた。

 起伏に富んだ「閉ざされた世界」から緊張感のある3連で惹きつける「シリウス」で温め、腕を振り上げながら声を送るオーディエンスとバンドは早くもひとつになって、代表曲のひとつ「声」で一気に高みへ登る。歌い終えた山田が「ありがとう!」と言うと、松田がマイクを持って立ち上がった。6年ぶりの日比谷野音、来年には結成20周年になり、それを記念したベスト・アルバム『BEST THE BACK HORN II』をリリースしたばかりであることなどを手身近に伝え、 「雨も小降りになってきて俺たちの20周年を祝っているような気持ち。一緒に最高の時間を作っていきましょう!」

 デビュー・アルバムからの「ひょうひょうと」、インディーズ時代の曲「晩秋」を、今の彼らのサウンド・演奏で聴かせたのは20周年をリアルに感じさせ、それらの曲の軸になっているものは、歌詞に“野音”を潜り込ませた「コワレモノ」「その先へ」といった最近の曲と何もブレていないことを改めて思い知らせた。 「野音、楽しんでるか? 懐かしい曲もやるから、最高の日にしようね」 と山田がギターを手にして始まったのは「扉」。ヘヴィなベースとギターが絡む「アカイヤミ」、お馴染みのイントロに歓声が起きた「罠」とアグレッシヴな曲が続き、前に立つ3人が汗とも雨ともわからない飛沫を潤びらせながら激しく動き回ると、彼らとともに体を揺らすオーディエンスは「その先へ」のコーラスで見事にバンドと溶け合った。

 陽も落ちて闇が濃くなってきた日比谷野音は一段と熱を帯びてきた。息を弾ませながら松田が、 「野音どうもありがとう。一言で言えば最高です。野音は思い出のライブしかない。今日もそんなライブになりそうで、伝説の雨の中の野音ライブ!」 と言い拍手を受けると、菅波が 「自分で言ったら伝説にならないから(笑)。でもいいライブになってるね。俺らもお客さんも音楽に夢中だね。音楽が気休めかどうかわからないけど、君の気持ちが晴れるなら関係ねえと思ってる」 と更に沸かせた。そして、ステージ後方を一面に飾るバックドロップは菅波と岡峰の合作で妖怪を描いたものだと説明し、雨合羽を着たお客さんがノリノリの妖怪に見えると笑いを誘った。和んだところで松田が再びマイクに向かい 「この20周年はみんなとの20年。いろいろ思い返して、あの時こうだったなと照らし合わせる音楽になってくれたらいいなと思います。そのために音楽を作り続けます」

 こんな熱さが彼らの身上だが、同時に内面の影や孤独を見つめる彼らだから歌える慈愛に溢れた曲がある。そんな曲の代表格と言える「枝」そして「美しい名前」は雨に冷えた体を不器用な優しさで包み込んだ。光舟が背中を丸めて弾くベースのまろやかな音が余韻を残して響いた後、菅波のギターが柔らかに繋いで「あなたが待ってる」へ。ピアノとストリングスの音を重ねた大らかなサウンドに心が温まる思いがした。そんな気持ちを察したように山田が言った。 「みんなは人生の中で嬉しい瞬間苦しい瞬間をTHE BACK HORNとともに生きてくれると信じてます。それは俺らも一緒。苦しい瞬間を一緒に乗り越えていきましょう! それ以上に嬉しい瞬間楽しい瞬間を、まだまだ作っていこう! まだまだ最高の1日にできるぞ!」

 松田が力一杯シンバルを叩き「覚醒」に突っ込むと、一気に熱っぽさが高まった。10周年シングルだったこの曲で山田は促すようにオーディエンスに向かって手を差し出し、続く最新シングル「孤独を繋いで」は当然のようにシンガロングが起こる。その熱を受け継いで「最高だぞ野音、みんな楽しいか、まだまだ最高の日にしようぜ!」と山田が再び声を掛け、「コバルトブルー」に雪崩込む。たちまち突き上げた拳が空を切り、熱気が雨を揮発させ、力強いコールが響き渡った。山田が「また生きて会おうな!」と叫び「シンフォニア」のタイトなイントロが響くと、歓声とともに客席が揺れる。華のあるメロディと心を打つ歌、そして爆発力のある演奏がひとつになってとてつもない力を持つ、THE BACK HORNならではのライブに、この夜は彩られていた。

 アンコールに応え、松田が「これは伝説の野音になったんじゃないですか、皆さん!」と呼びかけると大きな拍手と歓声が起こった。もう菅波もツッコミを入れない。アンコール1曲目は彼らの起点となったインディーズ時代の曲「何処へ行く」。背伸びして作った朴訥な曲が今の彼らのドッシリとした音で蘇った。そして山田が「新しい曲聴いてくれ!」と呼びかけ始まったのは、ベスト・アルバム収録の新曲「グローリア」。リリース前からライブで演奏していたこともあり、松田たちに合わせてサビで当然のようにハンドクラップが起こり、それを受け止めるように山田が両腕を広げた。

「ありがとう、夕焼け目撃者、楽しかったよ。また会いに来てくれ、待ってるよ!」 山田が言って松田がシンバルを叩くと「刃」に突入。オーディエンスの歌声に応えて菅波が力強いギターリフを弾き、山田も負けじと声を出す。痛快なシンガロングで最高の盛り上がりを見せたこの曲で締めくくる、と思ったら、前に4人が並んだところで山田が、「名残惜しいね、1曲やっか!」とメンバーに声をかけ、岡峰が嬉しそうにベースを弾き松田がドラムを鳴らすと全員でカウントを取り、「無限の荒野」が始まった。パンキッシュに弾むリズムに菅波が跳ね、山田はマイクをオーディエンスに差し出した。演奏を終え、満足そうな笑顔の4人にオーディエンスから「ありがとう!」と声が飛んだ。それに応えて松田が「20周年よろしくね!どうもありがとう!」と手を振った。

 松田は、できることならもっとたくさんの曲をこの夜も演奏したかったとMCで言った。ベスト・アルバムに収録した33曲でも本当は物足りないぐらいだろう。それでも選りすぐった21曲で、彼らは20年を凝縮して見せた。雨天だったからではなく、THE BACK HORNというバンドの記憶すべき足跡のひとつとして、何年後かに間違いなくこのライブは伝説として語られているだろう。

【取材・文:今井智子】
【撮影:Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE BACK HORN

リリース情報

BEST THE BACK HORN II [TYPE-A ]

BEST THE BACK HORN II [TYPE-A ]

2017年10月06日

ビクターエンタテインメント

[Disc 1]
1. 覚醒
2. 戦う君よ
3. 閉ざされた世界
4. 世界中に花束を
5. シリウス
6. シンフォニア
7. バトルイマ
8. シンメトリー
9. コワレモノ
10. ビリーバーズ
11. 悪人
12. その先へ
13. 魂のアリバイ
14. With You
15. あなたが待ってる
16. 孤独を繋いで
17. グローリア

[Disc 2]
1. ひょうひょうと
2. 声
3. コバルトブルー
4. 赤眼の路上
5. 扉
6. 枝
7. 晩秋
8. ジョーカー
9. 罠
10. 冬のミルク
11. 美しい名前
12. 何処へ行く
13. 上海狂騒曲
14. 刃
15. 泣いている人
16. 無限の荒野

[Disc 3](DVD)
1.戦う君よ
2.閉ざされた世界
3.シリウス
4.世界中に花束を
5.シンフォニア
6.バトルイマ
7.シンメトリー
8.コワレモノ
9.ビリーバーズ
10.悪人
11.その先へ
12.With You
13.あなたが待ってる
14.孤独を繋いで
15.泣いている人

Extra Video
1.戦う君よ(葛藤編)
2.戦う君よ(狂乱編)
3.戦う君よ(妄執編)
4.戦う君よ(鬱屈編)
5.シンフォニア(1cut ver.)

セットリスト

「KYO-MEIワンマンライブ」
〜第三回夕焼け目撃者〜
2017.10.21@日比谷野外大音楽堂

  1. 01.閉ざされた世界
  2. 02.シリウス
  3. 03.声
  4. 04.ひょうひょうと
  5. 05.晩秋
  6. 06.コワレモノ
  7. 07.扉
  8. 08.アカイヤミ
  9. 09.罠
  10. 10.その先へ
  11. 11.枝
  12. 12.美しい名前
  13. 13.あなたが待ってる
  14. 14.覚醒
  15. 15.孤独を繋いで
  16. 16.コバルトブルー
  17. 17.シンフォニア
  18.  【ENCORE】
  19. EN 01.何処へ行く
  20. EN 02.グローリア
  21. EN 03.刃
  22. EN 04.無限の荒野

お知らせ

■ライブ情報

マニアックヘブンツアーVol.11
11/10(金) 福岡DRUM Be-1
11/15(水) 札幌PENNY LANE24
11/26(日) 大阪umeda TRAD
12/01(金) 高松DIME
12/02(土) HIROSHIMA CLUB QUATTRO
12/22(金) 金沢AZ(ホール)
12/24(日) 新木場STUDIO COAST

[岡峰光舟]
第2回!僕たち、プロ野球大好きミュージシャンです!

11/8(水) 新宿ロフトプラスワン

ACIDMAN presents
SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"

11/23(木・祝) さいたまスーパーアリーナ

20TH ANNIVERSARY MUCC祭
「えん7 FINAL」in 武道館

12/27(水) 日本武道館

rockin’on presents
COUNTDOWN JAPAN 17/18

12/30(土) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール・イベントホール

[山田将司]
冬枯レノ街角ニテ

2018/01/09(火) TSUTAYA O-EAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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