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始動から約1年、THURSDAY’S YOUTHが行った全国ツアーファイナル「rain, rain, rain, day10」

THURSDAY’S YOUTH | 2018.02.17

 THURSDAY’S YOUTHの始動から間もなく1年が経つ。2016年3月。当時、活動休止中だったSuck a Stew DryのメンバーがTHURSDAY’S YOUTHとして活動していくことが発表されたとき、再びゼロからのスタートを切った彼ら名義の楽曲はわずか1曲だけだった。唯一、「さよなら」という楽曲を聴いて、リスナーもまた今後のサーズデイズユースとは、果たしてサックと何が違うのか? を想像をする他なかったのだが、そんな彼らも、11月29日にバンド初のフルアルバム『東京、這う廊』をリリースしたことで、ようやくそのバンド像が明確になってきたように思う。アルバム『東京、這う廊』を携えた全国ツアー「THURSDAY’S YOUTH 2nd live tour「rain, rain, rain, day1~day10」」のファイナルとなった下北沢GARDEN。その場所でサーズデイズユースが見せたものは、自分たちのルーツを大切にしながら、本当に心からやりたい音楽と真摯に向き合うバンドの姿だった。

 定刻、SEが流れ出すと、メンバーが登場。ステージに強い降り注ぐ光が、そこに4人のシルエットをくっきりと浮かび上げた。1曲目はバンドの始まりの曲「さよなら」だ。篠山浩生(Vo/Gt)が優しく奏でるアルペジオにのせて、語りかけるようにメロディを紡いでいった。“15歳で放棄した 未来を夢見ることを”。そんなふうに心の翳りを炙り出すサーズデイユースの生々しい歌は、いま世の中に満ち溢れる、夢や希望を謳歌するようなポップスとは一線を画している。「サーズデイズユースです……よろしく」。篠山がぼそぼそと告げる短いあいさつを挟んで、菊地玄(Gt)のエレキギターが刻む裏拍のリズムに哀愁を漂わせた「雨、雨、雨、」、そして、板橋裕周(Dr)が叩き出すドラムの深いリバーブが混沌を描き出した「燃やせるゴミ」へ。ステージ上のメンバーがフロアを煽ることもなく、フロアのお客さんもまた、最低限の拍手は起こる以外、ただのその音楽を浴びて茫然と立ち尽くすようなライブだ。淡々と、だが、その歌が聴き手の心を強く揺さぶりながらライブは進んでいった。

 唯一の長いMCでは、2018年最初のツアーということもあり、「(学生の頃)新年の書初めで目標を書くのが嫌いでした」と切り出した篠山。今年の抱負は? と、須田悠希(Ba)に無茶ぶりをすると、須田は「貯金」と答えて、会場の笑いを誘った。踊るような3拍子にのせて、篠山が日常生活のなかで感じる疑問を綴ったという「N/C」から、最新アルバムのタイトルトラックでもあるファンキーなダンスナンバー「這う廊」、伸びやかなメロディが瑞々しい景色を描き出すポップソング「水曜日の出来事」、さらにマイナー調のメロディがエスニックな味わいを感じさせた「Mob」へと、ライブの中盤は、変幻自在に曲調を変えながら、ますますディープにサーズデイユースの歌の世界へと引きずりこんでいった。

 現時点でサーズデイズユースの楽曲のなかで、最も疾走感と勢いのあるCD未収録のロックナンバー「キラク」を終えたところで、篠山は語りかけた。「やりたいことをみつけるのは得意じゃないけど、やりたくないことを見つけるのは得意だなと思ってて。サーズデイズユース、やりたくないことをやらないで1年間やってきました。要は、やりたいことをやってるバンドなんだと思います」と。どこか遠まわしな言い方にも聞こえるが、その人間らしい面倒くささを隠さないのが篠山浩生流の処世術であり、音楽への姿勢なのだと思う。その意味で、この後に披露された「はなやぐロックスター」は、本当に篠山らしい曲だった。ステージに立つ無敵のロックスターに憧れながら、“僕はいつまででも劣等性”、“死にたい死にたいって何度も 繰り返して思っていたんだ”そして、“結局 今も生きている”と歌う。それは大きな矛盾を抱えながら、生きること以外選べない、愚かで、愛しい人間の姿だ。誰もが、ポジティブなときもあれば、ネガティブなときもあり、死にたいときもあれば、生きるエネルギーに溢れるときもある。篠山浩生が、サーズデイユースが表現したいものは、そんな明と暗が交じり合う、不確かな心の有り様を忠実に汲み取る音楽なのだと思う。

 「消したい過去はいっぱいあります。でも……失敗したことも、“あのとき失敗しておいてよかった”と思うこともあるから。それは僕の心に残しておこうと思います」と言ってから、歪んだギターが楽曲のもつ悲哀をいっそう掻き立てたロックバラード「ぼくの失敗」を届けて、いよいよライブはクライマックスへと向かっていった。メンバー同士が手拍子を打ち鳴らすミニマムなサウンドにダウナーなラップをのせた新曲「いっさいがっさい」から、アルバムでは「#花と命」と題された楽曲を、より生命力溢れる人間賛歌へとブラッシュアップさせた「花と命」へ。そして、本編のラストに選んだのは「東京」だった。メンバーが激しく体を揺り動かしながら、篠山は、“冷たい街並みに飲まれても 僕らの体は温かいぜ”と力強く歌った。まるで、そのフレーズに辿り着くために、ここまでの楽曲はあったのではないかと思わせるようなラストナンバーで、彼らはその場所に希望の兆しを残してくれた。

 アルバムのリリースツアーにも関わらず、この日は4曲の新曲が披露された。なかでもアンコールで披露された「奇跡」という名の新曲が、特に素晴らしかった。いまある彼らの曲で言うならば、「はなやぐロックスター」や「東京」にも似た、生きようとする意地が滲み出たようなその曲のなかで、とても印象的なフレーズがあった。《いがみあって 憎しみあって 殺しあって 人は生きる/助けあって 抱きしめあって 愛しあって 人は死ぬ》。あまりにも人間くさく、残酷で美しいその歌は、いまのTHURSDAY’S YOUTHだからこそ歌うことのできる人間賛歌だった。そして、最後はSuck a Stew Dryの楽曲からバンド名の由来になった「THURSDAY’S YOUTH」でライブを締めくくると、いつものように「生きてたらでいいので、また会いましょう」という言葉を残して、ステージを後にした。

 THURSDAY’S YOUTHは来月3月10日に、始動1周年を飾るアコースティックライブ「TOKYO, how low?」を恵比寿天窓.switchで開催する。二度目の初期衝動とも言えるフレッシュな感性をもって、新たなバンド人生を切り拓いてゆくいま彼らの音楽の生々しさは、アコースティック編成という、より人肌に近い形態こそ似合うような気がする。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:知世】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THURSDAY’S YOUTH

リリース情報

東京、這う廊

東京、這う廊

2017年11月29日

ラストラム・ミュージックエンタテインメント

1 Drowsy
2 雨、雨、雨、
3 明日はきっと大丈夫
4 東京
5 這う廊
6 #ゴミ箱にて
7 燃やせるゴミ
8 かくれんぼ
9 はなやぐロックスター
10 Mob
11 水曜日の出来事
12 #Gone
13 THURSDAY’S NIGHT
14 #花と命
15 さよなら(album ver.)

セットリスト

THURSDAY’S YOUTH 2nd live tour
「rain, rain, rain,」
2018.2.3@下北沢GARDEN 

  1. 01.さよなら
  2. 02.雨、雨、雨、
  3. 03.THURSDAY’S NIGHT
  4. 04.明日はきっと大丈夫
  5. 05.#ゴミ箱にて
  6. 06.燃やせるゴミ
  7. 07.N/C
  8. 08.這う廊
  9. 09.水曜日の出来事
  10. 10.Mob
  11. 11.デンシャ
  12. 12.天国が見えたら
  13. 13.キラク
  14. 14.かくれんぼ
  15. 15.はなやぐロックスター
  16. 16.Drowsy
  17. 17.ぼくの失敗
  18. 18.いっさいがっさい
  19. 19.花と命(band ver.)
  20. 20.東京
  21.  【ENCORE】
  22. en1.奇跡
  23. en2.THURSDAY’S YOUTH(cover)

お知らせ

■ライブ情報

『folky bread vol.26』
02/19(月) 新宿SAMURAI
※篠山浩生弾き語りでの出演になります。

Sweet Vibrations 2018
02/23(金) 新代田FEVER

DISK GARAGE MUSIC MONSTERS -2018 winter-
02/24(土) 渋谷5会場サーキットフェス

イトカムトビコ×KYOTO MOJO presents「フォールアウトの夜に」
02/27(火) 京都MOJO

MID SOUND WAVE vol.1 ~MID-FM 10th Anniversary~
02/28(水) 名古屋APOLLO BASE

見放題東京2018
03/03(土) 新宿10会場サーキットフェス

majiko presents 「new album “AUBE" release party ~名古屋パッション編~」
03/08(木) 名古屋APOLLO BASE

THURSDAY’S YOUTH 1st anniversary acoustic live「TOKYO, how low?」
03/10(土) 恵比寿天窓.switch

「OTOEMON FESTA 2018」Supported by Eggs
03/18(日) 大阪福島LIVE SQUARE 2ndLINE

リアクション ザ ブッタ “After drama" Release Tour 2018 ~愛を吠える犬って、イタい?~
03/21(水祝) 名古屋ell.SIZE

こらねこまつり
03/24(土) 仙台FLYING SON

岡まことフルアルバム「アンデッドフィロソフィー」リリースツアー ~キョコウノマチ~
04/03(火) 下北沢WAVER
※篠山浩生弾き語りでの出演となります。

『 △ 』
04/14(土) 大阪cafe Room
※篠山浩生弾き語りでの出演となります

3markets[ ]『それでもバンドが続くなら』リリースツアーファイナル 【FINAL HOME PARTY】
04/17(火) 渋谷TSUTAYA O-WEST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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