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THE BACK HORN 20th Anniversary「KYO-MEIワンマンライブ 東京編」~情景泥棒~Zepp Tokyo公演をレポート

THE BACK HORN | 2018.04.06

「1998年に結成して2001年にメジャーデビュー、いろんな曲を作ることでTHE BACK HORNは来れたと思いますし、色々な曲にTHE BACK HORN自身も救われてきたと思います。いろんな曲でTHE BACK HORNと出会ってくれた、ここにいる皆さん、本当にありがとうございます! 最後まで、いい夜にしましょう!」

 存分に温まり気持ちもほぐれてきた中盤に、松田が言った言葉だ。昨年から結成20周年に向けて精力的に活動してきたTHE BACK HORNの、2018年最初のワンマンライブである「KYO-MEIワンマンライブ東京編」(3月20日、ZEPP東京)は、確かに祝祭であり節目であり新しいスタートとなった。

 3月7日にリリースされた20周年記念ミニ・アルバム『情景泥棒』を軸に、この日のために選ばれた20曲はゾクゾクするほど素敵だった。菅波栄純(G)が、何日も着替えもせず集中して作ったというSEが幕開けだ。エスニックとコンテンポラリーが共存するようなSEに導かれてメンバーが登場すると、始まったのは『情熱泥棒』の中で最もチャレンジングといってもいい「がんじがらめ」。閉塞感から抜け出そうともがくTHE BACK HORNらしさを、目まぐるしい展開で表すこの曲に、フロアの空気が一気に上がる。続く「真夜中のライオン」は久々に演奏された曲でもあり、ヒリヒリするような高揚感がさらに熱気を高めた。この2曲によるスタートは、彼らにしか作り出し得ない鳥肌もののテンションだ。昨年7月にシングルでリリースされている「孤独を繋いで」は、山田将司(Vo)が両手を振り上げて促すまでもなくコーラスが沸き起こり、熟知しているぞと言わんばかりのオーディエンスとの一体感が小気味いいほど。

 ここで松田晋二(Ds)が「今夜は『情景泥棒』の濃い世界と、20周年の祝いを込めて祭りにしていきたいと思いますので、みなさん、最後までたっぷり楽しんで帰ってください」と呼びかけた。彼らが20周年を大きな節目と捉えていることが嫌が応にも伝わる。それが未来への通り道であるということか、次に演奏したのは「その先へ」。少々懐かしい「雷電」は同期を使ってクールに仕立て直し、お馴染みの「生命線」は血肉に染み込んでいると言わんばかりに菅波栄純(G)は頭を振り岡峰光舟(B)は飛び跳ねる。そして、これも久しぶりだった「8月の秘密」は少ない音数が生む緊張感と、哀愁溢れるメロディを歌う山田の歌に、このバンドのもう一つの顔が浮かび上がった。

 早くもこの日のハイライトが来たのは最新作『情景泥棒』の核というべき2曲。松田が作った「情景泥棒」と、それに触発されて菅波が書いた「情景泥棒~時空オデッセイ」だ。一つの言葉から生まれた二つの曲は、二人の作者の個性を際立たせると同時にTHE BACK HORNというバンドの色を見せつける。情熱的な前者はバンドが一つになってフロアの温度を高め、後者はギターがバンドを引っ張ってそ熱量を上げていく。事前に作ったトラックと重ねる演奏はこのバンドのサウンドに新たなクールネスを加えると同時に、その先にある熱源を掘り起こしているようにも思えた。曲のスケールが広がり、菅波のギターも岡峰のベースも、よりリリカルに自身を伝えてくる。山田の歌もいっそう表情を豊か表しているようだった。組曲のように演奏した2曲で見せたバンドの新たな試みを受け止めたのは、ドラマチックに「まだ何も始まってねえ」と歌う「光の螺旋」だった。レコーディングした時以上に雄弁に楽曲が語り出す、ライブの醍醐味を言わずもがなにTHE BACK HORNは楽しませてくれていた。

 一息入れて、昨年はベスト盤『BEST THE BACK HORN II』のリリースに日比谷野音のライブ、「マニアックヘヴン」ツアーなどをプレ20周年企画として行ったことから、リアル20周年の2018年の心配をファンにもされたがこの日が20周年の幕開け、と松田が告げると大きな歓声が起こった。その流れで、冒頭に書いたようにリハーサル中に菅波が同じTシャツを着ていたという話になり、「20年前も着替えると曲のイメージが途切れちゃうと言ってた」と松田が暴露すると、「みんなが暖かく見守ってくれたから、変わらずにいれたんだね」と菅波が笑顔を見せる。互いを認め合うTHE BACK HORNの強さを改めて感じさせた。

 後半は、そんな言葉を超えた人間力を持つバンドの底力を感じさせた山田が鍵盤ハーモニカを吹いた「ヘッドフォンチルドレン」では、歌詞をフェイクして松田が「ZEPP TOKYO、聴かせて!」とシンガロングを促し、「未来」に続いた「儚い獣たち」は一段とパワーのある演奏で引き込んだ。まさに火がついたようにフロアが揺れた「導火線」、山田が両腕を振って呼びかけた「シンフォニア」では菅波のギターが凄まじく雄弁で、続く「コバルトブルー」のイントロのギターが響いた瞬間にフロアが大きく動いた。本編ラストは「Running Away」。『情熱泥棒』の幕開けを飾る曲だ。思いがけない未来で笑い合おうと歌うこの曲は、まさに今のTHE BACK HORN。これまでも思いがけない未来と出会ってきたから、この先にも希望を繋ぐ。20年目の夢とリアルを彼らは描いていた。

 アンコールに応え4人がステージに揃うと、松田がマイクを取った。
「THE BACK HORNの20年の中で、いろいろなタイミングで、いろいろな曲と出会ってくれたと思います。みんなそれぞれ大切な曲があると思います。それがあったから、こうやって集まれたし、20周年のお祝いをしてくれていると思うので、このタイミングを利用して、一緒に盛り上がって欲しいと思います」

 そう言って演奏した「閃光」の、悲しみさえ祝福するような音を鳴らすんだという歌詞が沁みた。そしてベスト盤に新曲として収録された「グローリア」から「無限の荒野」とアイリッシュパンク風のキレの良さでTHE BACK HORNの歩調を伝えた。20年という時間は短くはないが彼らは確実に乗り越えてきたのだ。その先にある未来は、常に光と闇を併せ持つ。始まったばかりの20周年、彼らは何を見せてくれるだろう。そんな期待が膨らんだ夜だった。

【文:今井 智子】
【撮影:Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE BACK HORN

リリース情報

情景泥棒

情景泥棒

2018年03月07日

ビクターエンタテインメント

01. Running Away 
02. 儚き獣たち
03. 閃光
04. がんじがらめ
05. 情景泥棒
06. 情景泥棒~時空オデッセイ~
07. 光の螺旋

お知らせ

■ライブ情報

THE BACK HORN 20th Anniversary「KYO-MEI対バンツアー」~情景泥棒~
04/06(金)仙台PIT
04/08(日)Zepp Sapporo
04/15(日)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
04/20(金)新潟LOTS
05/13(日)福岡DRUM LOGOS
05/20(日)Zepp DiverCity Tokyo

10周年記念イベント「ガンダム00 Festival 10」
04/14(土)幕張イベントホール

ARABAKI ROCK FEST.18
04/28(土)29(日・祝)
みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※THE BACK HORNの出演日は後日発表となります。

[松田晋二]Glico presents THE BACK HORN 松田晋二の夜更けの囁き公開収録 supported byARABAKI ROCK FEST. AFTER PARTY
04/30(月・祝)仙台darwin

[山田将司]荒吐宵祭 後夜祭 x SOUND SHOOTER SENDAI
04/30(月)仙台Rensa

VIVA LA ROCK 2018
05/3(木・祝)、04(金・祝)、05(土・祝)
さいたまスーパーアリーナ
※THE BACK HORNの出演日は5月5(土・祝)となります。

rockin’on presents JAPAN JAM 2018
05/4(金・祝)・05(土・祝)・06(日)
千葉市蘇我スポーツ公園(千葉市中央区)
※THE BACK HORNの出演日は5月6(日)となります。

a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-<高松公演>
06/1(金)高松DIME
06/2(土)高知X-pt.

ROCKIN’ QUARTET vol.2<名古屋公演>
06/14(木)Blue Note Nagoya

[山田将司]SHIKABANE 夏のSHIKABANE~日比谷場所~
07/22(日)日比谷野外大音楽堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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