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新作『一大事』から新曲も多数披露! ポルカドットスティングレイ、ツアー最終公演

ポルカドットスティングレイ | 2018.04.25

「10、20年後、国民的音楽ヒーローになりたい!」と雫(Vo・Gt)はライブ後半に言っていた。大言壮語ではなく、本心から出たウソ偽りない言葉に違いない。常に上を目指し、バンドの規模を拡大させてきたポルカドットスティングレイ(以下ポルカ)にとって、それは絵空事や夢物語ではなく、実現すべき命題としてあるのだろう。

 昨年11月にリリースされたメジャー1stアルバム『全知全能』は、「ポップで大衆ウケすること」に重きを置いたと雫は取材時に語ってくれた。確かにタイアップ4曲を含む最新作は玄人ウケを狙ったインディーズ時代と比べて、楽曲の風通しは良くなり、音楽的扉を開け放ったポップ性が際立っていた。その最新作の伴うレコ発ツアーは即日完売、今日の追加公演まで発表される事態となった。

 雫、エジマハルシ(Gt)、ウエムラユウキ(Ba)、ミツヤスカズマ(Dr)のメンバー4人が現れると、いきなり「テレキャスター・ストライプ」を放ち、観客が一斉にジャンプする壮観な光景が広がる。無理もない。ポルカの名を一躍世に知らしめたアンセム・ソングで始まるのだから。しかし、取っておきの楽曲を冒頭から惜しげもなく披露するあたりにも、バンドが我々の想像以上に成長速度を刻んでいる証左だろう。事実、それ以降の楽曲でポルカの凄味を思い知ることになる。

 続いてウエムラのグルーヴィーなベース音に透明度の高いメロディを乗せた「BLUE」を披露。心地良く体を揺さぶった後、イントロで雫が英語詞で艶っぽく語りかける「ポルカドット・スティングレイ」へ。大人っぽいクールな雰囲気を前面に押し出しつつ、ベース、ドラム、ギターと各自のソロ・パートを繋ぐ流れも大いに盛り上がった。ヒリヒリした感情を吐き出す「ミドリ」を経て、「ウチの宗教に入らないか?」と呼びかけると、「夜明けのオレンジ」においては手を上げて騒ぐ人たちを多数見かけた。序盤から個々の技量と楽曲の魅力を両輪にフロアを力強く牽引する様は、ツアーを重ねるたびに成長を遂げているようだ。  

 耳元で囁くようなクリーントーンの優しいギターが鳴り響くと、個人的にも好きな「極楽灯」をプレイ。サウンドの縁取りを削いだシンプルな演奏の中、センチメンタリズムな歌声が鮮明に浮かび上がる。また、情景描写に優れた歌詞に加え、後半のマーチング風ドラムや泣きのギター・ソロも曲の情緒を存分に引き出していた。

 中盤、「今年、東京に引っ越した」とさらっと雫が告げると、会場はドッと沸く。地元・福岡を拠点に続けてきたポルカはMVやネットを駆使し、実に現代的なやり方でバズを起こし、音楽シーンに急浮上してきたバンドである。空中戦を制覇し、次の狙いは地上戦による完全勝利だ。そのために上京は避けて通れない道だったのかもしれない。しかもこの季節……4月は学校や職場が変わり、新生活をスタートさせた人たちもこの場所にたくさんいただろう。上京して、ポルカのライブを初めて東京で観たという人がいてもおかしくない。バンドの快進撃を見守りながら、自分と重ね合わせて希望や元気を貰っているファンもいるに違いない。そんなこともライブ中に頭を過った。

 明るいメロディが印象的な「ジェット・ラグ」、イントロからハンドクラップが起きた「サレンダー」と続けた後は、ここで「顔も覚えてない」を披露。曲を始まる前に「本日のワンチャン・ソングを……」と雫が冗談っぽく曲紹介していたが、もはやライブ不可欠の盛り上げチューンである。SAY YESマンがステージに現れると、曲のテーマに沿った男女のイラストや観客をアジテートする文字パネルを掲げ、会場の一体感を高めていた。それからギターソロに入ると、雫は悲鳴のごときスクリーモを炸裂させ、カオティックなムードにフロアの温度も急上昇! さすがに音楽的な運動量が激しかったのか、「この曲、きちー!」と雫も思わず声を上げるほど。

 しかし、後半に向けて「かかってこいよー!」と男顔負けに雫がより一層煽り立て、エジマの高速カッティングが冴え渡る「シンクロニシカ」に突入。激しいアンサンブルで場内を興奮のるつぼ化させるタフな演奏力を見せつけた。それから5月9日に待望の2ndミニ・アルバム『一大事』がリリースされることにも触れ、その初回生産限定盤にはスタジオ・ライブ(!)を含む茶番映像付きで、これがめっちゃ面白い! と雫は自ら太鼓判を押していた。その2ndミニアルバムからYouTube配信のリアルライフシンクロ型ドラマ『恋のはじまりは放課後のチャイムから』主題歌のために書き下ろした「少女のつづき」をこの日初披露。切なくも爽やかなメロディが鮮烈で、初耳の楽曲に多くの人たちが身を預けるようにノッていた。

 本編は「レム」、ライブ鉄板曲「エレクトリック・パブリック」で締め括り、メンバーがステージを去っても会場の熱は全く冷める気配はない。アンコールに応えると、再び2ndミニアルバムから新曲2連発という大盤振る舞いだ。最初に、映画&TVドラマ『わたしに××しなさい!』の主題歌に起用された「ICHIDAIJI」を披露。既にMV公開済みで予習している人も多いのか、フロアは異様な活気を呈す。その反応にメンバーも気分の良くしたのか、「最強のミニ・アルバムができた!」とウエムラが自信満々に言うと、「さらに新曲やっちゃおうか?」と雫が口火を切り、CDのみ通常盤ボーナストラック収録のポップな佳曲「半泣き黒猫団のテーマ」まで飛び出した。猫の振り付けを観客と共有するポルカらしいアプローチも見事にハマり、この曲も今後のライブで定番化するのかもしれない。ラストは軽やかなメロディに身も心も躍る「ショートショート」で大団円を結び、2時間強のライブは終了。

 変幻自在に表情をコロコロと変える雫のボーカル、静と動を激しく往復する演奏陣の緻密なアンサンブルにより、楽曲にさらなる奥行きと爆発力を添加させたステージを観て、今年はもっと大暴れしてくれるのではないか。そう思わずにはいられない魅惑的なショウだった。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:AZUSA TAKADA】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル ポルカドットスティングレイ

リリース情報

一大事

一大事

2018年05月09日

ユニバーサルミュージック

1.少女のつづき
2.パンドラボックス
3.リスミー
4.煌めく
5.ICHIDAIJI
6.半泣き黒猫団のテーマ (※ CDのみボーナストラック)

セットリスト

ポルカドットスティングレイ 2018 TOUR 全知全能 ポルフェス28 “#全知全能 ワンマン”
2018.4.07 @Zepp DiverCity Tokyo

  1. 01.テレキャスター・ストライプ
  2. 02.BLUE
  3. 03.ポルカドット・スティングレイ
  4. 04.ミドリ
  5. 05.夜明けのオレンジ
  6. 06.人魚
  7. 07.極楽灯
  8. 08.フレミング
  9. 09.ジェット・ラグ
  10. 10.サレンダー
  11. 11.顔も覚えてない
  12. 12.シンクロニシカ
  13. 13.少女のつづき
  14. 14.レム
  15. 15.エレクトリック・パブリック
  16. 【ENCORE】
  17. EN 01.ICHIDAIJI
  18. EN 02.半泣き黒猫団のテーマ
  19. EN 03.ショートショート

お知らせ

■ライブ情報

ARABAKI ROCK FEST.18
04/28(土)[宮城]みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

VIVA LA ROCK 2018
05/04(金・祝)[埼玉]さいたまスーパーアリーナ

rockin’on presents JAPAN JAM 2018
05/05(土・祝)[千葉]千葉市蘇我スポーツ公園

Eggs presents FM802 Rockin’Radio! -OSAKA JO YAON-
05/20(日)[大阪]大阪城音楽堂

百万石音楽祭2018 ~ミリオンロックフェスティバル~
06/02(土)[石川]石川県産業展示館(1-4号館)

ポルカドットスティングレイ ポルフェス29 #一大事 ワンマン
06/26(火)[東京]EX THEATER ROPPONGI

JOIN ALIVE 2018
07/15(日)[北海道]いわみざわ公園

MONSTER baSH 2018
08/18(土)・19(日)[香川]国営讃岐まんのう公園

SUMMER SONIC 2018
08/18(土)[千葉]ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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