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a flood of circle、『New Album “a flood of circle” Release Special Party -アオキテツ正式加入式典-』

a flood of circle | 2018.04.23

 ロックバンドにも様々な形態があるけれど、やはりa flood of circleはギター、ベース、ドラム、ボーカルが揃った4人編成がよく似合う。2016年に一般公募で選ばれ、約1年半にわたりサポートとして活動していたギタリスト・アオキテツの正式加入式典だ。渋谷CLUB QUATTROのステージには、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Dr)、アオキテツ(Gt)が並び、中央に佐々木亮介(Vo/Gt)が立っていた。その最近見慣れたフォーメーションは、アオキが“サポート”から“正式”に変わったところで変わらないのだけど、正式に4人になったa flood of circleはやはり格別だった。この日はアオキのギターソロのたびに会場は湧き、初期曲を盛り込んだセットリストもアオキが中心に考えたという。後にも先にも二度と無いであろう“アオキ・スペシャル”は、集まったお客さんの歓迎と祝福に満ちた一夜だった。

「おはようございます!a flood of circleです」。いつものように胸に眠っているロックンロール魂を揺り起こすような佐々木の挨拶からライブはスタートした。1曲目は2月にリリースした最新アルバム『a flood of circle』(今作も4人のレコーディングだが、一応アオキはサポートの立場)でもオープニングを飾る「Blood&Bones」からだった。ここ数年で破壊力に磨きがかかった渡邊のドラム、バンド最年少ながら不敵でヤンチャに暴れまわるアオキのギター、情熱的かつアグレッシブな紅一点・HISAYOのベース、骨の髄までロックンローラーの血が流れる佐々木のしゃがれたボーカル。それらが重なり合い、ひとつの集合体となったa flood of circleだけのロックンロールが、容赦なくフロアに投げ込まれていく。「Lightning」と「One Way Blues」まで畳みかけたところで、会場が暗転すると、「テツー!」「アオキー!」と、お客さんの声が湧いた。アオキは「落ち着けよ(笑)。今日はアオキテツ正式……何だったけ?……へ、ようこそ」と、少し不良っぽい感じで答える。それは加入直後のプレッシャーなど微塵も感じさせない生意気な言い様だが、そのキャラも含めて、アオキテツはフラッドの一員として、もうすっかりお客さんにも受け入れられていた。

 そんなアオキの選曲で、イントロが鳴った瞬間に悲鳴のような歓声が起こったのは「ガラパゴス」だった。インディーズ時代にリリースされた一度目のセルフタイトルアルバム『a flood of circle』からの楽曲を選んでくるあたり、ニクい演出だ。そこには最初からa flood of circleと共に歩んできたわけではないけれど、その道のりに惜しみない敬意を払う、そんなアオキの想いが滲み出ていたと思う。そして、この日最大の見せ場となったのは野性的なガレージパンク「King Cobra Twist」でアオキが魅せた長いギターソロだった。時にアオキと佐々木が絡み合い、時にHISAYOと渡邊が向き合いながら心地好いグルーヴを生み出したあと、「最近のロックバンドの中でいちばん長いギターソロを決めてくれたと思う。何小節かソロやっていいよって言ったら、かなりやったな(笑)」と、佐々木。その顔はもう汗ダクだった。

 中盤、ステージにオレンジ色の光が照らす中、穏やかなメロディと清涼感のあるコーラスが爽やかな風を吹き込んだ「Summer Soda」から、フロアの熱気をクールダウンするようなミドル~スローテンポの楽曲が続いた。再び、アオキの選曲でインディーズ時代の『a flood of circle』の中からセレクトされた「夜はけむり」は、当時21歳だった佐々木がどこか背伸びするように書いた夏の夜の衝動と哀愁が印象的の曲だ。続けて、最新アルバム『a flood of circle』に収録されているバラード曲「再生」へ。大らかに打ち鳴らすリズムと雄弁なギターの調べの中で、佐々木でファルセットを交えながら何度も繰り返す“君は蘇る”というフレーズは、これまで幾度も倒れては立ち上がり、いまもまた新たな仲間を得て転がり続けるa flood of circleというバンドそのものを表しているようでもあり、とても感動的な瞬間だった。

「a flood of circleが正式メンバー4人でワンマンをするのは今日で3回目らしい」(アオキ)という衝撃の事実が明かされた終盤のMC。振り返ると、度重なるメンバーチェンジの中で正式にa flood of circleが4人だったのはインディーズ時代の岡庭匡志と、2014年に加入したDuranがギタリストだったわずかな時期だけだ。「ややこし過ぎて、どこからが歴史かわからなくなってきた(笑)」という佐々木に、フロアから「ここから!」という声が飛んだ。調子にのって、「ここからa flood of circleは始まる……んだぜ(笑)」とアオキ。さらに佐々木も「初めてクアトロでライブをしに来た時にも、“ここからだね”って言われたんだよね。いまテツが生意気にも“ここから”とか言いやがって(笑)でも、本当にここからだよね。“テツが入ってよかったね”じゃなくて、ここからさらに攻め続けたいと思ってますから」と語りかけ、今後も“最高”を更新し続けるバンドであることを強い言葉で約束してくれた。

「Where Is My Freedom」を皮切りにライブはクライマックスに向けて、ますます熱狂の色を濃くしていった。ステージが真っ赤に染まり、重厚感のあるビートのなかで、最前列の柵に身を乗り出して“自由への渇望”を浴びせかけた佐々木は、そのまま最後に思いっきりフロアへと倒れこんだ。さらに今年a flood of circle最強のアンセムとして新たなに加わった、UNISON SQUARE GARDEN・田淵智也との共作による「ミッドナイト・クローラー」では、お客さんの掛け声と共に渋谷クアトロに最高の空間を作り上げていく。そして、佐々木が「俺たちとあなたたちの明日に捧げます」と叫んだ「シーガル」と「プシケ」という、a flood of circleのライブでは欠かすことのできない2曲でライブはフィニッシュ。最後に佐々木が「これでツアーに行ってくるわ!また会おうぜ!」と叫んで、本編を締めくくった。

 アンコールでは、佐々木が「a flood of circleはロックンロールバンドって言ってますけど、チャック・ベリーからしたら、ロックンロールじゃないだろって言われると思うし、これだけラップを好きでやってるけど、ラッパーの人には絶対に認められないと思う。でも別にどうでもいい。俺たちはやりたいことをやってるし、それを好きな人たちがこれだけいるし。マジで何も不安はない。やるしかないって感じです」と言うと、フロアからはその言葉に賛同するような熱い拍手が湧き起こった。そして、改めて「テツ、a flood of circleへようこそ」と歓迎の言葉をかけた佐々木に、「任せろ!」と無邪気に答えたアオキ。それを無言で見守る、HISAYOと渡邊の表情も温かかった。そして、最後にステージに強い光が降り注ぐ中で、最新アルバム収録曲「Leo」と、再びインディーズ時代の『a flood of circle』からルーツへの愛を詰め込んだ「象のブルース」を披露して、ライブは本当に幕を閉じた。「俺の姐さんと相棒と弟を、これからもよろしくどうぞ」。佐々木の最後の言葉を受け止めたあと、ずいぶん長いことフロアの拍手は鳴りやまなかった。

 ここからa flood of circleは4月20日の千葉LOOKを皮切りに、「a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-」を本格的にスタートさせる。この日、佐々木は最新アルバムの1曲を引き合いにして、「「Where Is My Freedom」って歌ってるから、ツアーではその答え出したい」とも言っていた。アオキテツという唯一無二のギタリストを迎え入れて、バンドとして盤石の体制が整ったいま、ここからa flood of circleが本当の意味で自由を知る旅が始まる。

【取材・文:秦里絵】
【撮影:新保勇樹】

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リリース情報

a flood of circle

a flood of circle

2018年02月21日

TEICHIKU ENTERTAINMENT

01. Blood & Bones
02. ミッドナイト・クローラー
03. Leo
04. One Way Blues
05. Summer Soda
06. 再生
07. Lightning
08. Where Is My Freedom
09. Rising
10. Wink Song

セットリスト

『New Album “a flood of circle” Release Special Party -アオキテツ正式加入式典-』 2018.4.7@渋谷クラブクアトロ

  1. 01.Blood&Bones
  2. 02.Lightning
  3. 03.One Way Blues
  4. 04.ガラパゴス
  5. 05.Rex Girl
  6. 06.Driver’s High
  7. 07.King Cobra Twist
  8. 08.Summer Soda
  9. 09.夜はけむり
  10. 10.再生
  11. 11.Where Is My Freedom
  12. 12.STARS
  13. 13.Boy
  14. 14.ミッドナイト・クローラー
  15. 15.シーガル
  16. 16.プシケ
  17.  【ENCORE】
  18. 01.Leo
  19. 02.象のブルース

お知らせ

■ライブ情報

a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-
05/6(日)横浜F.A.D
05/13(日)静岡UMBER
05/14(月)四日市CLUB CHAOS
05/16(水)京都MUSE
05/18(金)小倉WOW
05/19(土)大分club SPOT
05/23(水)水戸LIGHT HOUSE
05/25(金)盛岡CLUB CHANGE WAVE
05/27(日)郡山HIPSHOT JAPAN
06/01(金)高松DIME
06/02(土)高知X-pt.
06/08(金)金沢vanvanV4
06/09(土)長野J
06/15(金)名古屋CLUB QUATTRO
06/16(土)大阪umeda TRAD
06/23(土)福岡CB
06/24(日)広島SECOND CRUTCH
06/29(金)札幌cube garden
07/01(日)仙台CLUB JUNK BOX
07/08(日)東京マイナビBLITZ赤坂

COMING KOBE18 大阪ステージ
04/29(日)なんばHatch

Dizzy SunfistDREAMS NEVER END TOUR 2018
05/01 tue郡山#9

VIVA LA ROCK 2018
05/05(土)さいたまスーパーアリーナ

百万石音楽祭 2018 ~ミリオンロックフェスティバル~
06/3(日)石川県産業展示館 1~4号館

sads 再始動7周年記念The reproduction 7th anniversary 「EVIL 77」
06/10(日)渋谷CLUB QUATTRO

夏のSHIKABANE~日比谷場所~
07/22(日)日比谷野外大音楽堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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