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HEY-SMITH、SiM、coldrainの合同企画ライブ『TRIPLE AXE TOUR’18』

TRIPLE AXE | 2018.05.16

 Masato(Vo/coldrain)が烈火のごとく怒りを大爆発させる。これは今年2月に出たDVD『TRIPLE AXE ’17』のディスク1に収録された約2時間に及ぶドキュメンタリー映像の一場面だ。メンバー同士が真剣にぶつかり合い、またバンド同士が本気で闘う様を活写したステージ裏側の様子を観て、HEY-SMITH、coldrain、SiMの3バンドはお互いにとって最高の仲間=最強のライバルであることがリアルに伝わってきた。その3バンドによる合同企画『TRIPLE AXE』は12年から始まり、今年は台湾、東京の2公演のみとなった。だからこそと言うべきか、各バンドがこのワン・ステージに賭ける情熱や気迫が並々ならぬエネルギーとなり、新木場スタジオコーストを包み込んでいた。

 開演前や転換タイムにLINKIN PARK、Pay money To my Painの楽曲が交互に流れる中、一番手で登場したのはcoldrain。「To Be Alive」で斬り込むと、最初からフロアのテンションが尋常ではない。バンドの演奏もナイフのごとき切れ味と鉛のような重厚な音色を放ち、聴く者を瞬間沸騰させる筋肉隆々の腕っ節の強さを発揮。「FEED THE FIRE」に入ると、野太い合唱が天上を突き上げ、わっ、今日は凄い日になると確信するほどだった。次の「F.T.T.T」では「好きなだけ遊んで帰れ!」とMasatoが煽ると、フロアに3つ、4つとサークル・モッシュの渦が出来上がり、Y. K.C(Gt)のライトハンドを含む速弾き、Sugi(Gt)の熱いコーラス・ワークと、メンバー5人のカタマリ感に圧倒されるばかり。別の生物でも取り憑いたような、危機迫るものを感じた。

 今年2月6日に日本武道館公演を行った彼ら。それ以降……この間の「Vans Warped Tour Japan 2018」初日(3月31日)のライヴを観る機会があったが、すべてをなぎ倒さんばかりのオーラに満ち溢れ、海外勢を食うほど強靭なサウンドを響かせていた。何が言いたいかと言うと、今のcoldrainは絶好調ということ。
今日のライヴに話を戻そう。ヘヴィとメロディアスのギャップ激しい「The Revelation」などcoldrainらしさ漲る楽曲を次々と畳み掛け後、新木場に集まったファン、HEY-SMITHやSiMに対してMasatoは感謝の言葉を述べると、次は「BURY ME」へ。アリーナ・メタルとも言える壮大なスケール感を轟かせると、観客はシンガロングで全力で応える美しい景色が広がった。押しの強さはもちろん、引きの美学でも聴衆を刺激できるのがcoldrainの魅力でもある。その両面をきっちり見せた、堂々たるパフォーマンスだった。

 さあ、この焼け野原のフロアに二番手のSiMはどう立ち向かうのか。MAH(Vo)のメロディアスな歌い回しから一気にスクリームが炸裂すると、「Get Up,Get Up」で開始。SHOW-HATE(Gt)、SIN(Ba)がアクロバティックに回転するステージングに、観客は早くも大興奮。キャッチーな魅力を放つ「Amy」を経て、「ANTHEM」でバンドはエンジンを加速させ、さらに観客とのコール&レスポンスで熱い一体感を作り上げていた。

 それから「GUNSHOTS」に移行すると、お決まりのモンキーダンスで会場を束ねた後、MAHの口から驚きの報告が飛び出す。「悪魔二世が爆誕しまして……無痛分娩、クソ安全。親父になって初ライヴ……宇宙一かっこいいお父さんにならなきゃ。かかって来いー!」と言うと、バンドがブレイクする足掛かりとなった名曲「KiLLiNG ME」が爆発。MAHはド頭からダイブを決め、守るものができてもライヴは攻め続けるから! と宣言するような体の張り具合だ。会場を見渡せば、モッシュやダンスを繰り広げ、手の付けられないカオスな熱気に覆われていた。

 そして、19歳の警察官が上司の警察官を銃で撃った事件に触れ、「まるでこの歌詞まんま」と付け加えると、「Murderer」をプレイ。極悪ヘヴィ・サウンドを振り撒くと、ファストな「I HATE U」を披露。ブレイクダウン・パートでヘドバンの嵐を吹かせ、怒りに満ちた曲調も痛快だった。「カルマってわかる? 善いことも悪いことも自分に返ってくる。闘い続ける奴は少しずつ強くなる。みんなも頑張って」と言葉をかけると、MAHが早口に捲し立てる流れから「JACK.B」をプレイ。その流れから「Blah Blah Blah」、「f.a.i.t.h」のラスト2曲で爆発的な盛り上がりを記録し、有無を言わせないSiMワールドを見せつけた。

 そして、この日のトリを飾ったのはHEY-SMITH。「お前ら暴れる準備はできてるか?」と猪狩(Vo・Gt)が言うと、「Endless Sorrow」でスタート。《No More War》のフレーズを観客は大声で歌い上げ、ド頭から凄まじい活気が渦巻く。爽快なホーンの音色とスカ・リズムが心地いい「2nd Youth」、強靭なリフと満(Sax)のスクリームも効果的な「True Yourself」と続き、「世界一のツアーへようこそ! おまえたちの曲や!」と言うと、「Don’t Worry My Friend」がここで炸裂。YUJI(Vo・Ba)の爽快な歌声、バンドと観客の距離をグッと縮める曲調に、フロアのあちこちで笑顔が咲き乱れる。それからゴリゴリのインディー・バンドの矜持を見せつけるべく、「Go Back Home」、「No Worry」と勢い溢れるナンバーで駆け抜けた。

 また、現時点での最新シングル表題曲にして、猪狩がリード・ヴォーカルを務める「Let It Punk」も披露。パンクで行こうぜ! という直球のメッセージに心を激しく掻き立てられ、今やライヴ不可欠のナンバーに成長を遂げたと言っていい。さらに「パンクス、声上げろ?」と呼びかけ、「We sing our song」で無数のサークル・モッシュを作り上げると、後半はデモ音源時代に収録されていたメタル・リフ満載の名曲「Drug Free Japan」、スカやダブの要素を盛り込んで緩急豊かな展開で聴かせる「Download Me If You Can」、トドメは「I’m In Dream」でビシッと締め括った。

 アンコールに応える形でHEY-SMITHの面々が再びステージに現れると、「3バンドの絆は深まって……(MAH)2世の写真見ただけで泣いちゃう」と猪狩は零すと、「Goodbye To Say Hello」をMasatoと共にプレイ。続けて「Come Back My Dog」ではMasatoに加え、MAHも参加した上でド派手なパーティーをブチ上げ、ようやく幕を閉じた。

 ジャンルも活動方針もそれぞれ異なる3バンドが、お互いにかっこいいと認め合い、自分たち発信で立ち上げた『TRIPLE AXE』。もはや1バンドで新木場スタジオコーストを埋められる実力を兼ね備えながら、今なおこうして3バンドが集まる理由は何だろうか。それはお互いの成長ぶりを確認しながら、心の底から嬉しかったり、悔しかったり、という感情を呼び覚ましてくれる3バンドだから。今日のライヴを観て、より一層そう思った。観客もその切磋琢磨する3バンド=総勢15名の姿にほかのライヴやイベントとは別格のムードを嗅ぎ取って、この場に集まっているのだろう。来年も是非ともやってもらいたい。いや、やってくれるでしょう。

【取材・文:荒金良介】

セットリスト

TRIPLE AXE TOUR’18
2018.4.12@新木場STUDIO COAST

    ■coldrain
  1. 01. TO BE ALIVE
  2. 02. FEED THE FIRE
  3. 03. F.T.T.T
  4. 04. The Revelation
  5. 05. 24-7
  6. 06. Given Up On You
  7. 07. BURY ME
  8. 08. FIRE IN THE SKY
  9. 09. Die Tomorrow
  10. 10. ENVY
    ■SiM
  1. 01. Get Up, Get Up
  2. 02. Amy
  3. 03. ANTHEM
  4. 04. GUNSHOTS
  5. 05. KiLLiNG ME
  6. 06. Murderer
  7. 07. I HATE U
  8. 08. JACK.B
  9. 09. Blah Blah Blah
  10. 10. f.a.i.t.h
    ■HEY-SMITH
  1. 01. Endless Sorrow
  2. 02. 2nd Youth
  3. 03. True Yourself
  4. 04. Don’t Worry My Friend
  5. 05. Go Back Home
  6. 06. No Worry
  7. 07. Let It Punk
  8. 08. Magic Leaf
  9. 09. Before We Leave
  10. 10. Truth Inside
  11. 11. Surely comes tomorrow
  12. 12. We sing our song
  13. 13. Drug Free Japan
  14. 14. Download Me If You Can
  15. 15. I’m In Dream
  16. 【ENCORE】
  17. EN 01. Dandadan
  18. EN 02. Goodbye To Say Hello
  19. EN 03. Come Back My Dog

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