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過去最高を更新し続ける、今年9回目を迎えた『DEAD POP FESTiVAL 2018』

SiM | 2018.07.20

「芯のあるロック・フェス」とは何か。
言うまでもなく、そこに明確に定義など存在しない。"壁を壊す"をテーマに掲げ続けたSiM主催の『DEAD POP FESTiVAL 2018』は、今年間違いなく"芯のあるロック・フェス"として成長を遂げた。今年9回目を迎える本フェスは6月30日、7月1日の2デイズ共にソールド・アウト! 開催地・神奈川県川崎市東扇島東公園にはたくさんの観客が詰めかけていた。「CAVE STAGE」も「CHAOS STAGE」も人、人、人だらけという状況だ。ここでは最終日にあたる2日目の模様を書き記したい。  

 今日の「CAVE STAGE」のトップを飾ったのは04 Limited Sazabys。今年は結成10周年、しかも東名阪のアリーナ・ツアーを成功に収めたばかりの彼ら。SiMの「Amy」をSEにメンバー4人が姿を見せると、その曲に自らの演奏を被せるイキな演出をかます。その流れを経て1曲目はエッジ鋭いロック・ナンバー「knife」で始まると、観客は激しく騒ぎ、その頭上には砂煙が舞い上がっている。個人的には『AIR JAM ’98』を彷彿させる既視感を抱き(※その後のアクトも砂煙は舞い続ける)、妙に嬉しくなった。続く「fiction」では至る所でサークル・モッシュが起きたりと、ライヴハウスと変わらぬ熱気が雲ひとつない青空に吸い込まれていく。RYU-TA(Gt&Cho)とGEN(Vo&B)の掛け合いヴォーカルで迫る「discord」を挟んだ後、「大事な一番手をまかせられた」とGENは述べ、さらに「(MAHの)奥さんはキレイだし」と続けると、スクリーンにMAH(Vo)が中指を立てる姿が映され、観客から笑いも起きていた。それからSiMの「GUNSHOTS」のフレーズを少し弾いて、「Chicken race」に繋げたりと、この日限りの特別バージョンで観客を沸かせる。そう言えば、日本武道館~横浜アリーナでライヴを行うなど、SiMとフォーリミの歩みには共通点も多い。同じ時代をサバイブするSiMに対する尊敬の念をプレイで表明しつつ、ラスト2曲「My HERO」、「monolith」で爆発的な盛り上がりを見せ、火付け役としての重責を見事に果たした。

 続いて「CAVE STAGE」に登場したのは10-FEETだ。「VIBES BY VIBES」で幕を開けると、観客もドドドーッと前に押し寄せ、早くもお祭り騒ぎの様相を呈す。間髪入れずに「1 size FITS ALL」に移行すると、火に油を注ぐ凄まじい盛り上がり。次の「1sec.」の演奏中にTAKUMA(Vo&Gt)はカメラに変顔を決めたりと、茶目っ気も忘れていない。怒濤の3連打の後は、「太陽4号」、「ヒトリセカイ」と歌もの路線のエモーショナルな曲調で心の内側から焚き付けていった。「SiMはチケット、ライヴ会場のあり方とか、批判を恐れずに一生懸命伝えている。結果、たくさんの人がSiMに付いていってる。意志があるフェスにみんなが集まる。今年一番人が入ってる」とTAKUMAは同じくバンド主催のフェスを手がける身として、最大級の賛辞を贈っていた。

「CHAOS STAGE」に移動すると、ピアノロック4人組・SHE’Sが初参戦。「Un-science」から清涼なメロディを壮大なスケールで響かせる。それから「Freedom」を経て、ノリのいい「Getting Mad」を披露。観客とコール&レスポンスで一体感を図り、3曲を終えた時点で既に自分たちの空気に染め上げていた。「最高に楽しいです! 僕らがデッドポップに呼ばれるなんて」と服部(Gt)は驚きと嬉しさが入り交じった心情を吐露していたが、それこそ"壁を壊す"という本フェスの主旨に沿った抜擢ではないか。「子犬には子犬なりの闘い方がある」と井上(Vo&Gt)がキリッと牙を剥くと、8月に出るニュー・シングル表題曲「歓びの陽」をプレイ。ドリーミーなエレクトロポップ路線の曲調で、至福のメロディにすっかり酔いしれた。後半の「C.K.C.S.」、「Over You」ではウォーウォー! の合唱を起こしたりと、「CHAOS STAGE」に爪痕を残す渾身のパフォーマンスを見せつけた。

 18時を回っても日差しはまだキツイ。残すところ3組だ。「CAVE STAGE」のトリ前に出たTHE ORAL CIGARETTSの山中(Vo&Gt)は開口一番、「去年ステージが終わって、MAHさんからオフォーがあった。誰よりも早いオファー、約束を果たしに来ました!」と興奮気味に伝え、SiMと出会ったときの曲という「Mr.ファントム」で口火を切った。メンバー4人も思いの丈をぶつける熱い演奏で突き進み、まだまだ足りないとばかりに「お前ら、地面が抜けるくらいジャンプしてみろ!」と煽り、オリエンタルなフレーズが耳を引く「カンタンナコト」へ。すると、観客もヘッド・バンギングでこの曲に応え、凄まじいエネルギー交換でバンドの勢いも加速し続ける。「容姿端麗な嘘」においてはあきらかにあきら(Ba&Cho)のスラップ・ベースを効かせたダンス・チューンでさらに盛り上げた後、「俺らはテッペンを目指していく!」と山中は力強く宣言し、「狂乱Hey Kids!!」に突入。観客の心を丸裸にするエネルギッシュなパワーに脱帽した。最後は唐突に「ヤバTのヤマタクより、俺の方が強えわ!」と言い放ち、「BLACK MEMORY」を披露。ここにいる全員をシンガロングでひとつに束ね、腕っ節の強さを誇示するショウを完遂した。

 そして、「CHAOS STAGE」のトリを飾ったのは初出場のヤバイTシャツ屋さん。さきほどオーラルのヤマタクが放ったMCに対して、「ヤバTのヤマタクは顔もかっこ悪いけど……かっこいいライヴしたら、めちゃくちゃギャップが出る!」と、こやまたくや(Vo&Gt)らしい発言で見事に切り返す。それから怒濤のゴリゴリ・チューン「Tank-top in your heart」で3ピースのバンド感をこれでもかと叩き付け、さらに「あつまれ!パーティーピーポー」、「Universal Serial Bus」と攻めの選曲で、サークル・モッシュの輪はみるみる大きくなる。中盤には最新シングル「げんきいっぱい」収録の「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」を繰り出し、特にしばたありぼぼ(Ba&Vo)の高音ボイスの抜けっぷりが最高過ぎた。後半に披露した「ハッピーウェディング前ソング」も異様な盛り上がりを見せ、この日最大級のサークル・モッシュで大歓迎され、ヤバTの地力に圧倒されてしまった。

 そして、辺りが暗闇に包まれると、2日目のトリを務めるSiMが登場だ。「準備体操は終わりだ。いきなり抜く伝家の宝刀!」とMAHが告げると、「T×H×C」で戦闘開始。モッシュにヘッド・バンギングと観客を縦横に揺さぶった後、レゲエ・チューン「paint sky blue」を披露。この振幅激しい攻めっぷりもSiMらしいアプローチだ。曲間に「PAさん、お客さんの声が聞こえないよ!」とMAHが会場の音響面に鋭くツッコむシーンもあり、バンドとして、フェスのオーガナイザーとしての躊躇なく発言する姿勢にも頼もしさを感じた。その後もモンキーダンスで場を完全掌握した「GUNSHOTS」、夜の闇に溶け込む「The Sound Of Breath」、ヘヴィなリフを振りかざした「MAKE ME DEAD!」と畳み掛け、阿鼻叫喚の沸騰図を見せつけた。

「俺たちはロボットじゃない。やりたいことをやりたい、それがロックの本質。9年目にして芯のあるロック・フェスと言えるようになった。これからも信じて、付いて来てください!」と自信に裏打ちされたMAHの言葉が胸に響く。自分たちがかっこいいと思うこと、自分たちがかっこいいと思うバンドを集めて、理想のロック・フェスを構築する。SiMが撒いた種は9年目にして、見事に花開いたと言っても過言ではない。後半は「JACK.B」、「Get Up,Gep Up」、アンコールで「KiLLiNG ME」、「f.a.i.t.h」と真骨頂を刻むアンセム曲を放ち、長丁場のフェスをきっちりと締め括った。

 今日のライヴを目撃し、SiMというバンドが一回りも二回りも大きく見えた。楽曲うんぬんを越えた、ロック・シンボルとしての存在感が格段と高まっていた。また、2日間無事にやり遂げ、いままでにない達成感もあったのだろう。「来年もやります!」と早くもMAHは「DEAD POP FESTiVAL 2019」を約束する大胆発言。有言実行のバンドゆえにきっとやってくれるだろうし、来年はまたとんでもない景色を見せてくれることだろう。期待しかない。       

【取材・文:荒金良介】
【撮影:kohei Suzuki(メインステージ) / Yasumasa Handa(サブステージ)】

tag一覧 ライブ SiM 04 Limited Sazabys 10-FEET THE ORAL CIGARETTES SHE’S ヤバイTシャツ屋さん

セットリスト

DEAD POP FESTiVAL 2018 DAY-2
2018.7.1@神奈川県川崎市東扇島東公園特設会場


    【CAVE STAGE】
    04 Limited Sazabys
  1. 1. Amy~knife
  2. 2. fiction
  3. 3. discord
  4. 4. GUNSHOTS~Chicken race
  5. 5. medley
  6. 6. swim
  7. 7. midnight cruising
  8. 8. My HERO
  9. 9. monolith

  10. 10-FEET
  11. 1. VIBES BY VIBES
  12. 2. 1 size FITS ALL
  13. 3. 1sec.
  14. 4. 太陽4号
  15. 5. ヒトリセカイ
  16. 6. RIVER
  17. 7. DO YOU LIKE…?

  18. THE ORAL CIGARETTES
  19. 1. Mr.ファントム
  20. 2. カンタンナコト
  21. 3. 容姿端麗な嘘
  22. 4. トナリアウ
  23. 5. 狂乱Hey Kids!!
  24. 6. BLACK MEMORY

  25. SiM
  26. 1. T×H×C
  27. 2. paint sky blue
  28. 3. Blah Blah Blah
  29. 4. GUNSHOTS
  30. 5. The Sound Of Breath
  31. 6. MAKE ME DEAD!
  32. 7. JACK.B
  33. 8. Get Up, Get Up
  34. [ENCORE]
  35. 9. KiLLiNG ME
  36. 10. f.a.i.t.h

    【CHAOS STAGE】 
    SHE’S
  1. 1. Un-science
  2. 2. Freedom
  3. 3. Getting Mad
  4. 4. 歓びの陽
  5. 5. C.K.C.S.
  6. 6. Over You

  7. ヤバイTシャツ屋さん
  8. 1. Tank-top in your heart
  9. 2. あつまれ!パーティーピーポー
  10. 3. Universal Serial Bus
  11. 4. 鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
  12. 5. スプラッピ スプラッパ
  13. 6. ヤバみ
  14. 7. 無線LANばり便利
  15. 8. ハッピーウェディング前ソング

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