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FIVE NEW OLD 「Easy Come, Easy Go vol.11」東京公演

FIVE NEW OLD | 2018.07.23

 この日、出演アーティストが各々体現した感のある、イベントタイトル「Easy Come, Easy Go」の解釈。STAMPはそれを「その場に居るべき尊さ」として残し、DATSは「簡単に手に入るものは簡単に消え去ってしまうもの」と示し、主催のFIVE NEW OLD(以下 : FINO)は「最終的に身に残るものは、自身の目と耳と身体や心を使って実体験したもの」と表した。

 FINOが毎度ゲストを迎え行っている自主企画「Easy Come, Easy Go」のVol.11~13が東名阪で開催された。DATSと各地ゲストの計3組で回った、このツアー。以下はその初日、7/6の渋谷クラブクアトロの記録だ。

 トップは日本でのバックバンドと共にタイのシンガーソングライターSTAMPが飾った。合間合間に日本語での真摯なコミュニケーションと歌と演奏によるスキンシップのような親密感を終始育んでいった彼。
 ストーナーロック的なインストからUSインディーズのヒリヒリさも交えた「Don’t you go」にてライヴはスタートした。ファンキーさとシティポップなタイ語の「Damn」。初めての日本語曲という♪君のことが忘れられない♪と歌われた「Million views」や、打って変わりメローでスイートなバラードとラストに向けてのエモさの同居も印象深い「The devil」。躍動感のあるサウンドと女性ラッパーもフィーチャーした「OHM」、会場の温かいクラップの中歌われた「It could be love」、ラストは「The Modern man」が会場に大合唱を生んだ。

「FINOが出てくる前に俺たちでフロアを温めてやる!」(MONJOE : Vo.&Syn.)との気概で臨んだDATS。とは言え、彼らの温め方は低温火傷。仄かな熱さとクールさ、そして秘めたエモさをこの日も爆発させた。
 ステージ上手よりドラムの大井一彌、早川知輝、MONJOE、伊原卓哉が並ぶ。
 ハーシュなシンセ、浮遊感とノイズを同居させた「amazon」を皮切りに、「Mobile」に入ると土着性が加わり、その躍動っぷりに場内が揺蕩う。「Memory」ではシンセベースとルーパーが作るグルーヴが会場にバウンスを寄与。また場内に緩やかなユニティを生み出した「Netflicks」やほのかなハッピーさを付与した「Jam」。性急なカッティングも印象的な「Dice」を挟み、ダビーでスリリングな「Interlude」が興奮度と高揚度を上げていく。

 「FINOとの出会いは2年前。その時にHIROSHIと「いつかDATSとFINOでイベントをやり、一緒に日本の音楽シーンを活性化しよう!」と語り合った仲。あれから2年、ようやくこの舞台に辿り着いた。「Easy Come, Easy Go」は「あぶく銭身につかず」と解釈。簡単に手に入るものは簡単に消え去ってしまうもの。同様にFINOは一過性のバズとかに頼らない頼もしいバンド。そのエネルギーの持続する限り永く続いていくバンドであろう。そして、かく言うDATSもそうなりたい」(MONJOE)と語り。フロアに幸せな手を上げさせた「Pin」、トロピカルハウス性も交え会場をバウンスさせた「Heart」を経てFINOへとバトンを繋ぐ。

 DATSが「青白い熱」としたら、FINOはさしずめ「オレンジ」であった。暖かみや黄昏、沸々とした熱さ、瑞々しさを彷彿とさせる楽曲たちをアーバンでアダルティな雰囲気も交え連射した、この日。リメイクし景色観を増させた「By Your Side」をSEに、ステージ上手より、まずはHAYATO (Dr.)、SHUN(B.)、WATARU (G./Key.)が現れ演奏を開始。そこへHIROSHI (Vo.&G.)も合流し、歌を加えていく。ゴスペル度の高い同曲に本格的にインすると、バンドによる生命力あふれる躍動感が場内に広がっていく。HAYATOのエモいドラミングを経て、ラストはHIROSHIによるロングフェイク&ブレスのハイライトが場内の嬌声をさらう。「Hole」に入ると軽快さが呼び込まれ、会場も左右にスウェイ。早くも一体感と共にワイパーが生まれる。WATARUによる軽快なギターカッティングからの「Foxtrot」ではHIROSHIのファルセットも堪能できた。
 
 HAYATOがドラムでつなぎ、ギターを持ったHIROSHIが、「いつもよりちょっと自分がイケてるなって思えたり、自分のことが好きになれる、そんな感覚を僕たちの音楽で届けたいです。最後まで一緒に心地よい時間を作っていきましょう」と、今宵もFINO劇場へと誘う。「Gold Plate」ではアーバンな雰囲気と楽しい空間が広がっていくのを実感。WATARUも顔で弾くようなチョーキング全開のギターソロを堪能させてくれた。

 会場のコール&レスポンスで場内に一度ピークを作り、シャッフル混じりの暴走4ビートインストナンバーでは、HAYATOも体全体で魅せるようにドラムを叩く、そして、それらを経て、シンセの幻想的で重厚な音の中から「Dance With Misery」が現れると、WATARUもそのファンキーなカッティングと共に会場が揺蕩い、続くウィスパーなコーラスとウェットさも特徴的な「The Dream」でも会場内がゆっくりと揺蕩いを見せる。

 「今の時代は簡単に色々なものが手に入る。楽な半面、自分の身に残っているものを振り返ると、結局は自身の目と耳と身体や心を使って体験したものばかり。僕たちが好きなものを一緒に体験し、ぜひ糧にして欲しい。ここに来たからこそ出会えたり、味わえたとなってもらえるのが理想。そんな願いも込めて、このイベント名を付けた」とHIROSHIが「Easy Come, Easy Go」について言及する。続けて、「この渋谷クアトロは、1年前に自分たちがメジャーデビューを発表した場所。そこで今回自分たちのイベントが行えたのは本当に嬉しい」と各所への感謝が告げられる。
 そして、ここまでサポートを務めていたベースSHUNが、この日をもって正式加入することが告げられ、場内から祝福と歓声が上がる。「これからはメンバー/スタッフ一丸となり、みなさんの生活の彩りを添えられるONE MORE DRIPな音楽を一緒に作っていきたいです!」と、HIROSHIのお株を奪うかのようにSHUNによる加入挨拶を経て、より場内が活気づく。そんな中、「この4人になって初めて作った曲」(HIROSHI)との新曲「Gotta Find A Light」が初お目見え。高揚感あふれ至福感のある、ホーンの音源も交えたクラップも映えるディスコナンバーが場内の驚喜を煽る。

 後半に入ると、会場を気持ち良さそうに左右に揺らせた「Black & Blue」。「雨でも台風でも心に太陽を」と入った「Sunshine」では、サビのファットなSHUNのベースラインと相交わったブロークンビーツが会場を走り出させ、それを見たHIROSHIがグッジョブな親指を立てる。また、「Stay (Want You Mine)」では、HIROSHIの歌うジェスチャーもダイナミックに。幻想的でダイナミズム溢れるインストを経て体温や朝日を取り戻すかのように始まった「My Sacred Chamber」では、このような景色感や根底にエモさをしっかり擁しているからこその彼らの音楽性への信憑性を改めて実感した。本編ラストは「Ghost In My Place」。ハッピーな大団円感をもって一度、彼らはステージを去った。

 アンコールは1曲。ギターとしてSTAMPが呼び込まれ、躍動とディスコ、雄々しいコーラス。ラテンのグループが腰にくる「Good Life feat. STAMP」が始まる。中盤ではSTAMPが、その美声を聴かせ、同曲の擁する至福さとカタルシス、雄々しさの彼らの美味しさ全部乗せを最後に再び味わうことが出来た。

 3者3様に、その意味を体現してくれた今回の「Easy Come, Easy Go」。観終わった私には、そのタイトルが「かけがえのないもの」との意訳としてずしっと胸に残った。
 FINOはこれからもこのイベントを通し、自身と自分たちが観てほしい、体感して欲しいアーティストたちを紹介し続けてくれることだろう。そう、彼らが立っているその場や、一緒に居る人たち、そこで自信を持って紹介するアーティストたちこそが、「いつまでも心の中に残り続ける、かけがえのないもの」になっていくことを信じて。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:umihayato】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル FIVE NEW OLD

リリース情報

Too Much Is Never Enough

Too Much Is Never Enough

2018年01月31日

TWILIGHT RECORDS

1. Sunshine
2. Ghost In My Place (Album ver.)
3. Gold Plate
4. Dance with Misery
5. Liberty feat. 踊Foot Works
6. Stay (Want You Mine)
7. Good Life feat. STAMP
8. My Sacred Chamber
9. Halfway Home
10. By Your Side
11. Young & Dumb
12. Gateway

セットリスト

Easy Come, Easy Go vol.11
2018.7.6@渋谷CLUB QUATTRO

    【FIVE NEW OLD】
  1. 1.By Your Side
  2. 2.Hole
  3. 3.Foxtrot
  4. 4.Gold Plate
  5. 5.Dance with Misery
  6. 6.The Dream
  7. 7.Gotta Find A Light
  8. 8.Black & Blue
  9. 9.Sunshine
  10. 10.Stay (Want You Mine)
  11. 11.My Sacred Chamber
  12. 12.Ghost In My Place - Liar
  13. Encore
  14. En-1.Good Life feat. STAMP

  15. 【STAMP】
  16. Don’t you go
  17. Damn
  18. Million views
  19. The devil
  20. OHM
  21. It could be love
  22. The Modern man

  23. 【DATS】
  24. amazon
  25. Mobile
  26. Memory
  27. Netflicks
  28. Jam
  29. Dice
  30. Interlude
  31. Pin
  32. Heart

お知らせ

■ライブ情報

FIVE NEW OLD / ONE MAN TOUR 2018 "ONE MORE DRIP"
09/30(日)仙台 enn 2nd
10/08(月・祝)金沢 vanvan V4
10/14(日)札幌 Sound Lab mole
10/26(金)高松 TOONICE
11/01(木)広島 Cave-Be
11/02(金)福岡 DRUM Be-1
11/08(木)名古屋 CLUB QUATTRO
11/10(土)梅田 TRAD
11/18(日)恵比寿 LIQUID ROOM

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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