前へ

次へ

キュウソネコカミ『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018-越えていけ編-』東京・NHKホール

キュウソネコカミ | 2018.07.23

 東京のNHKホールといえばNHK放送センターの敷地内にある、とても大きな会場だ。あの『NHK紅白歌合戦』の会場としても日本中の老若男女によく知られている。インディーズ時代からライブハウスでの地道な活動を積み重ねてきたキュウソネコカミが、こんなにも由緒正しい場所でワンマンライブをやるとは! ファンの胸中でも特別な想いが湧き起っているのだろう。上手側の壁にとりつけられているパイプオルガンの大きくて太い管が厳かな銀色をきらめかせていたりもする会場内を見回し、フカフカの椅子に座って開演を待ちわびていた人々の間に漂うムードは、普段のライブとは趣きの異なる緊張感を含んでいた。

 ライブ制作を手掛けているATフィールドの青木氏による前説の後、ついに迎えた開演。スタートを告げたのは、なんとなく懐かしい響きのブザーの音だった。そんなところにも格調高いNHKホールならではのものを感じていると、オープニング映像が流れ始めた。ステージを覆っていた紗幕が勢い良く上昇し、すさまじい雄叫びと共にスタートしたのは「MEGA SHAKE IT!」。激しく押し寄せるサウンドに刺激されて、椅子から立ち上がって全力で踊り始めた人々のエネルギーが、NHKホール全体をグラグラと揺さぶっていく。ステージ下手側から順番にヨコタ シンノスケ(Key・Vo)、カワクボ タクロウ(B)、ヤマサキ セイヤ(Vo・G)、オカザワ カズマ(G)、ソゴウ タイスケ(Dr)――という新鮮な横並びのフォーメーションで奏でられたサウンドは、序盤から強力極まりなかった。

「ファントムバイブレーション」「DQNなりたい、40代で死にたい」「ビビった」など、次々と披露されたお馴染みの曲たちによって湧き起った手拍子、大合唱、コール&レスポンスは、素晴らしい一体感に満ちていた。観客がフロア内でもみくちゃになるライブハウスとは異なり、整然と並んだ椅子の前に立って盛り上がる形ではあったが、3階席や2階席からもエネルギッシュに届いてきた熱気は、メンバーたちにとって非常に心地よいものだったに違いない。そして、たくさん用意されていたユニークな演出の数々は、客席にいた我々を終始、桁外れにワクワクさせてくれた。2曲の新曲の内、どちらを演奏するのか観客に選ばせるために、団扇を使用(片面が赤で、反対側の面が白。観客が掲げた色の数を、日本野鳥の会風の格好をしたスタッフがカウント……という紅白歌合戦風のスタイルだった)/日本の四季を彼ら流に表現する形となっていた「春になっても」「夏っぽいことしたい」「秋エモい」「冬幻狂」のメドレー/『誰が「家」を歌うかルーレット』によって選ばれたメンバーが熱唱した「家」/大御所女性演歌歌手の歌謡ショーのような大掛かりなセットが現れ、ゴージャスな衣装を身に纏ったセイヤが熱唱した「伝統芸能」……などなど、特別な会場ならではの内容が満載だった。アコースティックコーナーで「空芯菜」と「サブカル女子」を演奏した際、メンバーたちが、非常に照れくさそうだったのも、微笑ましい場面として思い出される。アコースティックコーナーは、オシャレでスタイリッシュなムードを漂わせるのが一般的だが、いつになく緊張気味だったセイヤの歌も含めて、和やかな笑いを誘っていたのが、実にキュウソネコカミらしかった。

 曲の途中でセイヤが観客の頭上を歩行し、ライブハウスのフロアのど真ん中まで移動して大暴れするのが恒例となっている「お願いシェンロン」が、とても新鮮な形で披露されたのも、あの場にいた全ての観客にとって忘れられないものとなったに違いない。椅子席が並んでいるホール会場では、いつものようなパフォーマンスが展開できないわけだが、大きな龍のオブジェに跨ったセイヤが突然現れてびっくり! 『まんが日本昔ばなし』のオープニングテーマが流れる中、龍の子太郎に扮したセイヤが客席内をパレードする様は、とてもシュールだった。「『まんが日本昔ばなし』は民放の番組なので、NHKホールには場違いでは?」などという無粋なツッコミを入れる隙は、一切なかった。客席のど真ん中で龍の子太郎(セイヤ)が発射したかめはめ波を喰らって、観客は大喝采。どんな場所でもオリジナリティに溢れたライブを繰り広げてきたキュウソネコカミならではの逞しい底力を感じた。

「何も発表がなーい! 何もなーい!」――重大発表があるかのようにもったいぶって話し始めた後、ぶち切れ気味にセイヤが叫んで観客をずっこけさせたりもしたアンコールでは、「家」「KMTR645」「The band」を披露。明るい笑いに満ちたひと時となったが、「できるだけ音楽を長く続けます。またどこかで会おうぜ!」という言葉が演奏の途中でふと届けられた瞬間は、グッと来るものがあった。そして全曲を披露し終えた後、観客が色とりどりのタオルを掲げている広い会場内を感慨深そうに眺めていたメンバーたち。「初めてタオルと人の顔が共存できる現場を見た気がする」と、シンノスケがNHKホールならではの風景について描写していたのが印象的だった。ホール会場でも最高の空間を生み出せたことは、キュウソネコカミにとって大きな自信となったはずだ。この勢いのままに、今年の夏フェスでも大活躍してくれるだろう。

【取材・文:田中 大】
【撮影:Viola Kam(V’z Twinkle)】

tag一覧 男性ボーカル ライブ キュウソネコカミ

リリース情報

越えていけ / The band

越えていけ / The band

2018年04月25日

ビクターエンタテインメント

01.越えていけ
02.MUKI不MUKI
03.The band

セットリスト

『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018-越えていけ編-』
2018.7.4@NHKホール

  1. 1.MEGA SHAKE IT!
  2. 2.ファントムバイブレーション
  3. 3.メンヘラちゃん
  4. 4.DQNなりたい、40代で死にたい
  5. 5.ハッピーポンコツ
  6. 6.ビビった
  7. 7.但しイケメンには限らない
  8. 8.MUKI不MUKI
  9. 9.邪邪邪VSジャスティス
  10. 10.No More 劣化実写化
  11. 11.泣くな親父
  12. 12.スベテヨシゼンカナヤバジュモン
  13. 13.春になっても
  14. 14.夏っぽいことしたい
  15. 15.秋エモい
  16. 16.冬幻狂
  17. 17.空芯菜
  18. 18.サブカル女子
  19. 19.伝統芸能
  20. 20.お願いシェンロン
  21. 21.KMDT25
  22. 22.何も無い休日
  23. 23.わかってんだよ
  24. 24.越えていけ
  25. EN1.KMTR645
  26. EN2.The band

お知らせ

『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018
-越えていけ編-』

と対を成すツアー
『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018
-The band編-』

6/27(水) 札幌Sound lab mole
7/17(火) 福岡BEATSTATION
7/18(水) 広島4.14
7/26(木) 仙台CLUB JUNK BOX
7/31(火) 名古屋・池下UPSET
8/02(木) 新潟・新潟CLUB RIVERST
8/16(木) 梅田Shangri-La
8/23(木) 高松MONSTER
8/28(火) 新代田FEVER

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る