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新境地が見えた新曲も披露、LAMP IN TERREN、日比谷野外音楽堂をレポート

LAMP IN TERREN | 2018.09.03

 ボーカル松本大の声帯ポリープ切除手術のため、今年の4月から活動休止していたLAMP IN TERRENの復活ライブが日比谷野音で行われた。酷暑が続く今年の8月には珍しく、夕方には涼しい風が吹きはじめていた8月19日の野音。ステージにはテレンのモチーフであるランタンが吊るされ、曲のタイトルにもなっている地球儀が置かれていた。会場に流れていたBGMが鳴りやみ、メンバーがステージに姿を現すと、演奏を始める前に松本の第一声。「こんばんは。LAMP IN TERREN、夏の野外ワンマンライブ『ARCH』はじめます」。ライブのオープニングを飾ったのはシリアスなロックナンバー「New Clothes」だ。ヘヴィなバンドサウンドにのせて、松本は《俺は恥ずべき裸の王様》と叫ぶように歌う。周囲の期待に身を焼かれ、抱く理想に押し潰れそうになった自分自身のことを、赤裸々に曝け出した楽曲は、テレンの休止前ラストツアーの会場と配信限定でリリースされた楽曲だった。

 川口大喜(Dr)が叩き出す軽快なリズムと魔法のようなメロディがライブの昂揚感を一気に高めてくれた「キャラバン」、大屋真太郎(Gt)が瑞々しいギターを奏でるなか、歌詞の《グッバイ》でみんなが手を振った「ランデヴー」のあと、客席から「おかえり!」と、声が飛んだ。「ただいま」と、静かに答えた松本。「積もる話もあるけれど、俺らミュージシャンだから、言いたいことは全部メロディと演奏にのっけて帰ります」と言うと、ピアノのイントロが印象的な「Dreams」へとつなぐ。手を伸ばしても簡単には掴むことができない夢への道のりを、《僕らは嵐に飛び込んでいく》と綴り、バンドの決意にもとれる楽曲は、前述の「New Clothes」と一緒に収録されていた。

 今年、松本がポリープ手術を受けることを発表した時期と前後して、テレンがリリースしたこれらの楽曲は、現状を打破しようともがきながら、全てを曝け出すことで、吹っ切れたような清々しさがあった。昨年末のイベントでは、松本が「ここからが始まりです」と力強く伝えていたこともよく覚えているし、毎月26日にお客さんと想いを共有する場所として、定期公演『SEARCH』を開催することでも、バンドは生まれ変わろうとしていた。その矢先の休止。そこからの再開を告げるこの日は、単純に“手術からの復活”という意味以上に、テレンが新たな旅立ちの門出に立つという意味も帯びていた。だからライブのタイトルが『ARCH』なのだと思う。「Dreams」は、そういうバンドの背景を自ずと考えさせられる曲のひとつだったし、そこから切れ目なく「林檎の理」へと導く流れは、ライブ前半のハイライトだった。

 「ボイド」では、《鳥の様に 高く飛べないとわかっていた》というフレーズのあと、ふと空を見上げると、野音の空にスッと鳥が羽ばたいていった。灰色の壁が剥き出しの、薄暗い野音のステージに一切の光を当てずに届けた「亡霊と影」は、新曲だ。深い闇を彷徨うような虚ろなバンドサウンドのなかで、《生きる意味がありますように》と、何度も何度も祈るように歌っていた。その演奏が終わると、静まりかえった会場に虫の音が聞こえはじめた。メンバー全員がステージの前面に一列に並び、アコースティックセットで届けた「花と詩人」。この曲の途中から少しずつ辺りが暗くなり、メンバーの足元を優しい光が照らす。「一緒に歌おうぜー!」と、中原健仁(Ba)がリーダーシップをとり、シンガロングを巻き起こした「multiverse」では、しゃぼん玉の演出で会場に心地好い空間を作り上げた。

 すっかり陽が落ちると、野音が、無骨な昼の顔から、様々な光に彩られる夜の顔へと変わる。ステージに赤やむらさき色の照明が歪つに溶け合った「innocence」では、中原のベースが唸りをあげた。タイトなビートを繰り出す川口の前で、大屋が挑むように対峙してギターを弾き、バンドが一丸となって荒ぶる衝動を叩きつけていく。ドクンドクンと心臓が脈打つような「heartbeat」のあと、電子ドラムでリズムを刻んだ浮遊感のある音像が印象的な「Water Lily」(この日の会場より復活限定盤としてリリース)は、バンドの新境地となる新曲だった。そして、ギターのアルペジオにはじまり、次第に熱を帯びてゆくバンドサウンドのなかで、松本の歌声が伸びやかに響いた「緑閃光」が素晴らしかった。テレンの大切なライブではいつも歌い続けてきたこの曲で、ステージの真ん中に堂々と立つ松本を見たとき、ここまで1時間近くライブを見てきたはずなのに、ふと「あ、本当にテレンが帰ってきたんだ」という実感が強く込み上げてきた。

 ラスト1曲を残して、松本は語りかけた。「去年は心が精神的に生まれ変わって、今年は体が生まれ変わったような感じがある。またゼロから積み上げなきゃいけないのかなって思う。LAMP IN TERRENとして、いち人間として、松本大として、またゼロから、ここから始めます」と。その言葉にエールを送るように、会場は温かい拍手に包まれると、テレンが最後に選んだのは「地球儀」。何度挫けても立ち上がる、もう一度信じたい、今なら飛べる、そんなフレーズが散りばめられた楽曲は、今のテレンの姿に相応しいラストソングだった。この曲の途中で、松本はステージを降りて、客席のあいだを通り、ひとりでセンターサブステージに移動して歌った。踊るように体を弾ませ、のけぞるようにして届けた渾身の歌。正直、喉の手術を終えたばかりで、いきなり長尺のワンマンライブに挑むことは無謀でもあるし、この日も完全な声かと言われたら、そうではなかったと思う。だが、そんなことは関係なかった。バンドが進むべき道へと導いていく絶対的なフロントマンとして、聴く人の心を熱く揺さぶるロックボーカリストとして、松本大はステージの上で唯一無二の存在感を放っていた。「俺らのことを好きでいてくれるヤツ、全員幸せにするつもりで、こっから先バンドをやるので、よろしくお願いします!」。最後の言葉は、どこまでも誠実で真っ直ぐだった。

 アンコールでも、松本は言葉を重ねた。「俺はどこかで演じてる自分がいて、こう言ったら喜んでもらえるんじゃないかなっていうところもあって。そういう気持ちも大事だけど、でも、自分でいることをやめると、一緒に生きることにはならないと思いました。せっかく同じ世界の上で出会えたので、違う色をして、違う光量の、違う強さの光で、一緒に生きていきたい。僕らは、聴いてくれるみなさんを含めて、この世の微かな光です。今日は、これだけの人数が日比谷野音に集まってくれて、少し……このバンドを名付けたときの、たくさんの微かな光が集まって大きな光になるっていう、自分の目標を達成できました」。ゆっくりと言葉を選びながら、「アーティストとリスナー」ではなく、「人と人」として丁寧に想いを手渡したあと、残る全ての力を振り絞って、本当のラストソング「メイ」を届けた。最後の一音でフロントの3人がドラムセットの前にギュッと集まり、ライブは終了。去り際に「年内にアルバム出します」と嬉しい予告をして、メンバーはステージを後にした。

 喉のポリープ手術を受けたことで、松本は「自分の声は戻らなかった」と言った。元の声と比べたら、たしかに微妙な違いはあるかもしれない。だが、これからも想いを声にのせて、歌を届けるのは、松本大であり、LAMP IN TERRENであるという本質は変わらない。この日の野音の意味は、復活とか、再始動ではなく、そのことを伝える日だったのだと思う。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:浜野カズシ】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル LAMP IN TERREN

リリース情報

Water Lily

Water Lily

2018年08月19日

A-Sketch

01.Water Lily
02.亡霊と影

セットリスト

LAMP IN TERREN「ARCH」
2018.08.19@日比谷野外大音楽堂

  1. 01. New Clothes
  2. 02. キャラバン
  3. 03. ランデヴー
  4. 04. Dreams
  5. 05. 林檎の理
  6. 06. ボイド
  7. 07. 亡霊と影
  8. 08. 花と詩人
  9. 09. multiverse
  10. 10. innocence
  11. 11. heartbeat
  12. 12. Water Lily
  13. 13. 緑閃光
  14. 14. 涙星群の夜
  15. 15. 地球儀
  16. 【ENCORE】
  17. 16. メイ

お知らせ

■ライブ情報

TOKYO CALLING 2018
09/17(月祝)渋谷エリアサーキット

Getting Better~Birthday Party’18~ ■Day.1 ※松本弾き語り
09/20(木)吉祥寺CLUB SEATA

定期公演ワンマン「SEARCH #006」
09/26(水)渋谷Star lounge

MEGA★ROCKS 2018
10/06(土)仙台サーキットライブ

TOUR「SEARCH+ #007」
10/05(金)郡山PEAK ACTION
10/07(日)静岡UMBER
10/08(月祝)松本ALECX
10/18(木)京都MUSE
10/19(金)広島4.14
10/21(日)長崎Studio Do!
10/26(金)渋谷Star lounge

FM802弾き語り部 -秋の収穫祭- 〜MINAMI WHEEL EDITION〜 ※松本弾き語り
10/16(火)心斎橋BIGCAT

SIX LOUNGE presents "イチロー誕生祭"
10/22(月)大分T.O.P.S BittsHALL

アルコサイト pre. 東名阪ツアー「金風に舞う」
10/30(火)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE

リアクション ザ ブッタ Tour 2018〜Mini Album『Single Focus』Release Tour〜
11/16(金)新潟CLUB RIVERST

定期公演ワンマン「SEARCH #008」
11/26(月)渋谷Star lounge

定期公演ワンマン「SEARCH #009」
12/26(水)渋谷Star lounge

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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