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tricot アカシック yonigeが共演 『大奥 ~OOOKU~』渋谷TSUTAYA O-EAST

tricot | 2018.09.20

“こんなイベントを観たら、この日に出たバンドたちみたいな音楽を自分たちでも演りたくなるだろうな…” “集まった女子たちは今後のライブの観かたや楽しみ方も変わるかも…”。そんな想いが、この日の終演後、幾度も去来した。

「8周年は、わがままを言い女性限定でやらせてもらった」(主催tricot : Vo.&G. 中嶋イッキュウ)とのライブ中のMCにもあったが、今年8周年を迎えたtricotが女性のお客さん限定で『大奥 ~OOOKU~』とタイトルしたライブイベントを行った。これまでも「女MATSURI」と題し、何度か女性客限定のライブを行ってきた彼女たちだったが、それはどれもライブハウスクラス。その拡大版とも言える今回は、キャパシティも会場の大きさもグンと大きく展開された。

 かねてよりツアー等で一緒に競演してきた仲の良い、アカシック、yonigeのフロントウーマンを携えたバンドとの饗宴が繰り広げられた、この日。まずは自ら「tricotは大好きなバンド」と語る、ここ最近のツアーに同行したりと仲の良い後輩バンドyonigeが先鋒を務めた。
SEも無く3人がステージに登場。ドラムを中心に円陣が組まれ、各フォーメーションにつくと、「大阪・寝屋川から来たyonigeです」と通例通りボーカル&ギターの牛丸ありさの一言からライブはスタートした。その牛丸のアンニュイで低い吐息成分も多分な独特のキュートさも交えた歌と、エモさを湛えたオルタナなギター、ホリエ(サポート)のタイトなドラムに、運指の多い躍動感たっぷりのごっきんのベースといった彼女たちならではの音楽性は、この日も健在。「リボルバー」でゆったりじわじわライブをこじ開け、一気に16ビートがパーっと景色を開けさせた「our time city」が上昇感と解放感で会場をグイグイ引き上げた。
「今日は女性ばかりだから景色がいい」とごっきん。以前、彼女たちも女性限定ライブを行い、その際、男性でも女装すれば入場可にした為、多くの男性が女装して入場。結果、「会場は化け物屋敷状態だった」と面白おかしく続ける。
 これまで以上に秘めたエモ度が高い印象を受けた人気曲「アボカド」。また「さよならプリズナー」では、ガーッと駆け抜けるかのような同曲が会場に多くのコブシを上げさせ、ラスト「最愛の恋人たち」では、ダイナミズムさとエモさが渦となり会場をズブズブと引きずり込んでいき、最後はフィードバック音と凄かったとの印象を残しステージを去った。

 前出のyonigeが残した、くぐもったロックっぽい雰囲気を、続くアカシックはパーッとしたハレと会場を巻き込んだ一体感で自分たちの世界へと染めていく。
 SEに乗り、まずはギターの奥脇達也、ベースのバンビ、ドラムの山田康二郎、そしてサポートキーボードが一人ひとりステージに現れる。キュートさとパワフルさが入り混じった演奏を始めると、ロングドレスのボーカルの理姫も登場。「いぇーい女たち!!」と一言。場内を一気に楽しげに一変させる。
 1曲目は「8ミリフィルム」。ドライブ感のあるグルーヴィなサウンドに、のっけから会場に躍動感が生まれる。4つ打ちチューンの「邪魔」、また、「you&i」では、ちょっとしたウェットさも交え、場内にキュンとした気持ちを注入していく。
 「みんな~セックスしてるか~?」「女性の沢山いるライブって嬉しい。tricot誘ってくれてありがとう」等々、ステージ中央のステップに座りガールズトークに近い雰囲気の会話を理姫が展開。親しみやすさと安心感を育んでいく。加え、女性限定ということもあり、女性同士ならではのHさも交えたぶっちゃけトークも炸裂。まさにこれはこの日、このシチュエーションならではの楽しみがあった。
 後半は怒涛だった。情報量の詰まったリリックの「CGギャル」がグイグイ自身の世界観へと惹き込んでいけば、「LSD」を経たラスト「マイラグジュアリーナイト」が、これでもかと言わんばかりにエネルギーを放出。楽しかった~。スカっとした~。そんな印象と雰囲気を残し彼らはステージを降りた。

 そして、tricotの登場だ。「絶対に一緒にやりたかったバンドたちだったから一発で快諾してくれて嬉しかった」(中嶋)の言葉や気持ちをライブやプレイに乗せて返礼するかのようなライブを魅せてくれた、この日。今年に入っても怒涛のUSツアーや国内外でのライブも数多く行い人気も高めてきたこともあるのだろう、より魅せたり、巻き込んだり、といったこれまで以上に「映える」ライブが印象的だった。
SEも無く展開後のステージの幕が開く。すでにメンバー4人は各位のフォーメーションにてスタンバイ。中嶋の歌い出しから、ギターのキダ モティフォ、ベースのヒロミ・ヒロヒロの2声、3声が加わり、そこにドラムの吉田雄介も合わさりバンドサウンドが形成されていく。オープニング曲は「Break」であった。個人的には意外な出だしだった。印象的にはライブのラスト辺りのハイライトの曲が頭から飛び出してきたからだ。ラストは激しく会場をグイグイ惹き込んでいった同曲。それを経た「TOKYO VAMPIRE HOTEL」では、会場を交えた一体感が育まれていく。キダのステージアクションも激さを帯び、同曲の特徴とも言える抜けたストレートさが気持ち良く響く。ヒロミのベースラインから始まった「おもてなし」ではスリリングさを会場に注入。性急さとそれらを抜けた後に訪れるダイナミズムは、この日も健在であった。
後半の盛り上がりハイライト曲「爆裂パニエさん」がわりと序盤に現れたのも意外だった。いつも通り、お客さんの歌声も手伝い共に完成させた同曲。そのアンセムもこの日は女子のみ。これまでと違った響き方も興味深かった。揃いのポーズとハーモニーが魅力の「おちゃんせんすぅす」ではセクシーさに加え、よりキダが無尽に動き回り、キメをきちんと決めるところも印象深かった。また、中嶋のスクリームから入った「庭」では、同曲の擁するサンバ性が会場も合わせて踊らせる。もう、この曲に関しては、この日ならではのサービス満点さ。いやー、これはちょっと男子には見せられないわといった趣きのウォッシュダンスなる、キュート&エロティックなフリも特別稼働。非常に得をした気持ちになった(笑)。
対して、より幻想さを増しディープな印象を受けた初期ナンバー「G.N.S」、歌を会場中に広げた「potage」が場内をtricotの「歌と雰囲気」といった、もう一面の世界観へと誘っていく。
ラストに向けては激し目の曲たちが連射された。「節約家」を皮切りに、中嶋によるバラード調のギターと歌い出しから一変、「かかってこいや!!」の掛け声とともに突入した「99.974℃」では、会場の熱も一気に急上昇。この日、最大の沸点を見せた。また、サビのストレートになるところではフロアも激しく呼応。通例の彼女のライブで見られるクラウドサーフはさすがに起こらなかったにせよ、ステージに向けての一丸となった美しいコブシによる呼応も印象深い。
本編ラストは「MATSURI」。中嶋が渾身にアジテートし、メンバーも激しく暴れまわり弾き倒す。フロアもまさに阿鼻叫喚。中嶋も久々にフロアに飛び込み、会場のリフトの中、オーディエンスを煽る。最後はメンバー全員、渾身の末ステージに倒れ込み、フィードバック音を残し一旦袖へとハケた。
アンコールは1曲。新曲「BUTTER」が披露された。これがまた、これまでの彼女たちには無かったタイプの楽曲。中嶋が終始ハンドマイクでソウルフルな歌声を披露。キダのウォームなギター、ヒロミを含む3声のボーカルといった、これまでとは異なったムードを擁した楽曲であった。キダのルーパーを使ったギターアンサンブルもこれまで中嶋との2本のギターの響きにこだわってきた印象の強いtricotにしてはやや意外であった。最後はジワジワと光の中に惹き込まれていくかのように響いたキュートさと凄さが同居した同曲。新境地にして今後の彼女たちの向かう先をますます楽しみにさせた。

この日、tricotの中嶋は自身のライブの際のMCで、女の子ばかりの場内に向け、「今日は(男性の大きなお客さんがいないから)よく見えるでしょう?」と尋ねた。まさに、そこにこのイベントの主旨があったように思う。「観せる」のではなく「魅せる」。そして、普段のライブではなかなか気づいてもらえない細部にこそ、自分たちの真価がある。それをじっくりとしっかりと、しかも「女子」に観てもらいたかったのではないだろうか?そして、そこから感受/感銘を受け、何か自身の次のアクションに結びつけて欲しく、このイベントを行ったのではないだろうか?と。この日、集まった女性のうちどれぐらいがどのようなバイタリティをこのライブから得、自身の糧となり、自身の次の行動へとつなげていったのか?ここからの集まった彼女たちの次のアクションにも想いを馳せさせる一夜でもあった。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:Yasumasa Handa】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル tricot

リリース情報

potage[限定アナログ盤]

potage[限定アナログ盤]

2018年05月19日

FLAKE SOUNDS

SideA-1. potage
SideB-1. ブームに乗って

セットリスト

tricot8周年企画 ”大奥 〜OOOKU〜”
2018.9.3@渋谷TSUTAYA O-EAST

yonige
  1. 1.リボルバー
  2. 2.our time city
  3. 3.2月の水槽
  4. 4.ワンルーム
  5. 5.アボカド
  6. 6.沙希
  7. 7.さよならアイデンティティ
  8. 8.最愛の恋人たち

アカシック
  1. 1.8ミリフィルム
  2. 2.邪魔
  3. 3.you&i
  4. 4.CGギャル
  5. 5.LSD
  6. 6.マイラグジュアリーナイト

tricot
  1. 1.Break
  2. 2.TOKYO VAMPIRE HOTEL
  3. 3.おもてなし
  4. 4.爆裂パニエさん
  5. 5.おちゃんせんすぅす
  6. 6.庭
  7. 7.G.N.S
  8. 8.potage
  9. 9.節約家
  10. 10.99.974℃
  11. 11.MATSURI
  12. Encore
  13. BUTTER(新曲)

お知らせ

■ライブ情報

KOYABU SONIC 2018
2018/9/17(月祝)インテックス大阪 5号館&1号館

INTERVALS『Japan Tour 2018』
2018/9/18(火)Shibuya WWW X

KANSAI LOVERS 2018
2018/9/22(土)、9/23(日)大阪城音楽堂
*出演日未定

SiM “THE WEST END TOUR 2018"
2018/9/25(火)出雲 APOLLO
2018/9/26(水)米子 AZTiC laughs

MASS OF THE FERMENTING DREGS 4th Album「No New World」Release Tour
2018/9/30(日)新代田FEVER

Survive Said The Prophet space [s] TOUR 2018-19
2018/10/12(金)千葉LOOK
2018/10/13(土)水戸LIGHT HOUSE
2018/10/14(日)横浜FAD

八十八ヶ所巡礼 presents 仏滅の夜はツーマン!!3デイズ!!!
2018/10/28(日・仏滅)渋谷lush

tricot UK tour 2018
11/12(月)The Haunt, Brighton
11/13(火)The Fleece, Bristol
11/14(水)Bodega, Nottingham
11/16(金)Stereo, Glasgow
11/17(土)Soup Kitchen, Manchester
11/18(日)ENJOY Sugoi Festival

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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