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和田唱、ソロ・シンガーとしての魅力を開花させた初のソロ・ツアー

和田唱 | 2018.11.19

 和田唱の初のソロ・ツアー、『1st SOLO LIVE TOUR 2018“一人宇宙旅行”』の2日目、11月4日の日本橋三井ホール。彼とともに初めての音楽空間に身を委ねるのは心躍る体験となった。和田はTRICERATOPSのボーカル&ギターとして1997年にメジャーデビューして以来、21年間、精力的な活動を展開している。今回のソロはバンドをさらにパワーアップするための休止をきっかけとしてスタートした。彼がミュージシャンとしての新境地を切り拓いていることは、この日のステージからもはっきり見てとれた。バンド活動で培った技術・経験を存分に生かしたものであると同時に、これまでには観たことのないソロ・シンガーとしての魅力が詰まっていた。そして未知の世界に挑むチャレンジ精神と冒険心も伝わってきた。彼もMCでこう語っていた。

「僕にとっては非常にチャレンジングなライブです。イベントに誘われて出演するなどして、これまでに一人で最長で50分やったことがあるんですが、そこから先は未知の世界なんです」とのこと。この未知との遭遇が実に楽しかった。約2時間半のステージとなり、記録を大幅に更新したのだが、体感時間はあっという間。つまりそれだけ内容の濃い、充実したライブだったのだ。

 彼はツアーに先駆けて、1stソロ・アルバム『地球 東京 僕の部屋』を発表している。音楽的なアイディアが詰まったバラエティーに富んだ作品で、いい曲がズラリと並んでいる。特筆すべきなのはストリングス以外のすべての楽器を彼が演奏していること。彼のオリジナリティーが純度の高い状態でパッケージされていて、パーソナルな世界が展開されているのだが、壮大な広がりも備えている。内面を見つめるまなざしとともに、自分を取り巻く世界や人々へのまなざしも存在していて、ヒューマンな愛のアルバムとなっている。『地球 東京 僕の部屋』というタイトルはこの作品の広がり、奥行き、深みを象徴するかのようだ。

 今回のツアーはこのアルバムの楽曲が軸となっている。ツアー・タイトルからもわかるように、ステージの上にいるのは和田唱ただひとりだけ。アコースティックギター、エレキギター、ベース、キーボードなど、楽器を替えながらの弾き語りが軸となるステージなのだが、いわゆる“弾き語り”とは一線を画したものになっている。アルバムは一人での演奏を多重録音できるが、ステージはそうはいかない。その分、工夫を凝らしている。つまり“アルバムの再現”ではなくて、“新たなる創造”という表現がより適切だろう。

 ミュージシャンとしての能力を全開にして、挑んでいくステージ。そしてシンガーとしても、プレイヤーとしても、よりむき出しとなっての演奏。なので、彼の声の持っている甘さ、しなやかさ、やわらかさ、色気なども全面に出てくる。演奏技術やセンスが浮き彫りになっていく。おそらくこの初ツアーは彼がミュージシャンとしての自分を再発見する場にもなっているのではないだろうか。じっくり聴かせる曲だけでなく、踊れる曲や盛り上がる曲など、様々なタイプの曲が演奏されて、ロマンティックな世界に酔いしれたり、温かな歌声にほんわかしたり、白熱の演奏に胸が熱くなったり、緩急、起伏に富んだ構成になっていた。

 会場によって形態は様々なのだと思うが、三井ホールは椅子ありだった。だが、いわゆる着席ライブとはまったく違う。ハンドクラップやコール&レスポンスが起こったり、座りながら、体を動かしたり、時には立ち上がったりする楽しいステージだ。聴覚を研ぎ澄ませる緊張感あふれるオープニングで始まり、いつのまにか、一体感あふれる温かくて熱い空間が出現していく。曲によっては今回のツアーのために購入した機材を使用。しかも本人による解説付きで、ステージ上でどんなことが起こっているのか、プレイヤー目線で楽しむこともできて、ドキュメンタリー的なスリルもある。

 意外なルーツ・ミュージックのカバーやTRICERATOPSのナンバーも演奏された。TRICERATOPSの曲を一人で演奏することで、パーソナルな要素が強調されて、違った表情も見えてきたりする。バンドもいいけど、ソロもいい。心の底からそう思えるところに音楽の懐の深さがある。多彩なセットリストになっていたのだが、どの曲も“一人宇宙旅行”の一員となっていて、美しい調和が存在しているところも見事だった。

『一人宇宙旅行』というタイトルどおり、和田唱とともに壮大な宇宙旅行を体験していくライブであると同時に、彼の過去から現在、そして未来への道をともに体験していく“時間旅行”とも呼べそうだ。“一人”とは彼一人だけを指すものではないのかもしれない。観客それぞれが自身の過去・現在・未来に思いを馳せ、それぞれの一人旅行を重ね合わせることもできる。共有することと内省的になることとが両立する空間だった。和田唱にとっては、おそらくこの宇宙旅行は成長の旅でもあるだろう。ステージごとに進化していくところも初ツアーならでは。ファイナルは12月30日の赤坂BLITZ。この挑戦的なツアーを見届けることはきっと貴重な体験となっていくだろう。

【撮影:山本倫子】
【取材・文:長谷川 誠】

リリース情報

GLITTER / MIRACLE

GLITTER / MIRACLE

2018年05月09日

Trinity Artist

01.GLITTER
02.MIRACLE
03.GLITTER(without main line vocals)
04.MIRACLE(without main line vocals)

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お知らせ

■ライブ情報

和田唱 1st SOLO LIVE TOUR 2018
“一人宇宙旅行"

11/23(金)浜松 窓枠※SOLD OUT
12/1(土)仙台 レンサ
12/9(日)福岡 イムズホール
12/15(土)名古屋 BOTTOM LINE※SOLD OUT
12/16(日)大阪 BIGCAT※SOLD OUT
【追加公演】
12/30(日)東京・マイナビBLITZ赤坂
チケット ¥4,800-(+会場によって要1ドリンクオーダー)
More information: http://triceratops.net/

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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