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King Gnu マイナビBLITZ赤坂での圧巻のツアー・ファイナル

King Gnu | 2018.12.05

 とてつもないライブだった。音が一丸となって群れのように立ち向かってくる圧巻さ。究極のハンマービートとでもいうべき、一音一音に込められた思いの強さ。常田大希(G,Vo,Key)によるギター・カッティング、新井和輝(B,Key)による腹にくる低音、勢喜 遊(Ds,サンプラー)によるスティックでの一撃、そして、井口 理(Vo,Key)によるシャウト。浮かんだ言葉は“初期衝動”だった。

 そもそも、King Gnuメンバーはクラシックやジャズ、声楽にも通じるテクニカルかつアカデミックな側面を持つバンドだ。しかし、昨年オースティンでの大規模フェスSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)への出演やCHAIと共に回ったアメリカ・ツアーを経て覚醒した。以降、ライブを重ねるごとにテクニカルで内面へ向かったアーティスティックな側面から逸脱し「あなたは蜃気楼」、「Flash!!!」、「Teenager forever」、「Sorrows」など、よりティーンエイジャーの葛藤を解放するかのようなアッパーなビートチューンが生まれていく。そんな近年のライブの集大成となったのが東名阪ワンマンLIVEツアー『King Gnu One-Man Live 2018AW』ファイナル、11月20日のマイナビBLITZ赤坂公演だった。


 超満員の会場。定刻すぎに、会場に響く不穏なノイズが少しずつ大きくなり信号音と重なりあって突如暗転。ステージの紗幕にはメンバーのシルエットが浮かび上がり、幕が落とされる。12月中に先行配信が発表されたKing Gnuテーマソングとでもいうべき「Slumberland」からスタート。常田による拡声器アジテーションによって一気にオーディエンスの熱量は最高潮となり「Flash!!!」、「あなたは蜃気楼」と一気にフロアを盛り上げていく。

 一変して、魔法めいた空間美を醸し出すことで会場中の空気を、繊細な音のミストでいっぱいにしていく「NIGHT POOL」、「破裂」、「It’s a small world」、「Prayer X」では、歌謡曲テイストと映画サウンドトラック的な世界観が混じり合うメランコリックかつ色っぽいサウンド展開へ没入する。シアトリカルな妖しさ溢れる世界観の構築だ。


 そう、King Gnuの面白さは、昨今のブルーノート・レコード系なロバート・グラスパー以降の洋楽的な影響のみならず邦楽からの影響を隠さない。山下達郎、井上陽水、THE YELLOW MONKEY、BLANKEY JET CITY、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、B’zなど、垣間見える音像から様々な影響が浮かんでいく。今や死語となった“ロックスター”という言葉。しかし、King Gnuは過去からの継承を卓越したオリジナリティーとして消化しており、その印象は誰にも似ていなく、何にも属さない。まさに、自身が提唱する“トーキョー・ニュー・ミクスチャー”を地でいく強靭なサウンドスタイルだ。多様性溢れる羅針盤なき時代に一変の光を指し示す、“ロックスター像”の21世紀解釈とでもいうべきか。

 序盤の注目ポイントはバンドのターニングポイントとなった「Vinyl」だ。YouTubeでのミュージックビデオ公開によってKing Gnuの風向きが変わったナンバー。その後、直近で行われたニューカマー・アーティストの登竜門イベント『CINRA presents exPoP!!!!!』渋谷TSUTAYA O-nest公演では、ファンが倍増し今に通じる道筋が見えてきたことを思い出す。


 バンドの革新性とともに、炸裂するのが井口による独善としたユニークなMCだ。オーディエンスへプレゼントがあるとして雑誌『ヤングチャンピオン烈』をコンビニ袋に数冊持参して、表紙を飾るグラビアアイドル=篠崎愛を絶賛しながらニヒルな笑顔で巻きはじめた。実は、アイドルファンには知られているが、篠崎愛は歌唱力が高く、洋楽的センスを持つ音楽性も評価されている逸材だ。King Gnuとのコラボが期待される(いや、無いか!?)。さらに、名古屋大阪でのツアー中にMCへ入るタイミングを間違えた話、母親が会場にいることをベーシストの新井に暴露され、しまいには“母へのメッセージ”を述べるなど自由度の高いお楽しみトークタイムは止まらない。しかし、超満員のフロアを眺め、お客さんが数人しかいなかった時代を回想し、感慨深い様子を隠すこともしない熱い男だ。


 King Gnuのライブの魅力を一言で表すならば、テクニカルで自由なプレイをロックにダイナミックに表現する、ずば抜けた音楽性の高さだ。終盤、空気が加速したのは、最新曲としてバンドのロック観をネクストレベルにアップデートしたビートの効いたポップチューン「Sorrows」。キャッチーなシンセ・フレーズが味となり、バンドの好調な雰囲気を体現したナンバー。そして、改名前より歌い紡がれるロックアンセム「ロウラブ」。シンガロングが熱量最高潮となった「Tokyo Rendez-Vous」など、濃厚に全20曲をプレイ。圧巻の105分のロック体験となった。


 アンコールで重大発表があった。2019年1月16日に2nd アルバム『Sympa』をソニー・ミュージックレーベルズのアリオラジャパンからメジャーリリースすることを、バンドの頭脳である常田が告げた。「ひとつ、大事なお知らせを。来年1月16日にメジャーデビューが決定しました。それに伴いまして全国8箇所でリリースツアーします。東京はSTUDIO COAST 2デイズで。是非遊びに来てください!」。

 全国ツアーとともに、ツアー初日と千秋楽を新木場STUDIO COASTで行うという。これまで、ワンマンライブは全て即完となっているだけに初の全国ツアーもチケットの争奪戦が予想されるが、2ndアルバム『Sympa』の初回生産分にはチケット先行申し込み用のシリアルナンバーが封入されるという(←大事な情報)。

 あえて日本語曲で作品をクリエイトする彼らだが、日本発 → 世界へ誇る革命的な新しい才能であることは間違いない。言い切ろう、グラミー賞ノミネートが見えたライブだった。世界の音楽シーンは、打ち込みなラップソング全盛時代ではあるが、King Gnuによるツインヴォーカルの掛け合いの妙、骨太で聞き応えあるサウンドのエンターテインメント性の高さは海外の主流となるサウンドに負けてはいない。まずは、2019年のロックシーン最前線を占う次回ツアーを必見あれ。シンパが集まり続けるヌーの群れの爆走。King Gnuによる快進撃は止まらない。 

【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
【撮影:Hajime Kamiiisaka】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル King Gnu

リリース情報

Sympa

Sympa

2019年01月16日

アリオラジャパン

1. Sympa I
2. Slumberland
3. Flash!!!
4. Sorrows
5. Sympa II
6. Hitman
7. Don’t Stop the Clocks
8. It’s a small world
9. Sympa III
10. Prayer X
11. Bedtown
12. The hole
13. Sympa IV

セットリスト

King Gnu One-Man Live 2018AW
2018.11.20@マイナビBLITZ赤坂

  1. 1. Slumberland
  2. 2. Flash!!!
  3. 3. あなたは蜃気楼
  4. 4. NIGHT POOL
  5. 5. Diving to you
  6. 6. 破裂
  7. 7. Vinyl
  8. 8. Sympa
  9. 9. Hitman
  10. 10. Vivid Red
  11. 11. Don’t stop clock
  12. 12. It’s a small world
  13. 13. McDonald Romance
  14. 14. Prayer X
  15. 15. Sorrows
  16. 16. Bedtown
  17. 17. ロウラブ
  18. 18. Teenager forever
  19. 19. サマーレイン・ダイバー
  20. 【ENCORE】
  21. EN-1. Tokyo Rendez-Vous

お知らせ

■ライブ情報

King Gnu One-Man Live Tour 2019 “Sympa”
2019/3/3(日)新木場 STUDIO COAST
2019/3/7(木)名古屋DIAMOND HALL
2019/3/9(土)福岡DRUM LOGOS
2019/3/17(日)大阪BIGCAT
2019/3/18(月)大阪BIGCAT
2019/3/21(木)高松MONSTER
2019/3/22(金)広島CLUB QUATTRO
2019/3/30(土)札幌cube garden
2019/3/31(日)札幌cube garden
2019/4/5(金)仙台Rensa
2019/4/12(金)新木場 STUDIO COAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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