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TENDOUJIの勢いが止まらない! 渋谷WWWXでの「爆発」ツアーを完遂

TENDOUJI | 2019.02.08

 バズリズム、anan、その他もろもろの媒体で「2019年、次に来るアーティスト」として、マスにもTENDOUJIという謎の名前がアピールされ、同時にグラスゴーの至宝TEENAGE FANCLUBのオープニングアクトにも抜擢されるギターポップバンドとしてコアなミュージックラバーにも一目置かれる存在になった今。東京インディー・シーンきっての愛されキャラという形容詞は正直もう窮屈なんじゃないか? と想像してこの日のワンマンに臨んだら、やはりすでに少なくとも「ライブシーンきっての」愛されキャラに、その存在感を更新していた。

 今回はプロデューサーの片寄明人(GREAT3)を迎えたニューEP『FABBY CLUB』を携えた東名阪ワンマンツアー、さらにゲストありの沖縄公演が一連の流れになっており、東京はワンマンのファイナルにあたる。グッと若い女性ファンが増えた印象で、おもろカッコいいロゴTに着替えてフロアに突入して行く人もいた。だが、ほとんどは普段着で、ノリもいい意味でバラバラ。全員が同じように拳を上げたりクラップしたりなんてことはなく、ダイブする人もいれば、ビートに乗りながら笑顔でステージを楽しむ人もいる。このバラバラ加減が最高に心地いい。

 時間を戻すとオハイオ・プレイヤーズの「ファイアー」やT-Rexの「テレグラム・サム」など、時空を超える70年代の名曲が流れTENDOUJIの心意気に通じるものを感じる。そして場内が暗転すると背景のスクリーンに今回の「爆発」東京版のオープニングビデオが流れるも、音が出ないというアクシデント。だが、映像に突っ込むファンの言葉が互いに笑いを呼んで、むしろいいムードになっていたように思う。そこへ大歓声に迎えられメンバー登場。オープナーはギターポップの名曲感溢れるミディアムチューン「GOLD」が、まるで凱旋ライブかのようなユナイト感をすでに醸し出している。今にもファン同士が肩を組みそうなエモいムードと言ったらいいだろうか。立て続けにニューEPから、勝手に体がジャンプしてしまう「Killing Heads」、さらにちょっとサイケなフレージングが印象的な「NINJA BOX」が音源のローファイ感を忘れさせるタイトなビート感で正直驚いた。

 美形の天然キャラ・ヨシダマサタカ(Ba/Cho)がツアータイトルに掛けて「爆発していきましょう」と言葉とは裏腹なテンションで一声放つと、おなじみのイントロに文字通り爆発する、「Kids in the dark」だ。痛快なパワーポップだが、切ない美メロのヴァースが入るあたりもフロアは堪能していて、そこでジャンプする一団にモリタナオヒコ(Vo/Gt)の「お前ら最高だな」(筆者の想像)的な笑顔が眩しい。ステージ上とフロアの感情の交換が、さらにライブをグルーヴさせるのが手に取るようにわかる。フロアにいる多くの人が「俺が、私が一番楽しんでる」、そんなヴァイブスがTENDOUJIのライブを無敵なものにしている気がした。

 ワンマンならではの自称「コアなターム」には、これまたニューEPからリバーヴィなギターと脱力気味のコーラスがいい味を出している「GARDEN」や、ドリームポップな味わいもある「SALV.」でメロディの良さを味わわせる。次なる「PARASITE」を作者のモリタが「みんな英語で意味わかってないと思うんだけど、失恋の歌です」と紹介。いなたいメロディがどこか胸を締め付ける。演奏が終わるとヨシダが「そういう曲だったんだ」と納得した顔で言うと、モリタが「ああ、パラサイト。どっちがって? 俺が」と、半ばヤケクソ気味に告白。メンバーのやりとりがよく書けたシットコムの脚本みたく秀逸なのだが、これはリアルだ。

 ツアーを振り返るトークでもヨシダはテンションを上げるために名古屋ではマリリン・マンソン、大阪ではファットボーイ・スリム、そして東京ではティーンエイジ・ファンクラブのライブ映像を見たと言う。オープニングアクトに関するアピールだろうか。いや、他意はなさそうだ。アサノケンジ(Vo/Gt)のド派手なユニオンジャック柄のトップスに関するエピソードもおかしい。欲しいと思ったが3万という値段に悩み、メルカリで1万4000円で発見し、購入。しかし大阪でまさかの同じトップスを着た人に値段を聞くと1万円だった時のショック。さらにツアー先で朝まで飲み、大事なそのトップスを忘れたことに気づき、ホテルに連絡したところ、「それ以外に下着や靴下もお忘れです」と聞き、全裸でホテルを徘徊した疑念に震えるという、結局、一番美味しいのはアサノ本人なのでは? というエピソードを披露。めちゃくちゃツアーを堪能しているではないか。

 後半は結成当初のこれぞギタポの愛らしさと青臭さ100%の「LIFE-SIZE」や、ティーンエイジャーが初めてバンドで演奏するようなみずみずしさをたたえた曲「Skippy」、若干の不穏さをまとったローファイなグランジ「D.T.A」と、数年前の少し懐かしい曲が続いた。

ちょっとセンチな気分にさせるところもTENDOUJIの作曲センスが冴えた。そしてニューEPからループするギターと「Please,Please?」のコーラスがキャッチーな「Peace Bomb」。良質なパワーポップの中にロックンロールの色気やカオティックな部分までぶち込んだアレンジに、フロアもナチュラルに加熱していく。だが、ラストに向かって彼らが披露したのはミディアムでコードとリフの対照がいい、ナードなムードの「HAPPY MAN」。
ハイテンションなのだが、心の中でしみじみいい曲たちだなと思える余裕。これがTENDOUJIのライブ最大の魅力だろう。ラストは誰しもの心にある理想ややりたいこと、そのたすかになる「何か」を全力で肯定してくれるような「Something」で、和気藹々と本編を終了させた。

フロアは「もっとTENDOUJIの曲を聴きたい」気持ちが軸にあり、メンバーは最高の曲をパフォームしてくれる「友達の中のヒーロー」みたいな存在なのだと思う。その温度感があるからこそ、アンコールに登場したヨシダの「やりたいことはいつからでもできる!」という、遅れてやってきたニューカマーとしてのメッセージにも、一切押し付けがましさがない。なんならちょっと笑ってもいい雰囲気だ。が、メンバーのキャラもいろいろ。モリタは割と真面目に「いろんなとこで俺らをニューカマーって言ってるけど、俺らの歳知ってんのかな? 28でバンド始めたのに」と訝しみつつ、「いくつかた始めても遅くないって、俺らを見て笑いながら、そう思ってくれたらいい」と言う。ドラムのオオイナオユキは「このステージに立ってるドラマーで多分、一番下手だと思うけど、ここからもコツコツやっていくんでよろしく」と、初MCでこのバンドが愛される芯の部分を垣間見せた。
アンコールの演奏を始める前に自主企画『MAKE!TAG!NIGHT!!! vol.2』の開催を宣言。Tempalayの出演に沸くフロア、そして「もう一組、tが頭文字のバンドは誰だと思う?」と振ると口々にtricotやteto、中には受け狙いかティーンエイジ・ファンクラブ! と言う声も。笑いのリテラシーはかなり高い。

アッパーな「GET UP」などでさらにパーティームードを高め、3曲プレイしてもまだ起こるアンコールを受け、ダブルアンコールにはぐっと2本のギターの役割が曲の甘酸っぱさを際立たせる演奏になった「Orange juice」が披露され、ファイナルという名の宴は終了。

アメリカ映画のハイスクールの体育館のライブを疑似体験するようなーー初めてバンドの音楽で踊ったり、仲間のバンドを冷やかしたり応援したりする楽しさ。いつからだって遅くないのは、お客さんも同様なのだ。

【撮影:元】
【取材・文:石角友香】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TENDOUJI

リリース情報

FABBY CLUB

FABBY CLUB

2018年11月14日

PCI MUSIC

1.Killing Heads
2.Something
3.Peace Bomb
4.Garden
5.SALV.

お知らせ

■ライブ情報

GROUND OF KIDZ
02/09(土)大阪BIG CAT

machioto 2019 02/10(日)岡山サーキットイベント

MASHUP SPRING
03/10(日)仙台darwin

FINLANDS ツーマンツアー「UTOPIA TOUR」
03/15(金)福岡Queblick  出演決定!

TENJIN ONTAQ 2019
03/16(土)~17(日)天神サーキットイベント

HAPPY JACK 2019
03/16(土)~17(日)熊本サーキットイベント

IMAIKE GO NOW 2019
03/23(土)~24(日)名古屋・今池サーキットイベント

サヌキロックコロシアム 2019
03/23(土)~24(日)高松サーキットイベント

Talking Rock! presents
「ニューロック計画!2019」

04/06(土)梅田TRAD

「MAKE!TAG!NIGHT!!!」vol.2
04/21(日)キネマ倶楽部

VIVA LA ROCK 2019
05/04(土)さいたまスーパーアリーナ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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