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東京カランコロン、SAKANAMON、マカロニえんぴつらが所属レーベルの『TALTOナイト2019』をレポート

TALTO | 2019.02.27

 TALTOなんてお菓子っぽい名だけど、その実、集まっているのは「鍋」っぽいバンドばかりなんだよなぁ…。と、毎年このイベントを観る度に想う。いやいや、この場合の「鍋」は誉め言葉。思いついたアイデアやテクニックという各素材を、とりあえず音楽という鍋に突っ込みグツグツ煮込む。そのうち出汁(だし)が出、味が染みこみ、結果、“なんじゃこりゃ!?”な美味へと辿り着く。灰汁(あく)さえも隠し味に、絶品な旨味へと仕上げてきたそのバンドたちは、他では絶対に真似のできない独特の味を誇っている。

 2016年に発足。東京カランコロンのリリースを皮切りに、マカロニえんぴつ、SAKANAMONと所属&カタログを増やしてきたTALTO。今年創立3周年を迎えた個性的なアーティストを抱えるロックレーベルだ。2017年よりそのレーベルイベントを毎年行ってきた、このTALTO。2017年のバンド/アコースティックの2部構成を含め4度目となる同イベントのツアーが今年も行われた。

 2月8日の名古屋 CLUB UPSET、2月9日の大阪 Music Club JANUS、そしてこの2月16日には同レーベルの聖地・渋谷 eggmanにて行われた同ツアー。そんな今年のトピックはやはりスプリットシングルのリリースにつきる。レーベル初の試みとなった同作品は、3バンドによるオリジナルコラボ曲「TALTOのレシピ」を始め、各バンドがカバーを1曲づつ収録したもの。そしてこの日は、彼らのオリジナル楽曲はもとより、そこでカバーされた本家の楽曲たち&相手バンドへのカバー曲をお互い、さもオリジナルであるかのような体でのアレンジやオリジナリティを交え放ち合っていたのも印象深い。そのファイナルとなった渋谷eggmanは、以下のような様相を魅せたのであった。

【東京カランコロン】
 各会場毎に出番を変えてきた今回のツアー。東京での一番手は東京カランコロンだった。SEに乗り嬉しそうに現れた5人。1曲目の「ユートピア」の長いイントロが高揚感を煽り、同曲に入った際の起爆が早くも場内に一体感をもたらしていく。「楽しんでいこう!」といちろー(Vo&Gt)。サビでのストレートさが会場をここではないどこかへと誘い、間の幻想性も交えたブリッジと、それを超えた後のおいたんのエモいギターソロが会場をグッと引き寄せていく。加え、彼ら特有の男女ボーカルのリレーションやユニゾン、ハーモニーは今日も健在だ。続く「恋のマシンガン」ではいちろーもモジュレータを起用。ニューウェーヴさを楽曲に寄与していく。せんせい(Vo&Key)の明るい歌声も伸びやかに広がっていった同曲。佐藤全部(Ba)と、かみむー氏(Dr)のリズム隊によるグルーヴィさと、そこを抜け現れるストレートさがたまらない。続く「MUDDY」では対照的に抜き差しと少ない音数にて場内をたゆたわせる。とは言えしっかりとグルーヴィさは保たれ、が故に上に乗る男女混声のツインボーカルも映えていく。

「こんなに観に来てくれるなんて、TALTOはいいバンドばかりのレーベルという証。熱い繋がりを大事にし、自分の音楽を信じている者たちばかり」と、いちろー。続いては「TALTOのレシピ」でSAKANAMONもカバーした「321で」。突っこみ気味の同曲ながら魅力はサビでの天空まで一気に引き上げてくれるところ。それらはこの日も格別な景色と心地良さを味あわせてくれた。続く「ラブミーテンダー」は、イキそうであえてイキ切らない面もポイント。会場をグイグイ惹き込み浸らせていく。

「大好きなマカロニちゃんをカバーさせてもらった」(いちろー)と「洗濯機と君とラヂオ」に入ると、本家以上にボトムがしっかりとしてグルーヴィ。男女混声の面目躍如と手だれたバンドだからこそ生み出せる起爆力の魅力を打ち出し、ラストは「ビビディバビディ」。情報の詰まった歌とそこを抜けた開放感。16ビートと4つ打ちの上昇感のあるサウンドでしっかりと踊らさせてもらった。

【SAKANAMON】
「いくぞ渋谷!」とは森野光晴(Ba)。この日2番手のSAKANAMONは、プリセットされたキラキラなエレクトロな電子音を交えた「マジックアワー」でのっけからライブを走り出させていく。さらに加速度を上げるように長いイントロ経て「幼気な少女」が現れると、そのストレートなサウンドと共に場内が景色の良い場所へと誘われていく。サビで現れるカタルシスがたまらない。

「お肉大好きSAKANAMONです」と藤森元生(Vo&Gt)が挨拶。「オリジナルよりより良い曲にしたかった」と続け、先ほどカランコロンも演った彼らのナンバー「321で」のカバーへ。同曲では3ピースバンドならではのソリッドさが味わえ、グルーヴィさもサビでの現れるエモさもしっかりと堪能させてもらった。続く「UMA」ではファンキーなギターカッティングと共に躍動感が呼び込まれ、間にはジャジーさやボサノバ、はたまたドラムンベースを交え彼らの器用さやアイデアの宝庫っぷりが味わえた。

また、マカロニえんぴつがカバーした「ロックバンド」では藤森によるギターソロも炸裂。更に会場中が抱えている「つまんねえ」を一緒に吐き出してくれた「TSUMANNE」では、会場中が「つまんねえよ」を絶叫し、連呼。かなりスッキリさせてもらった。そして、ラストは彼らの10周年のテーマ曲とも言える「箱人間」が。かつての「いまいましい」の代わりに、「こんにゃろ、愛してる!!」の気持ちを、あえてとぼとぼとさせた、しかし前向きな気持ちに置き換え、でも進んでいくしかないとの覚悟と決意がキラキラした同期音も交え伝えられた。最後はそれらを振り切るように走り、狭い会場いっぱいに同曲が広がっていくのを感じたのと同時に、これからも「いつかは売れるために」力強く進みゆく彼らの誇らしげな雄姿を見た。

【マカロニえんぴつ】
「緊張するので先輩のプレイは見なかった」とはっとり(Vo&Gt)。トリはマカロニえんぴつが務めた。そんなはっとりの「東京~!」のシャウトから入ったこの日。1曲目の「鳴らせ」にて、のっけから上昇感を募らせていく。「こんなモンじゃねぇだろ!」と煽るはっとり。その直後に突入したサビでの更なる上昇感がみなをここではないどこかへと連れ出す。長谷川大喜(Key)による鍵盤とはっとりの歌から「girl my friend」へ。後にそこにバンドサウンドが融合すると、同曲に宿された生命力がブワッと広がっていく。田辺由明(Gt)も短いながら景色感あふれるギターソロをプレイ。楽曲のラストに向けバンド全体が昇華を始める。

「TALTOのバンドは好きなことをふざけながら楽しんでやっている方々ばかり」とははっとり。中盤は新作『LiKE』からの曲が続いた。《あたしを掬って食べて》《あたしを潰して舐めて》と「ブルーベリー・ナイツ」が切なさと愛しさを交え、楽曲を会場広く届ければ、続く「STAY with ME」では、作品での打ち込み的な無機質エレクトロを人力で再演。作品とは対照的にロックバンド的なアプローチと熱さやグルーヴ感が楽しめた。加え注目は作品とは違ったエンディングに嬉しい発見もあった。

「大好きな曲なので自分のものにしたく、かなりイジってしまった(笑)」と愛と敬意を込めてSAKANAMONの「ロックバンド」のカバーへ。彼らなりの楽しさや弾んだ感じをあえてデフォルメ。独特の琉球旋律も広がっていく。続いては本家の「洗濯機と君とラヂオ」が。いつもよりアッパー且つ躍動的にこの日は感じた。

最後は「あなたたちがいるからいい音楽を生める。これからも頼ってくれるのと同時に、僕らもみなさんに頼らせて下さい」と「レモンパイ」へ。触れたいけど触れたら終わってしまう。でも触りたい…そんな悶々とした気持ちが爽やかな楽曲にブレンドされて場内の隅々にまで染み渡っていくのを見た。

アンコールでは出演者全員にて「TALTOのレシピ」が歌われた。1番をはっとりが歌い、2番をいちろーとせんせいが、また3番は藤森が順に歌い、各位自分の番では自身の常套フレーズやサウンドの特性をあえて交えていく。会場全体でワイパーを作り出し、最後は会場を交えての大ハミング大会。ステージも会場も無関係に楽しそうな様相を見せ、この日のライヴは大団円を迎えた。

やはり今年も奴らはTALTOと名乗りながらも、まぎれもなく鍋だった。そして、それは集まった同レーベルのファンやオーディエンスたちも然り。結局、口をハフハフさせながら、汗が出てもへっちゃら。大きな口を開けて、次から次へとその素材たちを楽しんで身に入れている。そして、今年もいかにも満腹そうに上気した顔で、身も心も温かな気持ちになって会場を出ていく多くの姿があった。それらを見るにつけ、やはり彼らの場合はTALTOではなく、「鍋」の方がお似合いなんだよなぁ…と強く思った。

【撮影:DisukeSakai】
【取材・文:池田スカオ和宏】

tag一覧 ライブ 東京カランコロン SAKANAMON マカロニえんぴつ

お知らせ

■ライブ情報

東京カランコロン
ワンマ ん?ツアー〜カランコロン × カランコロン〜
03/02(土)広島BACK BEAT
03/03(日)福岡Queblick
03/09(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
03/20(水)仙台enn3rd
03/30(土)名古屋アポロベイス
03/31(日)大阪JANUS
04/19(金)渋谷eggman



SAKANAMON
SAKANAMON THE UPDATE TOUR 〜BUDDY→Victor→TALTO〜
03/08(金)大阪TRAD
03/09(土)名古屋UPSET
03/14(木)高松TOONICE
03/16(土)広島Cave-be
03/17(日)福岡INSA
03/21(木)仙台enn2nd
03/23(土)札幌Crazy Monkey
03/29(金)金沢vanvanV4
03/30(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
04/07(日)マイナビ赤坂BLITZ



マカロニえんぴつ
マカロックツアーvol.7
~ライクからラヴへ、恋の直球ド真ん中ストライク初全国ワンマン篇~

03/30(土)広島BACK BEAT
03/31(日)福岡 Queblick
04/05(金)金沢 vanvanV4
04/06(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
04/12(金)札幌 COLONY
04/14(日)仙台 enn2nd
04/20(土)名古屋 APOLLO BASE
04/21(日)大阪 MUSIC club JANUS
04/23(火)高松 TOONICE
05/12(日)東京 LIQUIDROOM

~ライクからラヴへ、恋の直球ド真ん中ストライク初全国ワンマン東阪緊急登板!篇~
04/25(木)渋谷WWWX
04/29(祝月)大阪Music Club JANUS

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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