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Ivy to Fraudulent Game 全国ワンマンツアー『Carpe Diem"Tour』新木場スタジオコースト

Ivy to Fraudulent Game | 2019.03.18

 開演時間を迎えて暗転した会場内。オープニングムービーが流れる中、薄暗いステージ上をゆっくりと歩いて大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)が、各々の立ち位置へと向かうのが見えた。そして、最後に寺口宣明(G・Vo)が登場。拍手が起こった直後、まさしく「固唾を飲んで見守る」という表現がふさわしい、少し緊張感も含んだ空気が広がった。

 福島のドラムが先陣を切り、すぐに他の楽器も合流してスタートした「dulcet」。ドリーミーな音像の艶めかしい揺らぎが心地好い。メロディ、ハーモニー、リズムだけでなく、残響、4人の息遣い、気配なども駆使して、美しい空間を作り上げるIvy to Fraudulent Gameの音楽を、こうしてライブの現場で体感すると、いつもとても贅沢な気持ちになる。続いて「Utopia」と「水泡」も披露された段階で、会場全体が完全にこのバンドの色に染まっているのを感じた。

「吸い込まれるくらい気持ちいいです。よく来たね。」と言って、男性客の歓声を浴びた寺口。冒頭ではどこか張りつめたムードだったわけだが、この時点で独得な和やかさが生まれていた気がする。そして、「!」を皮切りに、このバンドの多彩な魅力が、さらに開花していった。寺口の作詞作曲であり、福島が手掛ける曲とは趣きの異なるポップチューンとしての風味を漂わせていた「Sunday afternoon」。イントロの演奏中に「どっちが楽しめるか勝負しようぜ」と寺口が言って、観客をダイナミックに巻き込んでいった「劣等」。サウンドとライティングの絶妙なシンクロによって、生々しい空間が作り上げられた「Parallel」。胸に沁みるメロディがじっくりと響き渡った「徒労」。暴徒をアジテートするかのような攻撃性がギラついていた「E.G.B.A.」……などなど、様々な形の興奮が湧き起る場面の連続であった。

「青写真」「アイドル」「道化の涙」が披露された後に迎えたインターバル。「なんかめちゃくちゃ幸せです。言葉は要らないくらい。こんなに自由になれて……。ある意味、駄目な部分も出てて(笑)」。寺口はフロアにいる観客を眺めながら笑顔を浮かべた。そして、チケットがソールドアウトしなかったことに対する悔しさはありつつも、その捉え方が変化している旨を語った後の言葉が、とても印象的だった。「今までの俺は悔しくて、“明るい未来に行くためにはどうしよう?”って、明日からのことをすごく考えてた気がする。だけど、このツアーで“これが正解じゃないの?”って思ったことがあって。やっぱり今日だよね。“今日、どうやってもがくか?”ってこと。前よりもメンバーとすごく話し合ったり、くだらないことも話すようになりました。今まではメンバーに寄り添うのが怖かったんです。まだまだなのにムードを柔らかくすると駄目だと思ってた。俺の今年の目標は“当たり前のことを当たり前に伝えられる人になりたい”っていうこと。そう言ったからには一番近くにいるやつにちゃんと伝えなきゃいけないなと。このツアー、ほんとにいいツアーで。それがみんなにも伝わってるかな? 今までのIvyとちょっと違うと思わないかい?」。寺口が問いかけると、観客の間から拍手が起こった。

「このIvyを嫌だと思う人もいるかもしれないけど。でも、今の俺たちが出した答えが、このステージです。本当の意味で革命を起こせるんじゃないかと今、思ってます。革命は今日から起こそうぜ! みんなで歌おう!」。この言葉と共に演奏へと雪崩れ込んだ「革命」は、観客の大合唱に彩られていた。そして、「Memento Mori」も感動的だった。“死”を見つめる中で自ずと浮き彫りにされる“生”を描いているのがこの曲だが、観客の手拍子が瑞々しい生命力を示していたのが、余程嬉しかったのだろう。演奏のエンディング間際に寺口が「君たちが俺たちの誇りです! ありがとう!」と言っていたのが印象的だった。

「こんなに幸せでいいのかな? そんな恥ずかしいことを思ってしまうくらい、今日は“やっててよかったな”と思っています」と、感慨深そうにしていた寺口。「俺たちの音楽がみなさんの心に触れているんだったら、ずっと俺たちはやりますので、ずっと居場所にしていてください」という言葉は、観客の心を動かしているのを感じた。そして、本編の最後に届けられたのは、寺口が20歳の時に作詞作曲をした「低迷」。このバンドのメインソングライターである福島の才能に敬服しているからこそ自分を追い詰めて、精神的に疲弊してしまった当時の彼は、音楽をやめたいと思うようになって、部屋に引きこもる日々を送っていたのだという。しかし、音楽に対する気持ちを取り戻して作ったのが「低迷」。そういう経緯で生まれた曲を、こうして今日に辿り着いたIvy to Fraudulent Gameで演奏できることを、寺口は心から幸せに思っていたのだろう。何かとても温かで瑞々しい想いが伝わってくる歌であった。

 メンバー同士で和気あいあいとツアーの思い出を語り合った後、アンコールの1曲目に届けた「trot」では、演奏がすぐにストップするというアクシデントが起こった。大島の手が突然つってしまったのだ。メンバーたちに心配される中、掌をもみほぐした彼は、ギターを試しに鳴らして回復したことを宣言。そして、仕切り直されたこの曲は、観客の激しい興奮を誘っていた。

 歓声に応えて行われたダブルアンコールは、「故郷」を披露するという案もあったようだが、大島の手のコンディションを考慮して変更したらしい。「今からやる曲は、つい最近まで俺たちのことを苦しめてきた曲でもあります。でも、このツアーでやっと心から革命を起こせるんじゃないかと思いました!」という言葉を添えて届けられたのは、本編でも演奏した「革命」。先程よりもリラックスした様子で演奏、歌っていたメンバーたちの姿が、とてもまぶしかった。「最高のツアーファイナルでした。みんなありがとう。愛してるぜ! ずっと俺たちの音楽を居場所にしてくれよな!」と寺口が叫んで演奏が終了した瞬間、観客は感極まった様子で一斉に拍手。爽やかな昂揚感が広がるエンディングであった。

【取材・文:田中 大】
【撮影:Yusuke Satou】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Ivy to Fraudulent Game

セットリスト

“Carpe Diem” Tour
2019.3.10@新木場STUDIO COAST

  1. 1.dulcet
  2. 2.Utopia
  3. 3.水泡
  4. 4.!
  5. 5.Sunday afternoon
  6. 6.劣等
  7. 7.error
  8. 8.Dear,Fate
  9. 9.she see sea
  10. 10.Parallel
  11. 11.徒労
  12. 12.仮面
  13. 13.E.G.B.A.
  14. 14.青写真
  15. 15.アイドル
  16. 16.道化の涙
  17. 17.革命
  18. 18.Memento Mori
  19. 19.低迷
  20. 【ENCORE】
  21. EN-1.trot
  22. EN-2.革命

お知らせ

■ライブ情報

Hand In Hand Tour 2019
04/12(金)なんばHatch

MAGIC OF LiFE presents DON’T STOP MUSIC FES.TOCHIGI 2019
04/14(日)栃木市栃木文化会館・大ホール

I ROCKS 2019 stand by LACCO TOWER
06/09(日)群馬音楽センター

TAGO STUDIO TAKASAKI MUSIC FESTIVAL2019
06/16(日)高崎アリーナ

ユアネス Live Tour 2019「Select」
06/23(日)広島 CAVE-BE

Ivy to Fraudulent Game Concept Live
07/24(水)恵比寿ザ・ガーデンホール
07/31(水)大阪umeda TRAD

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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