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Attractions 1stアルバム『DISTANSE』リリースツアー初日Shibuya O-nest

Attractions | 2019.04.08

「福岡から世界へ」という旗印を掲げ活動を展開している4人組、Attractions。昨年12月にリリースされたファーストアルバム『DISTANCE』を引っさげてのリリースツアー初日、東京・Shibuya O-nestでのワンマンライブは、バンドの類まれなセンスとファミリアなキャラクター、そして洒脱なサウンドの裏に潜む熱い思いが交差する印象的な一夜となった。小さなライブハウスでの公演ではあるが、そのパフォーマンスが描き出す風景はそのスケールにとどまるものではまったくなく、Attractionsがこれから突き進んでいくであろう道が目の前に広がっていくようなライブだった。その模様をレポートする。

 ライブハウスのスタッフの「一歩前に詰めてください!」というアナウンスが、このライブへの注目度の高さをうかがわせる。フロアは後から後から増えていく人でパンパン、熱気が充満するなか、SEとともにTAKE(G)、JUN(B)、AKIRA(Dr)にサポートメンバーのNANA(Key)を加えた5人がステージに登場。いきなりドープなジャムセッションを始めるなか、いよいよTARO(Vo)が現れて「Attractionsです、よろしく!」と一言告げると、「Twilight」からショウがスタートする。リズムを全身で感じながら歌うTARO、そしてそんなTAROを見ながら音を重ねていくバンドメンバー。リラックスした雰囲気と緊張感が入り交じるなか、2曲目で早くもポップなメロディが弾ける「Leilah」を投下すると、フロアからも声が上がる。TAKEのギターソロも決まり、TAROも笑顔を見せる。続けて太いベースラインに体が自然と動き出すディスコナンバー「Hazy Boy」へ。O-nestが妖しげなダンスフロアへと姿を変えていく。

 ブラックミュージックを基調としたサウンド、そしてバイリンガルであるTAROのスムースな英語の発音、抑揚の効いた「オトナ」なTAKEのギタープレイなど、その手触りだけを取り出せば、Attractionsの音楽は洗練の極みのようなモダンなフォルムをもったものだ。実際メンバーはおしゃれだし、そのサウンドにおいてトレンドとのリンク感が重要であることも間違いない。だが現場でライブを観ていて感じるのは、もっと泥臭くてウェットな、バンドとして成り上がっていく「ロマン」みたいなものだったりする。

 この日もMCでドラムのAKIRAがグッズを持ってきすぎて売れないと車に乗れないので買ってください!と身も蓋もないことを言っていたり、そのAKIRA、ライブ終盤で気合いがこもりすぎたのかバスドラのキックペダルを壊しちゃったりもしていたが、そういう、洗練とかおしゃれとかでは語りきれない「はみ出した」部分、ロックバンドとしての人間臭くて熱い部分にこそ、僕はこのバンドの魅力を感じる。そしてその魅力をもっとも体現しているのが、ヴォーカルのTAROだ。

「Rock’n the Weekend」のうねるリズムを乗りこなすセンス、「Polyester Honey」のようなメロウなナンバーで醸し出す情感、Attractionsのレパートリーのなかでもひときわアンセミックな響きをもつ「KNOCK AWAY」でオーディエンスを巻き込んでいこうとする意志、そしてMCで若干のたどたどしさも見せながら真摯に思いを伝えようとする姿。この日のライブでも場面場面でTAROという人間を垣間見ることができた。彼はアルバムタイトルの『DISTANCE』について「みんなとの距離を詰めていきたい」ということを言っていたが、その言葉を待たずとも、ステージ上での彼は、その思いを具現化していたように思う。というか、やっぱりこいつはものすごく僕らと近いところで歌っているヴォーカリストなんだな、と繰り返し実感するような瞬間がいくつもあった。おそらく集まったファンもそんな彼のキャラクターをよく理解していて、だからこの日のフロアには「今イケてるバンドを観ておこう」というスノッブな空気は皆無だった。ファンというよりもサポーターのような視線をステージに注ぐファンたちは、カラフルなライトを浴びるメンバーに、やはりロマンを投影していたのだと思う。

 終盤、アルバム中でも異色の疾走感あふれるギターロックチューン「Future」で文字通り未来へ突き進むスピードを表現すると、本編ラストナンバーである「Daydream Moonrise」へ。この曲が圧巻だった。アルバムでもトリを飾っているこの曲が描き出すスケールは、O-nestというライブハウスのサイズをはるかに超えるものだったと思う。打ち鳴らされるドラム、ぐんぐんと広がっていくようなギターサウンドに、シンプルにシンガロングを誘うメロディ。スタジアムとかで鳴ったら気持ちいいだろうなあというイメージが、かなり具体的に脳裏に浮かぶ。

 アンコールでは新曲(これ、本当に新鮮でパワフルないい曲!)もまじえて3曲を披露。最後に演奏されたのは「Escapist」だった。どっしりとしたミドルテンポの序盤から、どんどん加速していくこの曲は、まるで滑走路を走る飛行機のよう。今まさにトップスピードで飛び立とうとするAttractionsの姿を象徴していた。終わってみれば、持ち曲のほぼ全部を注ぎ込み、1時間半弱。今の彼らのすべてが刻み込まれたライブとなった。もちろん課題はたくさんあるし、この日がパーフェクトな出来だったとは言えないだろうが、それでも、このバンドを早くデカいところで観たい、と思わせた時点でAttractionsの勝ち。あの場所にいた誰もが、始まったばかりのストーリーに自分を重ねながら帰っていったはずだ。ちなみに、AKIRAのMCのかいもあって、終演後の物販コーナーには長蛇の列。メンバーはスペースの空いた車に乗り込み、翌日のライブのため大阪に向かっていった。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER) 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Attractions

リリース情報

DISTANCE

DISTANCE

2018年12月05日

GIMMICK MAGIC

01.DISTANCE (Introduction)
02.Hazy Boy
03.Rock’n the Weekend
04.Future
05.One Answer
06.Carbon Love
07.Leilah
08.Blue/Pillow
09.Instant Jam
10.Daydream Moonrise

セットリスト

DISTANCE RELEASE TOUR
2019.3.14@TSUTAYA O-nest

  1. 1.Twilight
  2. 2.Leilah
  3. 3.Hazy Boy
  4. 4.Rock’n theWeekend
  5. 5.Baby Relax
  6. 6.Carbon Love
  7. 7.Polyester Honey
  8. 8.One Answer
  9. 9.Instant Jam
  10. 10.Knock Away
  11. 11.Future
  12. 12.DaydreamMoonrise
  13. 【ENCORE】
  14. EN-1.Blue / Pillow
  15. EN-2.新曲(タイトル未定)
  16. EN-3.Escapist

お知らせ

■ライブ情報

GROWLY 7th Anniversary!! ” TRY-ANGLE “
04/19(金)京都GROWLY

ONE PARK FESTIVAL
07/06(土)-07(日)福井市中央公園特設ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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