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Maison book girl、人見記念講堂でのワンマンライブで新曲&ツアーを発表

Maison book girl | 2019.04.26

 ステージの背景となっている白いスクリーンに『Solitude HOTEL 7F』という文字が映し出されていて、BGMが静かに流れていた昭和女子大学・人見記念講堂。Maison book girlのワンマンライブは、いつも開演前から独特だ。先ほどまで歩いていた街、自分が属していたはずの日常から離れた世界へと足を踏み入れたことを本能的に察知せざるを得ないムードが漂っている。それは「これから何が始まるんだろう?」というワクワクでありつつ、“怖い”という感覚にも近い甘美な違和感も含んでいるのだ。周りの観客も私と同様の想いを噛み締めていたのではないだろうか。柔らかい座席に身を落ちつけている人々の何処か夢見心地の様子も、開演前のこのホールを早くも包んでいた非日常感を加速する素敵な要素となっているのを感じた。

 暗転して鳴り響いたSE。ステージの天井から垂れ下がった4本の細い赤い布が目を引いた。ライティングによって布の表面を液体が滴り落ちているようにも見えた様は、まるで血管や内臓のよう。「なんだか巨大な鯨の身体の中みたいな空間だな」というようなことを思っていると、ステージの下手袖から矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミがゆっくりと歩きながら現れた。そして、彼女たちが歌い始めたのは「長い夜が明けて」。舞踏会のように優雅に踊る場面が盛り込まれていて、綺麗なメロディが広がるこの曲だが、堪らないほど悲しげでもある。翳を帯びたおとぎ話の世界を目の当たりにしているような気もしてくる幻想的なオープニングであった。

 1曲目が終わり、スクリーン上に現れた鳥のアニメーションが、「これは本の家の少女たちの話。狭い部屋で首の無い鳥が……」と語り始めた。頭部、両翼、足が一体となった“首だけの鳥”は、ブクガの最新曲「鯨工場」の中に登場し、過去の曲である「レインコートと首の無い鳥」との繋がりをリスナーに想像させる要素にもなっているが、このライブでは語り部の役ということなのだろう。「狭い物語」「レインコートと首の無い鳥」「rooms」「十六歳」「faithlessness」……様々な曲が披露されていった中、時折登場した首だけの鳥は、このライブのセットリスト、構成の背景にあるのだと思われる設定、背景、ストーリーをその後も我々に示唆してくれた。

 Maison book girl、通称ブクガの4人によるパフォーマンス、鳴り響いたサウンド、多彩に変化したライティングや映像が生み出した空間の圧倒的な美しさも、このライブの特筆すべき点だった。個人的な筆者の感情を綴るのを一瞬許してもらうならば……わめき散らしたいくらいに興奮してしまったのが、中盤で披露された「karma」だ。背景のスクリーン上を飛び交った光のノイズ、狂って乱舞するかのようなピアノの旋律に包まれながら歌っていた4人が、とても眩しくてドラマチックだった。彼女たちはこの曲を2年以上に亘って歌い続けてきているが、ライブを重ねる毎に完成度を増しているのを感じる。現在のブクガが掴んでいる豊かな表現力を如実に示していると同時に、今後も華麗な進化を遂げることが期待できる重要な曲の1つが、この「karma」だと思う。

 矢川が掛け声を上げつつ煽り、椅子に座って大人しく観賞するムードとなっていた観客を自然に和ませた「snowirony」を皮切りに「bathroom」「lostage」「cloudyirony」「sin morning」……エネルギッシュなタイプの曲が連発された直後の「言選り」は、想像を猛烈に掻き立ててくれるひと時となった。背景のスクリーンでは過去のライブ映像が流れ、その前でパフォーマンスを繰り広げた4人。やがて映像は踊る4人の残像のようなものへと変化していった。ステージに“現在”の矢川、井上、和田、コショージが存在して、その背後で分身した残像が動き続けている様は、「時間という概念を可視化しているのでは?」という解釈を誘ってくれたことが、この文章を書きながら改めて思い出される。そういえばこの曲は、“過去との対話”や“タイムトラベル”をイメージさせる歌詞や振付が盛り込まれているが、映像とリンクしたことによって、「それらの要素がより立体的に示されたのでは?」そんな妄想を自由に膨らますことができるのも、ブクガのライブの楽しさだ。

 スクリーンに向かって手を振った4人/スクリーンの中から客席に向かって手を振った4人――向かい合わせとなった実像と映像同士をリンクさせた演出、パフォーマンスが印象的だった「おかえりさよなら」。そして、その後に届けられた「夢」でも、予想外の展開が待っていた。寝そべった彼女たちが順番に目覚めて歌い始めた場面を経て広がった瑞々しいメロディを突然覆い尽くしたのが、立ち込めた大量の白いスモーク。ステージは全く見えなくなってしまったのだが、再び露わになった時、姿を消していた4人……突然の出来事に驚きながらアウトロに耳を傾けていると、このライブの序盤でも登場したあの4本の赤い布がまた垂れ下がっているのに気づいた。

 このような場面の後にスタートした本編ラストの曲「鯨工場」も、聴覚と視覚の両方を目一杯に刺激してくれるものとなっていた。ステージの最上部とホールの天井の間にある広い壁に赤色のインクが渦巻く様が投影され、赤い布を伝いながらゆっくりとステージに向かって流れていった演出は、このレポートの最初の辺りで書いた“巨大な鯨の身体の中みたいな空間”という印象を一層加速するものとなっていた。スケールの大きい絵画のような様相を呈したステージで歌い終えた彼女たちは、客席に向かって深々とお辞儀。4人を讃える激しい拍手と歓声が観客の間から一斉に沸き起こった。

 アンコールで最初に披露されたのは、ポエトリーリーディング「まんげつのよるに」。これまでの彼女たちのポエトリーリーディングは、4人が横並びに立って行われることが多かったと記憶しているが、フォーメーションを変化させ続けていたのが目を引いた。終盤に差し掛かり、激しい感情をこめて朗読しながら床に座り込んだコショージ。矢川、井上、和田が彼女に寄り添い、穏やかなトーンのエンディングへと辿り着いた様は、一幕物の演劇のようであった。そして、ラストを飾ったのは「長い夜が明けて」。本編の幕開けでも歌ったこの曲だが、全く別の表情を浮かべていた。終盤の部分で声を全力で張り上げながら歌っていた4人の姿が、とにかく鮮烈だったと言う他ない。どちらかといえば感情を抑制しながら表現することが多かったのが、これまでのブクガだが、2回目の披露となった「長い夜が明けて」にはそれとは異なる何かが漂っていた。これはもしかしたら、今後の彼女たちに繋がっていくものなのかもしれない。

 全曲を披露し終えると、ステージを後にした4人。映像の入力が終了して鮮やかなブルーに染まったスクリーンには、今後の活動予定が映し出された。ニューシングル「そして宇宙の宿り(仮)」を7月にリリース。6月から7月にかけて『Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019』――ブクガの力強い前進まだまだ続く。現在の彼女たちについて、とにかく断言できるのは、“こんなダンス、音楽、空間を体感させてくれる存在は、他にはいない!”ということだ。観客の聴覚を悦ばせる音楽のライブであるのは勿論なのだが、視覚の他、触覚、嗅覚、味覚すらも震える気がしてくるブクガのライブは、演劇、アミューズメントパーク、絵画、造形の要素すらも含んでいる。少しでも興味を持った人は、機会を見つけてライブに足を運んだ方がいい。今までに味わったことのない刺激を体験できるはずだ。

【VJ / Planner: YAVAO】
【Video Editor (of “snow irony”): 羽賀優天】
【Liquid Lighting: ハラタアツシ】
【Laser: YAMAGE】
【Executive Director: としくに】
【撮影: 稲垣謙一】
【取材・文:田中大】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル Maison book girl

リリース情報

SOUP

SOUP

2019年04月03日

ポニーキャニオン

1. 鯨工場
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場(instrumental)
5. 長い夜が明けて(instrumental)
6. まんげつのよるに(instrumental)

お知らせ

■ライブ情報

Maison book girl LIVE HOUSE TOUR 2019
06/01(土)北海道 KLUB COUNTER ACTION
06/07(金)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 2/3
06/08(土)福島 HIP SHOT JAPAN
06/23(日)新潟 GOLDEN PIGS
06/30(日)千葉 LIVE HOUSE ANGA
07/06(土)石川 金沢AZ
07/07(日)長野 MATSUMOTO ALECX
07/15(月)静岡 Sunash
07/28(日)沖縄 output

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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