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androp 『one-man live tour 2019 ”daily”』 東京公演をレポート

androp | 2019.06.27

 この代官山UNITを始め10年間。会場の大小様々に私はandropのライブを体感してきた。その中でも、この日は最も彼らが近く、そして「常に一緒に居る」「傍らに居る」ことを感じられた一夜でもあった。もちろんそれはライブハウスというステージとフロアとの近距離も手伝ってはいる。しかしそれ以上の親密感や親近感がこの日の同会場には育まれていた。

 これまでも同会場での彼らを幾度も観てきた。その中では同化や一体感も含め、もっと近くに感じられる楽曲や瞬間もあった。しかしそれはいずれも流れの中で現れるメリハリやコントラストでのこと。孤高性や隔たりのある曲を経てプレイされ、歌われてきたからこその映え(はえ)であった。しかしそれらとは明らかに異なった安堵感や帰着感を、この日の彼らからは終始感じることが出来た。

 定刻に場内が暗転。登場SEと共にステージ後方に配された青いライトが蛍火(ほたるび)のような幻想性を交えゆっくり点滅する。それらがフラッシュに変わり、メンバーとこの日のサポートキーボードの森谷優里がステージに現れる。

 オープニングは「Blue Nude」が飾った。驚いた。てっきり従来のように低温からバンドが生命力を加えていきダイナミズムへと至らせる。そんなバンドサウンド然としたオープニングを想像していたからだ。しかしこの日はラップトップのDAW性の高い音楽性から物語は始まった。だがそれ以上に驚いたのは、内澤崇仁(Vo.&G.)がギターを持たずにマイクスタンドを包み込むように握り歌う姿だ。これまでも内澤がギターを持たずに歌う場面を何度か見た。だがそれらはいずれも、その場の勢いや流れ、楽しさから、「ギターなんて持って歌ってらんない!!」、そんな衝動からがほとんどだった。しかしこの日の彼は違う。明確に<ギターを持たずに、ただ歌だけを届ける>そんな姿勢が伺えた。しかもこの曲のみならず、この日は各所でこうした彼のボーカリスト然とした歌の伝え方が見受けられた。

 DAWサウンドが徐々にバンドサウンドとの融合を見せ、進むにつれ差し変わっていくのも興味深かった、この「Blue Nude」。ポップなメロディと共に内澤の艶やかなボーカルが広がっていき、神秘性のあるコーラスが包み込むように暖かく楽曲をコーティングしていく。夜のとばりが降り、光が闇を染めていく。そんな情景が歌われた同曲を経て、夜明けへと場面を移したのは「For you」であった。ここでは前田恭介(B.)がカオシレーターを用い、バレアリックでトロピカルなサウンドを寄与していく。高揚感があるサウンドの上、♪届け 届け 想い乗せて♪とのメッセージも印象深かった。次曲の「MirrorDance」に入ると、ステージライトとパットのクラップ、そして会場のお客さんによるクラップとがシンクロ。高揚感と一体感、躍動感が会場に流れ込んでくる。また一転し、「Saturday Night Apollo」ではミラーボールも回り始め、シチュエーションはサタデーナイトへ。伊藤彬彦(Dr.)の生み出すハネたビートに、佐藤拓也(G.)が贈るウキウキするようなファンキーなギターカッティング。そしてファットで躍動感のある前田のベースが、刹那な感じやワンナイト感、そしてとろけるような至福感にて、「もうどなったっていいだろう?」と背徳感を伴い会場全体を優しく誘っていく。

 「このツアー中、ようやく土曜の夜にこの曲が演れた」とは佐藤。続けて、内澤が「今日はこのツアー始まって初の雨だけど、みんなで楽しいサタデーナイトにしましょう」とライブの深部へと誘う。

 ライブに戻る。ここからは黒っぽい要素やアダルティな雰囲気を含んだ楽曲たちが並んだ。軽快さが呼び込まれ会場も合わせてスウェイに身体を揺らした「Proust」が作品以上の軽やかさを場内に寄与し、会場中を甘く包めば、森谷のエレガントなピアノから始まった、軽いファンキーさとシティポップさを有した「Radio」では、内澤のファルセットボーカルも楽しめた。また、佐藤の情景感のあるギターソロも特徴的であった「Blanco」では、歌と爪弾きの間を埋める隙間の多い鳴り物も耳を惹き、そこに加わったバンドサウンドが物語も情景も一気にブワッと広げていく様を見た。

 「あっという間のいいツアーだった。当初はセットも短いかな…との懸念もあったが、各所みんなしゃべることも多く、逆に予想以上に長くなっていた。それだけこのツアーが楽しかったってことでしょう」と佐藤。また名古屋では、メンバーがハマっているサウナの話が出、「サウナの番組を持ちたい」との話をしていたところ、実際にサウナのラジオレギュラー番組がスタートする運びに至ったりと、「ものは言ってみるものだ(笑)」と続けて告げ、このツアー中、この日も含め前田以外は黒いシャツを着ていたのに対し、前田のみ徹底して白シャツだったことに言及。特に今日のハーフパンツ姿も踏まえ、「儲かってるツアーガイドみたい」と称する。対して前田も「なんでみんな地味な色を着るのか俺には理解できない」と返答。「前田が白を担当してくれて助かる」と伊藤がまとめる。それらを経た内澤からは、「アルバム『daily』の発売から半年。ようやくツアーファイナルを迎えられたこと」「同作品の楽曲たちがライブを経る毎に発見や分かったり、気づいたりすることが増え、ここにきて同作品を改めて俯瞰でき、理解できるようになったこと」そして、「今日はその集大成を伝えられたなと思っている」と、その胸中を伝える。

 そんな『daily』から贈られた「Canvas」では、変拍子も交えたビートを抜けて現れたサビが、パーっとした光を呼び込むのを見たし、より光に包まれている感を与えてくれた「Youth」では、佐藤のギターが秘めたエモさを醸し出し、歌われる、そっとずっと離さないでいくよ感が、よりギュっと抱き寄せられているように響いた。また、ラストに向かうにつれ躍動感を増させた「Nam(a)e」では、幻想性から始まり、とてつもないフィジカルな移行が味わえ、続く雄々しいアンセム的なコーラスが会場中に雄大に広がっていった「Singer」では、バックからの白色ライトも手伝い、楽曲が擁する神秘さと神々しさがより引き出されていった。

 「今日は特に早い気がする。今回は各地をより感じられるツアーだった」と佐藤。「このステージに立てているのは当たり前じゃない。それを噛み締めながら一本一本やってきた。 そんな人生の一瞬をみんなと共有できているのが嬉しい。今後もみんなの人生に寄り添ってもらえる歌を作りライブを行う」とツアーを振り返りつつも内澤が静かに秘めた宣誓を告げる。

 続いての「みんなの心に光が差すように」との思いが込められて放たれた「Hikari」では、ストリングスの音色も加わり、より生命力と謳歌性が増し、歌われる「一人じゃない」のフレーズがより尊く響いた。また、シティポップ風に変貌した「SOS!」では、アダルトさをまとった同曲が会場を左右にたゆたわせ、歌詞の一部を「UNIT」と変えて歌ってくれるサービスも。同曲では各人のソロも織り交ぜられ、見せ場が作られてはいったが、私が最も嬉しかったのは会場とのコール&レスポンスの場面であった。このような会場とのコミュニケーションは、これまでの彼らのライブの中でもあまり見られなかったシーンであったからだ。そこにもまたこれまでにない近さと親近感を覚えた。

 後半は盛り上がり且つ、これから訪れる夏へと想いを馳せさせる楽曲たちが連射された。「Prism」では、伊藤のフロアタムを交えたドラミングが生命力を育み、同曲がメッセージする明るい未来への信憑性を高めていけば、さらにそれを強固に信じさせてくれるように響いた「Voice」では前田もスラップを交え、会場も一緒にクラップと声を合わせた場面も想い出深い。また同じく一緒に声を合わせられる「Yeah! Yeah! Yeah!」では、梅雨空を乗り越えた夏空の訪れと解放感をみなが想起し、未来がグイグイ自身の下へと手繰り寄せられていくのを感じた。ラストは「恋は人を成長させる。自分たちは音楽に恋してきた」と内澤が告げ、「Koi」に。王道で正当なJ-POP然とした楽曲が会場中にダイナミズムを交え広がっていくのを見た。

 「ライブハウスっていいな。この距離感だからこそ伝わる空気感がいい」とはアンコールに応えて再度ステージに現れた内澤。アンコールは、「僕らの音楽はいつでもあなたの傍にいるので、何かあったら僕らの音楽を共有して欲しい」との想いが込められ「Home」が歌われた。いつまでも寄り添える音楽でありたいとの願いと誓いのような同曲が、帰着感と安堵感を伴い会場を優しく包んでいく。また進む為にも、今一度立ち戻らなくてはならない場所…。まさしく彼らが初めてワンマンを行った、その同会場であるこの代官山UNITで歌われたからこそ、より一層同曲が映えた気がした。と同時に、集まった各人にも自分にとっての「Home」のような「居場所」へと想いを馳せさせていった。

 ツアーを結ぶのがよほど名残惜しかったであろう。当初は用意されていなかったダブルアンコールにも応えてくれた彼ら。正真正銘の最後は、「あなたの素敵な明日に…」との願いを込めて「Hana」が満場に贈られた。しっかりと次へと進むための歌が種として場内に撒かれ、それがいつしかしっかりと根づき、素敵な花を開かせていくのを想起させた同曲。ふと周りを見ると、そこにはみんなのイキイキとした笑顔の花が一面に咲いていた。

 「また音楽で会いましょう」と、この日のライブ、そして今ツアーを結んだ内澤。誰もいなくなった場内に、やさしさに満ちたぬくもりだけがしばらくのあいだ残っていた。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:笹原清明】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル androp

リリース情報

Koi

Koi

2019年02月27日

ユニバーサルミュージックジャパン

01.Koi
02.For you

セットリスト

one-man live tour 2019 "daily"
2019.6.22@代官山UNIT

  1. 01.Blue Nude
  2. 02.For you
  3. 03.MirrorDance
  4. 04.Saturday Night Apollo
  5. 05.Proust
  6. 06.Radio
  7. 07.Blanco
  8. 08.Canvas
  9. 09.Youth
  10. 10.Nam(a)e
  11. 11.Singer
  12. 12.Hikari
  13. 13.SOS!
  14. 14.Prism
  15. 15.Voice
  16. 16.Yeah! Yeah! Yeah!
  17. 17.Koi
【ENCORE】
  1. 01.Home
【W ENCORE】
  1. 01.Hana

お知らせ

■ライブ情報

one-man live tour 2019
“angstrom 1.0 pm”

2019/09/07(土) 東京 LIQUIDROOM ebisu
2019/09/16(月・祝) 愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO
2019/09/23(月・祝) 大阪 BIGCAT

androp -10th. Anniversary live-
2020/01/11(土) 人見記念講堂
2020/01/12(日) 人見記念講堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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