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SANABAGUN. 「2013 - 2018」” White Black ”

SANABAGUN. | 2019.07.02

 SANABAGUN.はどこから来てどこへ行くのか。SANABAGUN.はどう変わってきたのか、あるいはどう変わっていないのか。どうしてSANABAGUN.みたいなバンドが後にも先にも他にいないのか。何にしても、SANABAGUN.という唯一無二のバンドの素晴らしさ、そして今の8人体制の最強っぷりを味わい尽くせる、最高の夜だった。

 そもそもの話をすると、このライブは昨年で結成5周年を迎えた彼らが、ディスコグラフィをアルバム2枚ごとに区切り、それぞれの楽曲を中心にパフォーマンスするマンスリーライブ「2013-2018」の1本目。「White Black」と題されたこの日は、最初期から路上販売されていた通称『白盤』と、初の全国流通盤である通称『黒盤』の収録曲で構成されるセットだ。

 開演前から興奮状態のフロアに、8人のメンバーが現れる。高岩遼(Vo)がドスの効いた声を響かせるブルースナンバー「フーチークーチーメン」からライブはスタートだ。大林亮三のベースラインに谷本大河のサックスと髙橋紘一のトランペットが淫靡に光るベルベットのようなアンサンブルを織りなしていく「Zo What」(『白盤』収録時は「HSU What」という曲名だった)、そして「SANABAGUN. Theme」からどす黒いグルーヴに歓声が上がった「M・S」へ。SANABGUN.のルーツの部分が色濃く出た初期楽曲群が、濃いファンが集まっているであろうフロアにボディブローをかましていく。

 高岩と岩間俊樹(MC)という、マイクを握るふたりのコントラスト、ジャズとヒップホップに裏打ちされながらも平気でボーダーラインを踏み越えていくバンドのセンス。5曲目「B-BOP」から展開していったライブの前半戦は、そんなサナバのオリジナリティをとことん見せつけるような構成に。『黒盤』収録曲の「DRIVER」「大渋滞」を立て続けに披露し、メンバーそれぞれのスキルだけでなく、コール&レスポンスに象徴されるフロアとの関係性すらエンターテインメントに仕立てていく。「もっと前に来い、もっと。遠慮しなくていいぜ、今日は」という高岩の言葉に続いて、SANABAGUN.で最初に作った曲だという「Stuck IN Traffick」へ。スキャットのようなヴォーカルを響かせる高岩、それをコーラスでサポートするオーディエンス。ビンビンに尖った空気が生まれたと思いきや、いきなり謎のオネエキャラで喋り出す岩間と高岩。このあたりの抜き差しもさすが百戦錬磨だ。

 「SANABAGUN.も新人のようでね、新人とも言っていられませんよ、令和に変わりまして。いろいろ歴史もあるので、ちょっと思い出話を……」という岩間の言葉から怪談調のイントロを経て「さっちゃん」へ。真っ暗になったステージで、フロントのふたりは懐中電灯で自ら顔を照らす。そして谷本のサックスが高らかに鳴り渡り、澤村一平のタイトなドラムから「DA インフルエンザ」へ。フロア一面のハンズアップが広がり、クラクラフラフラとフロアをのたうち回る高岩の姿に笑いが起きる。ハイクオリティな演奏技術と幅広い音楽の素養を惜しみなく楽曲に注ぎ込みながら、やっぱりSANABAGUN.の本質はどこまでも自由な遊びの延長であるというところにあるのだと、こういうシーンを見ていると実感する。

 そうこうしているうちに、「なんせ曲数もありませんから」(岩間)ということであっという間にライブも終盤へ。「始めてのワンマンライブの光景を思い出す」という言葉とともに演奏された「里」はエモーショナルな歌とトランペットの絡みが極上の雰囲気を演出し、「Warning」では今年加入した最年少のキーボーディスト大樋祐大の奏でる音が絶妙のアクセントとして機能する、まさに最新型のSANABAGUN.の姿をこれでもかと印象づけた。「路上ライブスタイル」(高岩)でのメンバー紹介ではフロアからもこの日いちばんの拍手と歓声が。「サナバガン」のコール&レスポンスがクアトロの壁をビリビリと震わせ、ここにきてボルテージを天井知らずに上げていく。確かに今回のマンスリーライブは「SANABAGUN.の軌跡を振り返る」というコンセプトをもったものだが、ここに生まれる熱量は思いっきりリアルでアクチュアルなもの。というか、ライブハウスだろうとフェスだろうと一瞬で自分たちのペースに巻き込み、ステージの上と下という境界線をやすやすと無効化してしまう、このバンドの求心力はやっぱりとんでもない。本編のラストチューンは「まずは『墓』。」。メロウなサウンドにパンチの強いラップと歌が正面衝突し、一抹のノスタルジーと明日への希望を描き出した。

 アンコールの手拍子が鳴り止まないなか、再びステージに戻ってきた8人。高岩が場内に設置されたスクリーンを指差すと、ニューアルバム『BALLADS』のリリースを告げるムービーが流れる。続けて披露された新曲は、スムースなR&Bの匂いの中で表現力豊かな歌とラップが絡み合う、SANABAGUN.の新たなスタンダードナンバーとなりそうな楽曲だった。そしてこの日最後に演奏されたのは「人間」。フロアから巻き起こる大合唱に満足そうな笑みを浮かべるメンバーの姿が印象的だった。次回のマンスリーライブは7月30日の「Green Red」。これ、1回見ちゃったら全部観ないと気が済まないやつだな……。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:川崎龍弥】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SANABAGUN.

リリース情報

BALLADS

BALLADS

2019年10月23日

CONNECTONE

01.Somebody
02.Sweet Dreams feat. 藤原さくら
03.45
04.Taco
05.Fever
06.Punch Me Panda
07.C.$.C
08.Mystery
09.ス・パ・パ・パ・イ・ス ~想い出のお母さんカレー編~
10.move on
11.Stay Strong
12.浪漫飛行 feat. Creepy Nuts

セットリスト

「2013 - 2018」” White Black ”
2019.6.25@渋谷CLUB QUATTRO

  1. 01.フーチークーチーメン
  2. 02.Zo What
  3. 03.SANABAGUN. Theme
  4. 04.M・S
  5. 05.B-Bop
  6. 06.DRIVER
  7. 07.大渋滞
  8. 08.Stuck IN Traffick
  9. 09.さっちゃん
  10. 10.DA インフルエンザ
  11. 11.里
  12. 12.Warning
  13. 13.まずは「墓」。
【ENCORE】
  1. 01.マイアミ
  2. 02.新曲
  3. 03.人間

お知らせ

■ライブ情報

SANABAGUN.「2013 - 2018」

" Green Red "
07/30(火) [東京]SHIBUYA CLUB QUATTRO

" Danger Blue "
08/04(日) [大阪]BANANA HALL

" Eight Seven "
08/27(火) [東京]SHIBUYA CLUB QUATTRO



Setouchi Beach Jam2019
08/03(土)・04(日) 瀬戸田サンセットビーチ
SANABAGUN.の出演は08/03(土)になります。

Local Green Festival’19
08/31(土)・09/01(日) 横浜赤レンガ地区野外特設会場
SANABAGUN.の出演は09/01(日)になります。

27th Sunset Live 2019 -Love & Unity-
09/07(土)・08(日) 芥屋海水浴場・キャンプ場 特設ステージ
SANABAGUN.の出演は09/07(土)となります。

WIRED MUSIC FESTIVAL’19
09/07日(土)・08(日) AICHI SKY EXPO 野外多目的利用地
SANABAGUN.の出演は09/08(日)となります。

りんご音楽祭2019
09/28(土)・29(日) アルプス公園

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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