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向井太一が呼びたいアーティストを招く「BDP TOUR 2019」東京公演レポート

向井太一 | 2019.07.12

 向井太一がインディーズ時代から開催してきた自主企画「BDP」は、「Between Da Pop」というテーマで、向井本人が呼びたいアーティストを呼び、ジャンルを超越したつながりを生み出してきたイベントだ。その「BDP」がツアーとして帰ってきた。盟友iriを招いた福岡公演に続いて行われたこの日の東京公演の会場は恵比寿リキッドルーム。過去3回にわたって行われてきたイベントの舞台はそのリキッドルームに併設されたTime Out Caf? & Dinerだったので、その意味でメモリアルな夜だ。

 この日のゲストはtofubeats。1曲目「RUN」からいきなりドープなビートがリキッドルームをビリビリと震わせる。「知ってる人はそれっぽく、知らない人は適当に」楽しんでください、という言葉とともに「WHATS YOU GOT」を繰り出すと、フロアからは手拍子が起きる。「Don’t Stop The Music feat.森高千里」や「LONELY NIGHTS」などパワフルなナンバーから「YUUKI」「水星」といったメロウなナンバーまでを駆使して踊らせつつ、ソウルフルなギターのカッティングが心地いい「Keep On Lovin’ You」まで披露。ときにマイクを手に取り歌いながら盛り上げていく。そして最後にプレイされたのは――もちろんこの曲、tofubeatsがプロデュースした向井太一「Siren」! 舞台袖からマイク片手に向井が飛び出せば大歓声。本人も体を揺らしながら楽しそうに歌を紡ぐ。「tofubeatsさんに改めて大きな拍手を!」。リキッドルーム全体の温度がぐっと上がったところで、いよいよメインアクトの出番だ。

 真っ暗なステージを後ろからライトが照らし、バンドメンバーと向井のシルエットが浮かび上がる。スタンドマイクで歌い始めたのは「27」。そこからスムースなメロディが広がる「Go Away」へ流れ込むという、EP『27』同様のオープニングが、早くもライブの空気を形作っていく。歌い終えて一礼した向井は「改めましてこんばんは。最後まで楽しんでいきましょう!」と挨拶。George(Keyboard & Machine / from MOP of HEAD )のキーボードが奏でるイントロから「Crazy」で美しいファルセットを響かせる。

 2016年にスタートしたこの「BDP」というイベントの歴史に触れ、「3年越しにツアーをやることができました」と喜びを語る向井の言葉に拍手が起こる。「Conditional」では村田シゲ(B / from □□□)のベースラインとSatoshi(Dr / from MOP of HEAD)が生み出すドープなグルーヴがフロアを覆い、「SPEECHLESS」では向井がキレのある歌を響かせる。向井の歌のスキルや表現力、そして今や向井のライブとは切っても切り離せない百戦錬磨のバンドとのコンビネーション、この3年の間にはるかにスケールアップしたサウンドが、恵比寿の夜を美しく塗り替えていく様子は痛快ですらある。

「こんなパンパンのリキッドでライブできるなんて幸せです」と向井。そして「すごく好きなアーティストがいて。彼女の声にすごく惹かれていて。『27』でやっと一緒に作ることができて……」とステージに呼び込んだのはFriday Night Plansだ。帽子も目深にかぶったFNPが挨拶をするとオーディエンスからも大きな拍手。そしてふたりでスツールに座ってデュエットしたのはもちろん『27』でコラボレーションした「Last Peace」。「ずっと付き合ってるふたりが未来に進む歌」「曲中でプロポーズしてくれてもいいですよ(笑)」という向井の曲紹介のとおり、親密で温かな空気が向井とFNP、ふたりの歌声によって生み出されていく。曲が終わるといっそう大きな拍手が巻き起こった。

「Last Peace」の余韻が残るなか、それに呼応するように「リセット」の力強いメロディで未来を照らし出したあと、「もっと楽しめますか東京!」と呼びかける向井。そして演奏されたのはシンセとギターカッティング、そしてディスコビートがキラキラと鳴り響くアーバンソウル「YELLOW」。向井はシゲとの絡みを見せたり、フロアを煽り立てたり。それに応じてオーディエンスのテンションもぐっと高まる。そのままテンポを上げてstarRo とのコラボレーション曲「Great Yard」へ。コブシの効いたパワフルな歌がクライマックスに向けて一気にギアを上げていく。

 ライブはいよいよ終盤、イントロから歓声が上がった初期を象徴する楽曲「SLOW DOWN」に続いて、最後に披露されたのは『27』からアッパーでファンキーな「I Like It」! カラフルなライトがステージを照らし出すなか、Georgeが鳴らすシンセのリフ、Satoshiの生み出すシャープなビート、そしてシゲのパンチの効いたベースライン、すべてががっちり重なり合う中歌われた「好きなものを/好きと言える今の自分が誇らしい」という言葉。それはまさにこの「BDP」というイベントに込められたテーマと、向井太一というアーティストの信念を物語っているように聞こえた。

 アンコールを求める手拍子に応え、白いTシャツに着替えてステージに戻ってきた向井。「声が聞こえる」を披露したあと、秋にワンマンツアーを開催することをアナウンス。東京の会場はZepp Tokyoと発表する彼の声も嬉しそうだ。「ひとりじゃ何もできなくて……いつもみなさんが必要です」とオーディエンスに呼びかければ、温かな拍手が寄せられる。その雰囲気のまま最後に歌われた「空」が、いつもよりひときわ希望に満ちて聞こえたのは気のせいではないだろう。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:Yosuke Torii】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 向井太一

リリース情報

配信限定 EP「27」

配信限定 EP「27」

2019年06月19日

TOY’S FACTORY

01.27 (Co-Prod.CELSIOR COUPE)
02.Go Away (Co-Prod.CELSIOR COUPE)
03.声が聞こえる (Co-Prod.Shin Sakiura)
04.I Like It (Co-Prod.CELSIOR COUPE)
05.もう一度 (Co-Prod.CELSIOR COUPE)
06.Last Peace feat. Friday Night Plans (Co-Prod.CELSIOR COUPE)
07.24 (Devin Morrison remix) ※iTunes/Apple Music Only

セットリスト

「BDP TOUR 2019」
2019.7.4@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 1.27
  2. 2.Go Away
  3. 3.Crazy
  4. 4.眠らない街
  5. 5.Conditional
  6. 6.SPEECHLESS
  7. 7.Last Peace feat. Friday Night Plans
  8. 8.リセット
  9. 9.YELLOW
  10. 10.Great Yard
  11. 11.SLOW DOWN
  12. 12.I Like It
  13. 【ENCORE】
  14. EN1. 声が聞こえる
  15. EN2. 空

お知らせ

■ライブ情報

向井太一 ONE MAN TOUR 2019(仮)
10/18(金)名古屋ボトムライン
10/22(火・祝)なんばHatch
10/25(金)福岡DRUM LOGOS
11/03(日)仙台Rensa
11/10(日)札幌ペニーレーン24
11/14(日)Zepp Tokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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