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『須田景凪 TOUR 2019 “teeter”』追加公演 中野サンプラザホール

須田景凪 | 2019.07.29

 須田景凪の成長と躍進が凄まじい。前売りチケットが即完した7月14日東京中野サンプラザホールで目撃した『須田景凪 TOUR 2019 "teeter"』追加公演が圧巻の素晴らしさだったのだ。しかし、ネット文化を出自とする次世代シンガー・ソングライターである彼は、実はライブ経験がまだ少ない。これまで、渋谷WWW、渋谷WWWX、恵比寿リキッドルームなどのライブハウスでライブを観続けてきたのだが、作品力の高さと比べると物足りなさは否めなかった。しかし、そんな“成長への伸びしろ”と感じていた課題を、いい意味で裏切ってくれた初のホール公演となった。

 須田景凪はライブ途中、会場を見渡して「ホールは初めてなのですが、ライブハウスは後ろの方は暗くて見えないけど、ホールだとみんなの表情がよく見えますね」と、冷静にMCで語っていたのが印象的だった。

 透過する紗幕スクリーンに投影する映像演出、鉄壁のバンドメンバーである、モリシー(G / Awesome City Club)、雲丹亀卓人(B)、堀正輝(Dr)によるソリッドかつグルーヴィーなプレイ。今回、追加公演だったこともあり、ライブハウスでの通常公演を比較することで、須田景凪が生み出す表現が日々着実に進化を遂げていることに確信を持てた一夜となった。

 開演時刻、ステージを覆い尽くす巨大スクリーンに「teeter」のロゴが映し出され「Dolly」でライブがスタート。光の粒が輝くキャンバスの向こう側でギターをかき鳴らす須田のシルエット。2曲目「farce」で紗幕が上がりオーディエンスのテンションもこの日最初の最高潮に。勢いそのままに「idid」などアッパーチューン、そして切なさでいっぱいのナンバー「シックハウス」を織り交ぜメロディアスなギターサウンドで魅了してくれる。



 雨音が印象的な「Cambell」では、映像と溶け合うシアトリカルなサウンドを披露。TVアニメ『炎炎ノ消防隊』エンディング主題歌となる新曲「veil」では、ヴィジュアルを手がけるアボガド6(イラストレーター / 映像作家)によるミュージックビデオが疾走感あるライブ・パフォーマンスとともにシンクロする。


 青い照明に爪弾かれるギターから、予告なきままに代表曲「シャルル」がスタート。オーディエンスによる大合唱、一気に一体感で包み込まれる会場。時代を代表するであろうエバーグリーンなナンバーであることがリアルに伝わってくる。なお、「シャルル」のすごさを知らないリスナーにわかりやすく伝えるとしたら、須田景凪=ボカロP、バルーン時代に生み出した名曲だ。カラオケJOYSOUND の 2017 年発売曲年間カラオケ総合ランキングは1位。2017&2018年の年代別カラオケランキング・10代部門では2年連続1位を獲得したという事実を知ってほしい。


 初のホール公演をターニングポイントに須田景凪は躍進する。中盤、MCで「皆さんからもらった恩は、音楽で返していきます。僕の作る曲が、みなさんの日常の片隅のどこかに溶け込んでくれたらいいと思うし、いつかみなさんの共通の言葉のようになってくれたらいいなと思っています」と優しく語りかけた。

 そして、本編ラストに注目の話題作である映画『二ノ国』主題歌、新曲「MOIL」を初披露。“らしさ”を感じるギターサウンドを、さらにコンテンポラリーなポップソングにアップデートしたスタイリッシュなナンバーだ。ライブでは、ハンドマイクで歌う様が印象的だった。なお、映画『二ノ国』は8月23日に公開されるアニメ映画であり、製作総指揮と原案、脚本をレベルファイブの日野晃博。監督は『おもひでぽろぽろ』などで知られる百瀬義行。音楽はジブリ作品でおなじみの久石譲が務める。声優として山﨑賢人、新田真剣佑、永野芽郁ら若手人気俳優が出演することも話題だ。


 熱烈なアンコールを受け、再びステージへ。ここで「お知らせがあります」と、2020年春に、ワンマンツアー『須田景凪 TOUR 2020』を開催することを発表した。2月29日の東京Zepp DiverCity(TOKYO)公演を皮切りに全国7カ所のライブハウスを巡るという。ホール公演を経て、須田景凪の本質が試されるツアーとなることだろう。

 アンコール1曲目は「レド」。そして、ラストナンバー「密」では、照明がまばゆいほどに輝きをみせ大団円を迎えていく。まさに、暗闇から光を取り戻すための旅のようなストーリー性を感じるライブ物語だった。


 須田景凪による疾走するビートセンスに絡み合う歌えるメロディー。片時も心を離すことない、中毒性の高い研ぎ澄まされたサウンド・プロダクション。そして、胸を突き刺す抒情的なコトバのチカラ。こだわりのサウンドでティーンを魅了する、須田景凪の才能に注目すべきだと再認識した素晴らしいライブだった。大人はまだ知らない存在だが、大人をも魅了してくれるサウンドだと確信した。

 8月21日にリリースする、5曲入り2nd EP『porte』初回限定盤 / 通常盤初回プレスには、『須田景凪 TOUR 2020』チケット最速先行抽選に申し込める、シリアルナンバーが封入される。今こそ、須田景凪が生み出すグルーヴィーなギターロック・サウンドが奏でる緩急みせる躍動するライブに注目してほしい。

【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
【撮影:Taku Fujii】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 須田景凪

リリース情報

porte

porte

2019年08月21日

unBORDE

01.veil
02.MOIL
03.語るに落ちる
04.青嵐
05.couch

セットリスト

須田景凪 TOUR 2019 追加公演 "teeter"
2019.7.14@中野サンプラザホール

  1. 1.Dolly
  2. 2. farce
  3. 3. idid
  4. 4. メーベル
  5. 5. 雨とペトラ
  6. 6. Cambell
  7. 7. シックハウス
  8. 8. レソロジカ
  9. 9. morph
  10. 10. veil
  11. 11. mock
  12. 12. シャルル
  13. 13. ポリアンナ
  14. 14. パレイドリア
  15. 15. 浮花
  16. 16. MOIL
  17. 【ENCORE】
  18. 17. レド
  19. 18. 密

お知らせ

■ライブ情報

須田景凪 TOUR 2020
2020/02/29(土)Zepp DiverCity(TOKYO)
2020/03/07(土)名古屋ダイアモンドホール
2020/03/08(日)なんばHatch
2020/03/14(土)札幌cube garden
2020/03/20(金・祝)仙台Rensa
2020/03/28(土)広島LIVE VANQUISH
2020/03/29(日)福岡イムズホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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