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「逆襲、ここに完結。」――1年越しのリベンジと、新たなる旅立ちの瞬間を観た!

WOMCADOLE | 2019.08.16

 真っ赤な光の中にWOMCADOLEがいた。赤は情熱の色。体に流れる血の色であり、命が燃える色、たぎる闘志の色だ。彼らには赤がとてもよく似合う。バンドにとって6本目となる自主企画ライブ「瀧昇 六本目 二〇一九 独奏力ッ怒逆襲編」、恵比寿LIQUIDROOMだ。昨年、1stフルアルバム『今宵零時、その方角へ』を引っ提げて開催した全国ツアー「己の心に吠えろよツアー」のファイナル公演で、この会場をソールドアウトできなかった悔しさから、“逆襲”と名付けたこの日のライブ。樋口侑希(Vo/Gt)は、「逆襲しにきたわけですよ。誰ひとり振り落としたら、逆襲の意味がなくなるから、リタイアなしでテッペンまで駆け上がりましょう!」と気合いを込めた。今回は見事ソールドアウト。数字の上での「逆襲」は成功したわけだが、その内容に関しても、フロアに詰めかけた900人を前に、バンドの1年間の成長をこれでもかと見せつける完全勝利のライブだった。

 「この世でいちばん安全なドラッグ始めようぜ!」。樋口のギラついた口調から、「人間なんです」を皮切りに爆音が恵比寿LIQUIDROOMをビリビリと震わせた。安田吉希(Dr)が叩き出す強靭なビート、その勢いを加速させる黒野滉大(Ba)の獰猛なベースと、古澤徳之(Gt/Cho)が奏でるメロディアスなギター。荒ぶる樋口のボーカルは、「歌う」とか「届ける」なんて生易しいものじゃなく、「吠える」と表現したくなる体当たりの歌だ。「かかってこい!」。すでに初っ端から沸点へと達していたフロアの熱狂にさらにガソリンを注ぐような樋口の言葉を合図に、疾走感あふれる「ドア」から「黒い街」へ。曲を重ねるたびに、フロアからは大きなシンガロングを巻き起こるが、黒野のグラマラスなベースが炸裂した「絶望を撃て」では、樋口が「おい! 声が聞こえないっつってんだよ!」と、さらに容赦なくフロアを焚きつけていた。WOMCADOLEのライブは決してステージの上だけで完結しない。フロアのお客さんもまた本気で感情をぶつけて闘う、そういうライブだ。

 破壊力のある安田のドラムにのせて、サビで何度も《割に合わない》というフレーズを繰り返す新曲「wariniawanai」を挟み(かなり中毒性の高い曲だった)、序盤を終えたところで、すでに黒いシャツに汗をじっとりと滲ませた樋口。「もし水が欲しい人がいたら、俺2リットル持ってるので(笑)」と灼熱のフロアを気遣うと、ここから夜のナンバーが立て続けに披露された。エレキギターの弾き語りで優しく歌い出したのは「月」。この曲の《月が綺麗ですね》という一節は、かつて夏目漱石が“I LOVE YOU”の日本語訳にあてたという逸話が有名だが、樋口が体まるごとぶつけて紡ぐラブソングは、それでいて衝動や感情だけに身を委ねるだけではなく、彼の詩人としての繊細な一面をも強く浮き彫りにする。「もうひとつ夜の話を……」と切り出した新曲のバラード「ミッドナイトブルー」は圧倒的なサビの昂揚感から英詞で締めくくるエンディングまで、ドラマチックな展開が素晴らしかった。そして、数多の悲しみに満ちた夜は「夜の向こうで」でうっすらと明けていく。WOMCADOLEには“夜明け”の曲が多いなと思う。明けない夜はないからだ。絶望は撃ち砕けるし、雨もやむ。そこから立ち上がるための音楽をWOMCADOLEは鳴らし続けている。

 後半のMCでは、滋賀県出身の樋口が東京で見かけた動かない鳩の話をしたり、自分たちで名付けた今回のツアータイトル「力ッ怒」(リキッドと読む)の表記について「ヤバない?」と言い合ったり、他愛ないトークで会場を笑わせていた。「俺らアホやから、基本こんな感じ。俺らの機材車に来たと思って(笑)」と樋口。メタリックな古澤のギターが炸裂した「リム」や「少年X」のあと、「WOMCADOLE史上いちばんチャラい新曲で踊り狂おうぜ!」と突入したダンサブルな「NANA」では、黒野のベースソロでも会場が沸いた。この日のライブでは新曲が4曲も披露された。それはどれもWOMCADOLEが新しいフェーズへと向かっていることを印象づける新機軸となる楽曲ばかりだった。「逆襲」というタイトルをつけながら、蓋をあけてみれば、彼らは過去にこだわるつもりはさらさらない。

 過去への未練を断ち切るエモーショナルなナンバー「独白」以降は、ハイライトの連続だった。《くたびれたぐらいが丁度いいや人生。》と渾身の力で投げかける「馬鹿なくせして」は、日常生活で摩耗した心に劇薬のように沁みていく。最後のMC。樋口はギターを爪弾きながら多くの言葉を投げかけた。人間はロボットではないから、心に溜まったものを爆発させなきゃいけない。自分は弱い人間。だから歌うには勇気が必要で、体を使わないと鳴らせない。信じるものはロックンロールと「あなたたち」だけ。そんな想いを伝えたあと、「もし、あんたが諦めそうになったなら、またここにくればいいじゃんか。家よりも居心地よくしてやるよ。何も持たなくていい。だから……もうちょっとついてきてくれますかっ!?」と懇願するように想いを爆発させて、「アオキハルヘ」へ。これぞWOMCADOLEという闘志を剥き出しにした新曲「FLAG」から「ライター」へと、絶唱につぐ絶唱を重ねて辿り着いたラストソングは「唄う」だった。「俺にまた希望をくれてありがとう。やめられそうもないよ、音楽。この世界中に届くぐらい大きい声で歌おうぜ!」という樋口の呼びかけで、フロアの一人ひとりがなりふり構わず声を上げた特大のシンガロングは、この日、WOMCADOLEの音楽が間違いなく心の深いところに届いたという何よりの証明だった。

 アンコール。古澤、黒野、安田の3人だけで登場すると、黒野がセンターに立ち、「この1年の成長を感じるライブになった」とボーカル風に語って会場を笑わせた。まさに機材車のノリ。遅れて現れた樋口が「声がちぎれるまで歌おうぜ!」と叫ぶと、最後は「21g」と「綺麗な空はある日突然に」で終演。この日のライブに小手先の歌はひとつもなかった。私たちは樋口の人生のすべてを知っているわけではないけれど、WOMCADOLEの音楽を聴けば、彼がどんなふうに周りの人間と接して、何を大切に生きてきたのかがわかるような気がするのだ。だから、胸を打つ。今年、WOMCADOLEはもう1本のツアー(「旗鼓堂堂ツアー」)を開催する。ファイナルは年明け、バンド最大キャパの挑戦となるマイナビBLITZ赤坂だ。この先、彼らはもっと上にいくと思う。WOMCADOLEの音楽がもっと大きな場所で響き渡ったら、この世界がもっと美しくなるんじゃないかなんて、そんな妄想すらしてしまうのだ。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:ハライタチ】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル WOMCADOLE

リリース情報

ライター

ライター

2018年11月28日

UNCROWN RECORDS

1.ライター
2.追想
3.ノスタルジックアパート

セットリスト

瀧昇 六本目 二〇一九 独奏力ッ怒逆襲編
2019.8.5@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.人間なんです
  2. 02.ドア
  3. 03.黒い街
  4. 04.夜明け前に
  5. 05.絶望を撃て
  6. 06.wariniawanai(新曲)
  7. 07.月
  8. 08.ミッドナイトブルー(新曲)
  9. 09.夜の向こうで
  10. 10.リム
  11. 11.少年X
  12. 12.NANA(新曲)
  13. 13.独白
  14. 14.馬鹿なくせして
  15. 15.アオキハルヘ
  16. 16.FLAG(新曲)
  17. 17.ライター
  18. 18.唄う
【ENCORE】
  1. 01.21g
  2. 02.綺麗な空はある日突然に

お知らせ

■ライブ情報

UNITED SHIGA 2019
09/14(土) 滋賀浜大津B-FLAT
w/ climbgrow / 街人 / 50/50’s / Arakezuri / Blume popo / Lenny code fiction / QB and planets / SKA FREAKS / シナリオアート / Time Paradox / theULTRALEA

瀧昇 七本目 二〇一九 独奏新弾大放出編
09/15(日) 滋賀浜大津B-FLAT
※ワンマン

旗鼓堂堂ツアー
2019/11/29(金) 大阪 心斎橋BIGCAT
※ワンマン
2020/03/19(木) 東京 マイナビBLITZ赤坂
※ワンマン
ほか、全25公演予定



ENTH SLEEPWALK TOUR 2019
08/23(金) 京都 MUSE
w/ ENTH

Save the Birthday 2019
-10th Anniversary-

08/25(日) 滋賀県彦根市荒神山公園運動施設野外特設ステージ
w/ NUBO / 街人 / ファミリーレストラン

RADIO BERRY 25th ANNIVERSARY
ベリテンライブ 2019

08/30(金) HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
w/ 錯乱前戦 / ドミコ / PELICAN FUNCLUB

くさのねフェス2019
08/31(土) 千葉 佐倉草ぶえの丘

O-Crest 15th Anniversary“最強”
09/02(月) 渋谷 TSUTAYA O-Crest
w/ GRAND FAMILY ORCHESTRA / rem tme rem time / Suspended 4th

climbgrow presents -MAX BET-
09/06(金) 大阪 MUSE
w/ climbgrow / SIX LOUNGE

someno kyoto 2nd Anniversary
09/17(火) someno kyoto ※樋口侑希弾き語り
w/ ヒグチアイ / 宍戸翼(The Cheserasera) (O.A 植城微香)

KANSAI LOVERS 2019
09/22(日) 大阪城音楽堂
w/ アルカラ / Saucy Dog / 空きっ腹に酒 / DENIMS / ドラマストア / NEIGHBORS COMPLAIN / Hakubi / 夜の本気ダンス / ラックライフ(O.A CAT ATE HOTDOGS)

[eyedentity Vol.32]
09/25(水) 静岡 UMBER
w/ kobore / w.o.d.

Rhythmic Toy World 10周年企画『10Q』《Quest9》~全てを喰らい尽くす轟音~
09/27(金) 渋谷 CLUB CRAWL
w/ Rhythmic Toy World

Stylish FellowS SPECIAL!!
09/28(土) 新潟 CLUB RIVERST
w/ アルカラ

PIRATESHIP 2019
10/12(土) 大分 T.O.P.S Bitts HALL
w/ a flood of circle / BAN’S ENCOUNTER / Bentham / BUZZ THE BEARS / Ivy to Fraudulent Game / OVER ARM THROW / SHIMA / SIX LOUNGE / Special Thanks / ハルカミライ

DElicious BUns FESTIVAL 2019
10/20(日) 愛知県碧南市JAあいち碧南営農センター特設ステージ
w/ LUCCI / kobore / Track’s / and more

KAKASHI pre 灯火祭
10/26(土) 高崎clubFLEEZ / 高崎clubFLEEZ Asile / 高崎TRUST55 / 群馬SUNBURST / 高崎GUILD
w/ KAKASHI / Halo at 四畳半 / Maki / CRAZY VODKA TONIC / ドラマストア / 神はサイコロを振らない / アイビーカラー

The Cheserasera presents
“over the fence”

11/09(土) 新宿 LOFT & Bar
w/ The Cheserasera / Amelie / ユアネス and more

RISING HALL 4th Anniversary
11/14(木) 周南 RISING HALL
w/ 四星球 / ドラマストア / 青春ジャンキー

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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