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a flood of circle 10th Anniversary “BUFFALO SOUL x PARADOX PARADE”

a flood of circle | 2019.09.18

 a flood of circleが、メジャーデビュー10周年企画の一つとして、1stアルバム『BUFFALO SOUL』、2ndアルバム『PARADOX PARADE』の再現ライブを行った。会場は彼らがデビュー前から出演してきた新宿ロフト。新宿ロフトは現在の歌舞伎町に移転して20周年を迎え、それを祝してAFOCは2009年にリリースした2作の再現ライブを行ったのだ。

 黒のノースリーブ姿のHISAYO、黒いTシャツの渡邊一丘、やはり黒シャツのアオキテツに、黒いレザージャケットの佐々木亮介がステージに現れると、当時を知るファンも今の彼らを愛するファンも入り混じる満杯のフロアは熱気に包まれた。 「おはようございます、a flood of circleです」と佐々木が挨拶をして、まずは『BUFFALO SOUL』のオープニングナンバー「シーガル」からスタート。バンドの初心に帰ったような演奏で一気にフロアを揺らしていく。「Thunderbolt」「Buffalo Dance」と収録曲順に進んでいくと、懐かしい曲に様々な思いを重ねているであろうメンバーとオーディエンスが一つになっていった。

 10年前の2作品を、今の彼らが演奏するのは大きな意味がある。単なるアニバーサリー企画というには重すぎると言ってもいいほどだ。記念すべきメジャーデビュー作『BUFFALO SOUL』を2009年4月にリリースした時は、佐々木と渡邊に、岡庭匡志(G)と石井康崇(B)がメンバーだった。そのリリースツアーの最中に岡庭が失踪して活動継続が危ぶまれたが、助っ人に奥村大(wash?)を迎えてツアーを敢行、休む間も無く奥村の他に菅波栄純(THE BACK HORN)、安高拓郎(椿屋四重奏)、竹尾典明(FoZZtone)をゲスト・ギタリストに迎えて『PARADOX PARADE』を完成させたのだ。

 2011年にHISAYOがメンバーとなり、昨年アオキが正式加入し新体制を固めてきたa flood of circleが演奏する初期の2作。それは新しいドラマの始まりでもあるのだが、オリジナルのポテンシャルを改めて感じさせるものでもあった。メジャーデビューという前のめりな状況で作り出した楽曲の潜在力が、今の彼らを当時のように突っ走らせる。中盤で佐々木が言った。 「10年前も今も一緒。最高の夜にしましょう」

 アルバムの中盤に入っている「-session #1-」をアオキは彼のブルースで鳴らし、熱っぽいセッションを聴かせた。バンドの歴史が絵巻のようにつながり浮かび上がって来る。そして「ブラックバード」からダンサブルな「僕を問う」と続けて再びブルージーなセッションで気持ちよく体を揺らしてくれた。

 佐々木が「やってて懐かしいという気持ちがなくて、ただ今日は最高」と言いながら「10年前は?」と問いかけると、「高2で、ギターを始めた頃。」とアオキ。HISAYOは加入前に佐々木たちと出会っていたが、佐々木と渡邊は彼女に挨拶をしなかったとか。「その時の服、今日着てる」と言った渡邊に「着れるサイズでよかったね」とHISAYO。4人の素顔が見えてくるMCに、フロアから笑い声や冷やかしの声が飛んだ。 「生きてればまた会えるってことを、10年やって知りましたね。だからまだまだ転がって生きます、よろしく」続けて佐々木は人との出会いや別れについて語ろうとしたが、「これ以上詳しく言えないから、歌います」と前半のラストを「ノック」で締めた。

 一旦ステージを降りた4人は衣装を赤に揃えて再登場。赤いレザージャケットを着た佐々木が「衣装替えなんて初めて」と照れたように言ったのは、あっという間に数曲を演奏し中盤にさしかかった頃だったが、2作のイメージの違いを視覚的に表現しようとしたのだろうか。前述したように4人のギタリストが参加した『PARADOX PARADE』は曲毎に色合いが変わる作品だが、そのダイナミックな流れを4人は彼らの色で増幅してみせた。

 「博士の異常な愛情」から始まった後半、オーディエンスが前半よりもアクティブに反応していたのは、このライブが始まった当初は現在の4人が10年前の作品を演奏することへの微妙な思いもあったのかもしれない。けれど曲が進めばそんなことは吹き飛んで、ただこのライブを楽しんでいるようだ。誰もが歌に応えて手を挙げ、ビートに合わせて体を揺らし、声を合わせて歌っていた。 「2009年、アルバム2枚だして、必死に曲を作ったけど、今年はもう60曲ぐらい作ってる(笑)。あの時と同じように一生懸命やってるだけ。あの時やっててよかった」と振り返る佐々木が、優しく歌い上げたのは「月に吠える」。ロマンチックな曲に、フロアが静かに揺れていた。 「10年前、俺たちここで初めてワンマンやったんだけど、その時来てた人いますか?」と渡邊が問いかけると、あちこちで手が上がった。「いつ好きになってくれて遊びに来てくれるようになったとしても、気持ちは一緒。ありがとう」「俺はいいことが言いたい」などと照れた渡邊に大きな拍手が送られた。

 渡邊への拍手が落ち着くと、佐々木が11月6日に新作『HEART』をリリースすること、そのタイトルはアオキがつけたと告げ、ラストスパートへ。菅波の個性的なギターをアオキが消化した「Forest Walker」は一段と演奏が熱を帯び、HISAYOのベースが唸った「噂の火」はフロアの床まで揺れた。佐々木が「I LOVE YOU LOFT! 刻みつけるぞ」と叫んだ「Flashlight & Flashback」はポップなメロディが耳に残り、オフマイクで佐々木が「毎日音楽最高と思ってる。今日みたいな日があるとまたやっていけそう。メンバーがいるから、お前らがいるからいけそう」と思いを吐露して歌い出した「水の泡」は心の底に染み渡った。最後の「プリズム」は10年の思いを解放するような広がりのあるサウンドでフロアを覆った。

 アンコールに戻った佐々木は、この夜のライブ音源を『HEART』に収録することになったと告げ、『HEART』に収録されるストレートなR&Rナンバー「Lucky Lucky」を初披露。そして、この日の幕開けとなった「シーガル」が再び演奏されると、盛大なシンガロングになった。この夜、彼らの10年がメビウスの輪のようにつながった。何度かのメンバー交代を経ながら続いて来たこのバンドは、今またタフになり歩み始めている。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:新保 勇樹】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル a flood of circle

リリース情報

HEART

HEART

2019年11月06日

Imperial Records

01.スーパーハッピーデイ
02.Lucky Lucky
03.Lemonade Talk
04.新しい宇宙
05.Stray Dogsのテーマ
-Live Bonus track-
06.シーガル
07.Buffalo Dance
08.エレクトリック ストーン
09.僕を問う
10.ラバーソウル
11.博士の異常な愛情
12.Paradox
13.アンドロメダ
14.噂の火
15. 水の泡

セットリスト

SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO 20TH ANNIVERSARY × a flood of circle 10th Anniversary "BUFFALO SOUL x PARADOX PARADE"
2019.9.5@新宿LOFT

    1部
  1. 01.シーガル
  2. 02.Thunderbolt
  3. 03.Buffalo Dance
  4. 04.エレクトリック ストーン
  5. 05.session #1
  6. 06.ブラックバード
  7. 07.陽はまた昇るそれを知りながらまた朝を願う
  8. 08.僕を問う
  9. 09.session #2
  10. 10.春の嵐
  11. 11.ラバーソウル
  12. 12.ノック
  13. 2部
  14. 13.session #3
  15. 14.博士の異常な愛情
  16. 15.Paradox
  17. 16.Ghost
  18. 17.アンドロメダ
  19. 18.月に吠える
  20. 19.Forest Walker
  21. 20.噂の火
  22. 21.Flashlight & Flashback
  23. 22.水の泡
  24. 23.プリズム
  25. EN1.Lucky Lucky
  26. EN2.シーガル

お知らせ

■ライブ情報

a flood of circle
“Lucky Lucky Tour 2019-2020”

2019/11/14(木)千葉LOOK
2019/11/29(金)札幌BESSIE HALL
2019/12/01(日)仙台MACANA
2019/12/06(金)広島CAVE-BE
2019/12/07(土)福岡CB
2020/01/11(土)大阪梅田CLUB QUATTRO
2020/01/13(月祝)名古屋CLUB QUATTRO
2020/01/17(金)渋谷CLUB QUATTRO
2020/01/19(日)渋谷CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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