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the engy「Talking about a Talk」東京公演

the engy | 2019.12.20

 今年10月にミニアルバム『Talking about a Talk』でメジャーデビューを果たし、ますます熱い注目を集めている京都の4人組、the engy。そのレコ発であるワンマンライブが渋谷WWWで開催された。音源以上にエモーショナルで人間臭い、このバンドの魅力がダダ漏れとなった一夜の模様をレポートする。なお、開演前にはメンバー全員への動画インタビューも行った。その様子はこちらから(音源から受ける印象とのギャップがすばらしい!)。



 青い光に照らされたステージに静かに現れた山路洸至(Vo/G/Programming)、濱田周作(B)、境井祐人(Dr)、藤田恭輔(G/Cho/Key)の4人。ドラムとベースが中心となって、SEから流れるように音を奏でていく。そしてそこにギターのカッティングが重なり、「Still there?」へ。エモーショナルな歌がのっけから炸裂する。続くグルーヴィーな「Say it」でブルージーなギターがフロアの温度をじわじわと高めると、山路の「盛り上がっていけますか、everybody! 家帰って後悔するくらいなら思いっきり楽しんだほうがいいですよ」という挨拶から、ドープなミクスチャーファンク「In my head」を投下する。ぶっといベース音がビリビリと床や壁を震わせるなか、笑顔を見せながらハンドマイクで歌い踊る山路の姿に乗せられるように、オーディエンスも自然と身体を揺らし始めた。

「このまま楽しんでいきましょう」と言っておきながら、すでに荒い息をしている山路。「人……いっぱいっすね。ソールドアウトということで……」と、どこかたどたどしいMCを聴くと、そういえばこのバンド、デビューしたてだったなと思い出す。洗練されたサウンドの裏側に見え隠れするキャラクターも、このバンドの魅力なのだ。「ミニアルバム、かっこいいと思って今日来た人!」というフロアへの質問も初々しい。だが、今書いたようにサウンド自体はそんな「若さ」を感じさせない本格派というところがポイントである。そんな感じのユルいトークから、いきなりスケールの大きなミドルチューン「Hey,」へと突入するのだから油断ならないのだ。ギャップ萌え、ということではなくて、この、等身大と洗練が直結している感じが、選択肢が無限なストリーミング配信時代の申し子というか、かぎりなく今っぽいのだ。

 それは楽曲についても同じことがいえる。作品を聴けばわかるとおり、彼らの音楽性はジャンル論や狭い定義で語ることができない。もちろん一定のムードはあるものの、それを気持ちよく裏切っていくところにthe engyを聴く快感はある。メランコリックなダンスナンバー「All about」、ツインギターが絡み合う濃厚なジャムセッションから流れ込んだ「Fall」、ジャジーにスウィングするビートが洒脱な「Stay where you are」。曲ごとに違う顔を見せるバンドの姿に、ひとときも目を離せない。

 ライブは後半に進むにつれて、そんなユルくてフレンドリーな雰囲気と、バッキバキに練り上げられたサウンドの応酬といった様相を呈してくる。しっとりとしたグルーヴをまとったレッチリ風メロウファンク「Found myself」、柔らかなギターのアルペジオとリヴァーブのかかったスネアの音色から春の朝のように優しく歌い起こされる「Longing for you」を経て、4つ打ちのキックとエレクトロサウンドが牽引してエモーションを爆発させる「Skipping me」へ。力強いバンドアンサンブルが竜巻のように感情の上昇気流を巻き起こす「Holding you down」を終えたところで、山路が汗かきをネタに「汗かきすぎて逆に汗引いてきたわー」と相変わらずの調子で喋ったかと思いきや、すかさず切れ味鋭い「Under the water」をぶっ込んでフロアに手拍子の嵐を巻き起こす。油断したところを一撃必殺、野生動物の狩りを見ているようだ。

 たとえばアメリカのインディバンドなんかを見ていると、音はキッチュでポップで、たとえばオシャレなカフェなんかでかかっていそうなのに、実際にライブを見るとびっくりするぐらいエモかったり汗臭かったりすることがある。the engyを観て受ける印象はそれに近いのかもしれない。the engyの代表曲といっていい「Sick enough to dance」ではループするリズムの上でメロディが踊るが、人力でやっているからこそのブレや揺らぎが、かえって楽曲の温度を高めているのがわかる。洗練からはみ出したなにかが、このバンドをほかとは違うものに仕立てている。

 観客に語りかけるように歌い上げた「Have a little talk」から「Empty space」を挟み、コールアンドレスポンスを経て本編ラスト「Touch me」へ。フロア中で腕が上がる中、ひときわハイテンションで歌う山路の姿が印象的だった。メンバー全員がTシャツ姿で再登場したアンコールでは「こんなに人が来るとは思わなかったんで、嬉しいです」という藤田の言葉。本編に較べ、いくぶんリラックスした雰囲気の中披露された「She makes me wonder」は、この日のハイライトといってもいい雰囲気を生み出した。「トークがテーマのアルバムを出したわりにうまくトークできなくて申し訳ないですけども」と自虐しながら、「今日来てくださって、僕らのことを気にかけてくださって本当にありがとうございます」と感謝を述べた山路。そんな素直で素朴な言葉に、the engyというバンドの姿が集約されているように感じた。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:宮家和也】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル the engy

リリース情報

Talking about a Talk

Talking about a Talk

2019年10月30日

ビクターエンタテインメント

01.At all
02.Still there?
03.Sick enough to dance
04.In my head
05.Touch me
06.Hey,
07.I told you how
08.Have a little talk

セットリスト

ONEMAN LIVE『Talking about a Talk』
2019.11.25@shibuya WWW

  1. 01. intro ~ Still there?
  2. 02. Say it
  3. 03. In my head
  4. 04. Hey,
  5. 05. All about
  6. 06. session ~ Fall
  7. 07. Stay where you are
  8. 08. Found myself
  9. 09. Longing for you
  10. 10. Skipping me
  11. 11. Holding you down
  12. 12. Under the water
  13. 13. When you’re with me
  14. 14. Sick enough to dance
  15. 15. I told you how
  16. 16. Have a little talk
  17. 17. Empty space
  18. 18. Touch me
  19. 【ENCORE】
  20. en1.She makes me wonder
  21. en2.Headphones

お知らせ

■ライブ情報

JANUS fabulous
2020/01/10(金) 心斎橋 JANUS

OTOEMON FESTA 2020 supported by Eggs
2020/03/19(木)~03/22(日)
LIVE SQUARE 2nd LINE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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