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「BBHF ONE MAN TOUR “FAM!FAM!FAM!”」より、東京・恵比寿LIQUIDROOM公演をレポート!

BBHF | 2020.01.07

 ステージを見ているだけで、彼らがどれほど音楽に夢中なのかが伝わってくる。音楽という、永遠に遊び尽くせない“おもちゃ”を使い、どうすれば、もっとワクワクすることができるか。それを、Galileo Galileo時代も、Bird Bear Hare and Fish期を経て、BBHFとなった今も、彼らはずっと変わらずに探求し続けていた。BBHFが11月から全国10公演をまわった「BBHF ONE MAN TOUR “FAM!FAM!FAM!”」だ。今年、BBHFは、10年在籍していたメジャーレーベルを離れ、新たにBeacon LABELから、2枚で対(つい)となるEP「Mirror Mirror」と「Family」をリリースした。それは、現代の「人と人のつながり」を表裏一体の二軸で表現するようなチャレンジングな試みだったが、今回のツアーは、その2作品を2部構成のライブで体現することで、音楽には、ロックバンドには、まだまだ無限の可能性があるということを強く感じさせてくれるものになった。

 以下のテキストでは、そのツアーからセミファイナルとなった東京公演、恵比寿リキッドルームの模様をレポートする。

 尾崎雄貴(Vo/Gt)、DAIKI(Gt)、佐孝仁司(Ba)、尾崎和樹(Dr)に、サポートを務める元Galileo Galileiの岩井郁人(Key/Gt)がステージに登場すると、ピンク色の光の線がぐるりと4人を取り囲んだ。オープニングナンバーは「リビドー」。雄貴が静かに歌い出し、バンドが加わると、その演奏が次第に熱を帯びていく。ライブの前半に披露されたのは、『Mirror Mirror』の楽曲たちだった。スマホなどの現代的なツールを介した、個と個によるデジタルコミュニケーションをメインテーマにした『Mirror Mirror』の楽曲に寄り添うように、スタイリッシュな照明がステージを彩る。最初のMCで、「今回は久しぶりに公演数が多いツアーです」と切り出した雄貴は、「(9公演目ということで)エネルギーが溜まって、バンドも良い状態にあるので、全力で楽しませたいと思います」と意気込みを伝えた。

 青春の気配をまとって瑞々しく駆け抜けた「友達へ」から、アナログっぽい音色がノスタルジーを誘うミディアムテンポ「バック」、アーバンで艶やかな音像が躍動感のあるバンドサウンドへと展開していく「Torch」へと、ギターのDAIKIと、ベースの仁司がサンプリングパットを駆使しつつ、エレクトロな打ち込みとバンドサウンドとを絶妙に絡み合いながら、ライブは進んだ。前述したように、『Mirror Mirror』はソーシャルネットワークがひとつのテーマ。だが、そこで表現されるのは、決して無機質なものではなく、その「広くて狭い箱庭」のなかで、たしかに生きる人間の姿が丹念に切り取られていた。前半のラストは、『Mirror Mirror』のなかでも印象的なリード曲「Mirror Mirror」だった。ダンサブルなビートにのせて、何度も旋律を繰り返すメロディに綴られるのは、ネット上の拡散と炎上を抽象化したものだろうか。鳴らす楽器の一音一音にも、タイトルにも、歌詞にも、すべてに明確な意図を託すBBHFの音楽には、幾重にも深読みできる要素がある。だからこそ、緻密に折り重ねられたサウンドの心地好さに身を委ねながらも、気がつくと、ついいろいろな思考を巡らせてしまう。

「今日は1曲カバーをやりたいと思います」。前半を終えたところで、ひとり雄貴がステージに残った。ここで届けたのは、『Mirror Mirror』と『Family』という2枚のアルバムのサウンドアプローチに影響を与えたというカニエ・ウェストと、ポール・マッカートニーの共作による2015年のナンバー「Only One」だ。「おそらく彼(カニエ)の子どもに向けて書いた曲を、僕なりの解釈で日本語をつけた曲です」と紹介したエレキギターの弾き語りには、“あなたはあなた”という優しいメッセージがのっていた。

 ライブの後半は『Family』の曲たちへ。「僕たちを取り囲む断ち切れないつながりを“ファミリー”と呼んで、それについて書いた曲をやっていきたいと思います」 と伝えると、力強くエネルギッシュなバンドサウンドが躍動する「なにもしらない」では、ステージ上の7つのランプに温かい光が灯った。和樹がパーカッシブなビートを刻む「花のように」、生命力みなぎる「あこがれ」や「水面を叩け」へと、後半は、まるで心臓の拍動や、筋肉や骨の軋みを感じられるような肉体感のあるアプローチへと変わっていく。同じメンバー、同じ楽器の編成でありながら、ここまで見事に異なる世界観を描くことができるのは、BBHFというバンドが持つ、音楽的な引き出しの多さがあればこそだろう。

 終盤のMCでは、雄貴が「せっかくだからメンバーにも喋ってもらおう」と話を振ったものの、「地方だと、ご当地トークで盛り上がるけど、東京は困るよね……」とDAIKI。音楽のなかでは、あれほど雄弁でありながら、いざ言葉で話そうとすると、途端に困り顔になるあたりもBBHFらしい。さらに、拠点となる北海道でスタジオにこもる日々について触れた雄貴が、「こうやって日本各地をまわって、お客さんが来てくれることを目の当たりにすると、自分たちの世界が広がっていく感覚がある」と、今回のツアーの手応えを伝えて、本編はラスト2曲。この日、唯一『Moon Boots』から披露された「Work」では、命の連鎖や、「痛みと共に生きる」というようなメッセージを高らかに歌い上ると、メンバーが激しく体を揺り動かし、エモーショナルな演奏を見せた「シンプル」で本編を締めくくった。

 2部構成のライブを通じてBBHFが表現したものは、物体を通した間接的なコミュニケーションと、人と人とが直に向き合うことで生まれるつながりについて、だ。その最後に「シンプル」という曲が置いたことで、このライブで彼らが伝えたかったものは、そのどちらが正しいか?という問いへの答えではなく、私たちは、どんな方法であろうとも、人とのつながりのなかで生きずにはいられない、というシンプルな想いのような気がした。

 アンコールでは、「涙の階段」を届けたあと、「いまバンドがいい状態だから、このエネルギーが有り余っている状態で、夏までには次のアルバムを出したい」という嬉しいアナウンスもあった。レーベル移籍に際しては、「環境も変わって、名前が変わって、心機一転、来年は激震の……“激震の”って、俺らには似合わないですね(笑)、着実に、でも、段を飛び越えていくので、ついてきてほしいと思います」と、来年の活動への意欲を語った。そして、最後に届けたのは、『Family』からのリカットシングル『なにもしらない』のカップリングとして収録された「黄金」。厚みのあるコーラスワークと、軽快なシャッフルビートのなかで、晴れやかなメロディが紡がれ、言いようのない開放感に包まれてライブは幕を閉じた。

 なお、この日のライブで、BBHFは来年6月からの東名阪ツアーを開催することも発表した。次回のアルバムについては、『Mirror Mirror』寄りか、『Family』寄りかと言えば、『Family』に近い作風になりそうだという。「まだわからないけど、パワフルなものになると思う」という話もあった。あえてGalileo Galileiの頃から数えると、バンドとしての活動歴は十年を越えるBBHF。再びバンドとしての成熟期を迎えつつある彼らの活動は、今後さらに充実したものになっていきそうだ。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:鳥居 洋介】

リリース情報

Family

Family

2019年11月13日

Beacon label

01.花のように
02.なにもしらない
03.真夜中のダンス
04.シンプル
05.水面を叩け
06.あこがれ
07.涙の階段

セットリスト

BBHF ONE MAN TOUR “FAM!FAM!FAM!”
2019.12.16@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01. Mirror Mirror Inst ver
  2. 02. リビドー
  3. 03. だいすき
  4. 04. 友達へ
  5. 05. バック
  6. 06. Torch
  7. 07. Mirror Mirror
  8. 08. Only One(オリジナル:カニエ・ウェスト feat. ポール・マッカートニー)COVER
  9. 09. なにもしらない
  10. 10. 花のように
  11. 11. あこがれ
  12. 12. 水面を叩け
  13. 13. Work
  14. 14. シンプル
  15. 【ENCORE】
  16. 15. 涙の階段
  17. 16. 黄金

お知らせ

■ライブ情報

BBHF TOUR 2020
2020/6/9(火)愛知 名古屋Electric Lady Land
2020/6/10(水)大阪 BIGCAT
2020/6/12(金)東京 新木場STUDIO COAST
Newspeak「No Man’s Empire Tour」
2020/1/25(土)北海道 札幌BESSIE HALL
w/ Newspeak / CVLTE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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