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さなり、激動の2019年は彼をどう成長させたか――「1st LIVE TOUR『SICKSTEEN』」追加公演を観て

さなり | 2020.01.15

 2019年に1stアルバム『SICKSTEEN』とデジタルアルバム『HOMEMADE』をリリースし、その後も新曲を発表し続けてきたラップアーティスト・さなり。昨年10月から繰り広げられていた初めてのワンマンツアー「1st LIVE TOUR 『SICKSTEEN』」は、当初の全国6公演が即日ソールドアウトとなり、北海道・大阪・東京での追加公演が決定した。今回レポートするのは、東京での最終公演となるマイナビBLITZ赤坂の模様である。この日も見事ソールドアウトで、月曜日にも関わらず会場はフルハウスだ。

 開演前の注意事項アナウンスを、さなり自らが楽しそうに買って出たことに気づいたオーディエンスは、早くも興奮状態。この11月に17歳となったばかりの若き俊英は、とりわけ同世代の熱狂的な支持を獲得している。ステージは1MC+1DJのパフォーマンスを軸にしており、DJブースに収まったエディが繰り出すのはエレクトロサウンドの壮麗なシンフォニーから始まる「Find Myself」だ。さなり自身も出演したTwitterドラマ『アスタリスクの花』の主題歌である。流麗なトラックの上で、フレッシュな歌声が舞い始める。クリスピーなラップとメロディアスな歌を自由自在に行き来する、ハイブリッドラッパーの魅力が序盤から全開だ。

 「今日はファイナルだけど、準備はいいですか?」とオーディエンスに言葉を投げかけながら、すぐさま次の「タカラモノ」に持ち込む。幻想的な音世界の中で男女の若いダンサーも登場し、さなりはあたかもリアルとファンタジーを橋渡しするかのように振る舞い、ダンサーとステップを揃えながら歌っていた。ただし、歌やダンスで一方的にパフォーマンスを見せるばかりではない。「赤坂、まずは声出していこうぜ」とコール&レスポンスを巻き起こす彼は、会場全体のムードをしっかりと把握し、熱い一体感を導いている。情緒的なフューチャーハウスのトラックに乗せた「BLUE」は、沸々と湧き上がるエモーションに満たされていた。

 追加公演では、ツアー本編とは少し趣向を変えていることを告げ、またこの日はスマホ撮影を禁止にしたことで「顔面、顔面、顔面。顔が見える」と嬉しそうに語るさなり。杉本雄治(WEAVER)プロデュースによる高品質なアーバンポップ「Mayday」を歌いこなすと、今度はトラップチューンの「unknown」から「FREE STYLE」、さらには「もっと」と、この2019年に発表してきた多様な楽曲群をメドレーにして放っていった。この一幕にはダンサー陣も絡んではいない。一瞬、歌詞を飛ばして笑みを浮かべる場面もあったけれど、濃密な音楽体験をもって、さなりはオーディエンスの視線をしっかりと引き受けながらパフォーマンスしている。

 小学生のときにYouTubeでの動画投稿を始め、遊び感覚でラップや楽曲制作に取り組むようになったことを語るさなり。「ぼんやりと始めたけど、曲を作ればどんどん作りたくなったし、皆さんのおかげで、僕の夢がどんどん広がっていきました」。いわゆる「超十代」のインフルエンサーとして大きな影響力を発揮しているさなりではあるけれども、彼自身は多くのファンと同様に、成長期真っ只中のティーンエイジャーであることを深く自覚しているのかもしれない。

 そんな“夢”への思いを込めた「Dream」は、スタンドマイクでじっくりと、雄大に広がりながら高揚感を駆り立てるサウンドスケープの中で《明日の光なんて 今更なんだよ/意味は無いよ全部君がそうさせたんだ/曇っていた空は きっと教えてくれた/僕の有りっ丈を/終わりの始まりを》とラップされる。深い詩情と同じように、さなりの歌声はオートチューンを噛ませた加工ボイスでありながら、人間らしい情緒を確かに伝えているのである。

 自問の宇宙に漂う「Memory」からミラーボールの煌めく配信シングル曲「Life goes on」、そして『HOMEMADE』を締め括るように配置されていたエモーショナルな「Pride」という流れは、ライブの時間・空間を掌握する表現力の大きさに、心なしかさなりの姿までが大きく見えた。「デビューしてからずっと曲を作ってたんだよ。褒めてください」と冗談めかしながら、さなりはエディと共に激動の1年間を振り返ってみせる。

 そして、10月にミュージックビデオが公開された「I AM ME」では、ドープなトラックとストロングスタイルのラップをもって、一人の表現者としての覚悟を叩きつける。ここからSKY-HIプロデュースによるデビュー曲「悪戯」、さらに「キングダム」へと連なる流れは、逃れがたい興奮もたらすラップチューンの連打だ。「残り2曲、もっと上へ上へ進んでいきたいと思いますんで、みんなもついてきてください!」と呼びかけ、キャッチーな中にも人生観を詰め込んだ「Prince」でひときわ大きな歓声を誘う。オーディエンスにサビを預け、本編の最後には華やかなチャントを浴びながら突き進む「BRAND-NEW」でフィナーレを飾るのだった。

 さてアンコールでは、オーディエンスによるスマホ撮影が許可されるのだが、あの「Flow love」の優しく切ないイントロが響いて、場内がどよめく。Abema TVの恋愛リアリティーショー『白雪とオオカミくんには騙されない♥』への出演は、さなりがより多くの人に認知されるきっかけとなったが、その中でも彼は自らが手がけたこの楽曲の力によって、真に強烈なインパクトをもたらしたと言って良いだろう。

 2020年の3月には、東名阪で初めての対バンツアーを行うことが発表されると、エディと共作したアップリフティングな新曲「SAILOR」で熱狂に追い込みをかける。「最後の最後、今日は2019年最高の思い出にしようぜ」と呼びかけて披露されたのは、名アンセム「嘘」だ。《未完成な僕らなんだ/そっとしててくれよ/もう分かってほしい言葉も/気持ちも全て/幼気な嘘とそっと仕舞ってくれよ/もう嫌なことばっかでも/明日が欲しい》。総勢14名のダンサーと共に、ミュージカルのように繰り広げるそのシアトリカルなパフォーマンスは、まるで若い世代の強烈な躍動感を目に見える形でデザインしてみせるかのようだった。

【取材・文:小池宏和】
【撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル さなり

リリース情報

SICKSTEEN

SICKSTEEN

2019年06月05日

A-Sketch

01.Prince
02.タカラモノ
03.ただのスパイス
04.嘘
05.Mayday
06.もっと
07.Memory
08.悪戯
09.キングダム
10.Never End
11.BRAND-NEW

セットリスト

さなり 1st LIVE TOUR
「SICKSTEEN」追加公演
2019.12.23@マイナビBLITZ赤坂

  1. 01.Find Myself
  2. 02.タカラモノ
  3. 03.BLUE
  4. 04.Mayday
  5. 05.メドレー
    (unknown / FREE STYLE / もっと)
  6. 06.Dream
  7. 07.Memory
  8. 08.Life goes on
  9. 09.Pride
  10. 10.I AM ME
  11. 11.悪戯
  12. 12.キングダム
  13. 13.Prince
  14. 14.BRAND-NEW
【ENCORE】
  1. 01.Flow love
  2. 02.SAILOR
  3. 03.嘘

お知らせ

■ライブ情報

さなり 2020 NEW JACK TOUR
03/22(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
03/25(水) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
03/26(木) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO



FlowBack LIVE TOUR 2019-2020
“Connect”<仙台>

01/18(土) 宮城・仙台Rensa

みやかわくん 大新年祭 2020
01/19(日) 中野サンプラザホール

「Third Party」 Powered by NFP
01/20(月) BIGCAT

KOBE Goodies Collection
~Young Generation~

01/24(金) 神戸VARIT.

カー&カスタマイズモーターショー大阪オートメッセ2020
FM802×OSAKA AUTOMESSE presents CUSTOMIZE ARENA

02/15(土) インテックス大阪 インテックスプラザ

川商ハウスpresents
「てゲてゲハイスクールフェスティバル2020」

02/22(土) アミュプラザ鹿児島 AMU広場

SPACE SHOWER RETSUDEN
NEW FORCE 2020

03/15(日) SHIBUYA WWW

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
-MONSTER baSH × I♡RADIO 786-

03/21(土) festhalle / オリーブホール / DIME / MONSTER / SUMUS cafe’ 瓦町駅地下広場 / FM香川786ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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