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R指定十周年記念47都道府県単独公演ツアー『CLIMAX47』最終公演

R指定 | 2020.01.23

 次世代のヴィジュアル系バンドとして、シーンを牽引してきたR指定。メンヘラを題材とした楽曲の世界観はファンの心をガッツリと掴み、ブレない活動で支持を集めてきた。
2019年は十周年を全面に打ち出し、9月から“R指定十周年記念47都道府県単独公演ツアー 『CLIMAX47』”を敢行。その集大成として、12月29日に両国国技館でツアーファイナル公演を行った。そのライブ直前、彼らはバンドの活動を休止するという“凍結”を発表し、ファンに大きな衝撃を与えたのも記憶に新しい。ファンだけではない。このシーンで着実に勢いをつけてきた彼らには、多くの関係者からも多大な期待がかけられていただけに、複雑な思いを抱いた人がどれほどいたことか。

 それでも、公演当日の会場にはバンドの衣装が展示されていたり、メンバーの等身大パネルが置かれていたりと、ファンを楽しませる施策が盛りだくさん。指定女子、指定男子(彼らのファンの呼び名)も、開演前から会場付近で記念写真を撮ったり、グッズの列に並んだりと、和やかに過ごしていた。

 おそらく、このライブのために両国国技館に初めて足を踏み入れたであろう人達も多かったに違いない。椅子席もあるが、客席の一部は枡席という独特の空間だ。だが、日本を意識したアートワークも多いR指定には、案外しっくりきている気がする。

 ほどなく開演時間となり場内の照明が落ちると、一斉に歓声が起こった。SEが流れ、ど派手なレーザー照明が会場を照らしていく……と、直後に爆音が響き、いやが上にもワクワク感を煽る。トドメにステージ後方のセットからせり上がりでメンバーが登場。この日のためだけに作られた白を基調にした衣装に身を包み、上がりきったところで気合い入れ。十分に気を引き締めた宏崇(Dr)、七星(B)、楓(G)、Z(G)、そしてマモ(Vo)の5人が、それぞれ所定の位置に移動してスタンバイ。そして、宏崇のカウントで1曲目の「CLIMAX」へ。この曲は47都道府県ツアーのスタート時期に合わせてリリースされたシングルで、ロードに出る心意気や、自身を取り巻く音楽シーンに喝を入れるような潔いメッセージが込められたナンバー。各地でパワーをため込んだ楽曲は、この日も一気に広い会場をヒートアップさせた。2曲目の「EROGRO」では観客もメンバーも激しいヘッドバンギングを見せ、伝統的な会場を荒ぶる光景に塗り替えていく。ステージの上手と下手には花道も作られており、メンバーも時に花道を使って後方席のファンを喜ばせた。ちなみに、彼らはツアーがそうだったように、この日も10周年という歴史を感じさせる幅広い選曲で臨んでいる。初めてR指定を見る人にも、その個性が十分に伝わる内容だ。中盤では、各メンバーがMCで挨拶。異口同音に“最高の1日にしよう!”と、ファンの気持ちを鼓舞していく。

 7曲目の「喪失-soushitsu-」はへヴィーなサウンドに乗せ喪失感を表現していくのだが、サビでは思い切りキャッチーになる。マモは「聴かせてくれ!」と、観客にコーラスを要求。ネガティブな感情、状況をポップに歌いきってしまうしたたかさが、彼らの音楽にはある。だが、R指定はアグレッシブに攻めるだけのバンドではない。10曲目の「カナリア」のように、断ち切れぬ思いを切々と歌った悲恋の歌もあり、叙情性の出し方も見事だ。しっかり聴かせたあとは、再び熱い曲を並べて後半ブロックに突入。「-SHAMBARA-」では、またもや派手な照明が飛び交い、「人生謳歌」ではジャンプする観客で両国はすっかりライブハウス状態に。

 このあと、MCでマモは大きい会場らしい煽りをやりたかったようで――。
「やってみようかな。アリーナ! 1階スタンド! 2階スタンド!」と、各エリアから降り注ぐ声援を受け止め、「気持ちいい~!」とご満悦の表情を見せた。そして、「今日はバンドマンもたくさん来てくれていると思うけど……悔しいか? アリーナ!とかスタンド!とか言いたいだろ? どうしたら言えるか……まず、2ショット撮影とかヤメろ(苦笑)」と、昨今の風潮をバッサリ。そして「ミステリアスさを大事にして欲しい」と、ヴィジュアル系シーンを愛するがゆえの思いを語った。
 こうしてラストのブロックでは「フラッシュバック」「-死刑-」「毒廻る」、そして「病ンデル彼女」……と、彼ららしい毒のある楽曲を連発。グイグイと観客を焚きつける。これまでも大きな会場でのライブを経験してきた彼らだが、両国国技館をすっかりホームのように支配してしまった。そんな底力を感じながら本編は終了となる。

 このあと、即座にアンコールの声援が起こったが、どことなくいつもとは違う感覚が漂っていた。さすがに“凍結”が頭をよぎる。アンコールには、1秒でも長くライブを続けて欲しいと願うファンの思いが込められていたのだ。

 コールを受け、メンバーは再びステージへ。続けて披露したのは12月25日に急遽発表されたシングル「遺書」だった。意味深なタイトルだが、切なくも美しく、痛みのあるバラードである。次に温かみのある曲調の「-青春-」を優しく歌い上げていく。どこか郷愁を感じさせる曲も彼らの得意とするところ。しかし、アンコール3曲目にはアッパーな「シンクロ」で、場内に熱気を呼び戻した。曲が終わるとMCタイムとなる。もしかしたらファンにとって、この日いちばん気になっていた時間帯かもしれない。軽い雑談のあと、マモは“凍結”の理由を語り始めた。
「“凍結”の理由はぶっちゃけて言うと特にないんですよ。10年間休まず走ってきて、R指定でできることはやり切った。それ以上のことは考えつかなかった。だからちょっと時間が欲しいと。止まって考える時間が欲しいなって。すごくワガママなことは分かってるけど、それを他のメンバーにも伝えて、話し合って理解してもらいました」

 その流れで他のメンバーからも今の思いが語られた。
「初めてマモから言われて、俺は“いいんじゃない?”って」(Z)
「俺が死ぬみたいなメッセージも届きましたけど……俺は死なないし、R指定も死ぬわけじゃない。死なないので皆さん、元気出していきましょう!」(宏崇)
「そうだね、ハッピーにいこ! ハッピーに。今日は最高のライブをしたいと思ってのぞみました。今日という日を刻みつけて帰ってください」(七星)
「最初、俺は活動しながら考えることはムリなんか?って。でも、ここまで迷ってるマモを見たのは初めて。やっぱり時間がいるんだなって。今日は残り、楽しんで帰ってください」(楓)

 立ち止まる理由は、あまりにも真っ直ぐで、そこに反論の余地などなかった。そして、ライブは終盤を迎える。
マモは「最高の景色を見せてくれ!」と煽り、「規制虫」へ。ここからは「魅惑のサマーキラーズ」や「VISUAL IS DEAD」など、威勢のいいナンバーをプレイ。そして、ついにあと1曲を残すのみになってしまった。
マモが「みんなの青春を一度お返しします。素敵な思い出としてとっておいてください」と語りかけると、さすがに場内からはすすり泣く声が漏れる。複雑な空気の中、ラスト曲「-透明-」へ――。曲が終わると、メンバーはなるべく時間をかけて声援に応えていく。そして、滅多にやらないという観客との記念撮影を行った。5人が楽屋に帰ってからもアンコールの声はなりやまなかったが、無情にも終演のアナウンスが流れる。これだけ厚い支持を得ているバンドの圧倒的な姿を見ていると、正直、ここでいったん活動を止めてしまうのは残念でならない。しかし、立ち止まることを選んだ勇気も潔い決断だ。現段階で再始動云々を語ることはできないが、個人的にはいつかまたこの5人がステージに戻ってくる奇跡を期待したい。

【取材・文:海江敦士】
【撮影:ゆうと。】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル R指定

リリース情報

遺書

遺書

2019年12月25日

SPEED DISK

01.遺書
02.-透明-

セットリスト

R指定十周年記念47都道府県単独公演ツアー『CLIMAX47』
2019.12.29@両国国技館

  1. OPSE
  2. 01.CLIMAX
  3. 02.EROGRO
  4. 03.アポカリプティックサウンド
  5. 04.ラストレイン
  6. 05.アビスカルマ
  7. 06.ぼくらのアブノーマル
  8. 07.喪失-soushitsu-
  9. 08.予言
  10. 09.-ZANGE-
  11. 10.カナリア
  12. 11.-SHAMBARA-
  13. 12.人生謳歌
  14. 13.フラッシュバック
  15. 14.-死刑-
  16. 15.毒廻る
  17. 16.病ンデル彼女
【ENCORE】
  1. 17.遺書
  2. 18.-青春-
  3. 19.シンクロ
  4. 20.規制虫
  5. 21.殺したいくらい愛してる
  6. 22.魅惑のサマーキラーズ
  7. 23.NEVADA
  8. 24.VISUAL IS DEAD
  9. 25.-透明-

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