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『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』8/23 横浜アリーナ

スピッツ | 2017.09.07

結成30周年を迎えたことを記念して、7月1日・静岡エコパアリーナを皮切りにスタートさせた全国ツアー『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』も、いよいよ後半戦。横浜アリーナ公演2デイズの初日も、たくさんのファンが会場に集まって、スピッツを祝福していた。メンバーと同い年の主催者がスタート前のアナウンスで語っていたが、実はこのバンドが横浜アリーナでワンマンライヴを行うのは今回が初めて。意外な事実が明かされて、開演前から観客の期待は大いに高まっていた。
スタートを告げるSEが鳴り響き、ステージに登場した草野マサムネ(Vo・Gt)、三輪テツヤ(Gt)、田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)、サポートメンバーのクジヒロコ(Key・Cho)を出迎えた拍手は特大級。演奏が始まった瞬間、横浜アリーナは瑞々しいサウンドで一気に彩られた。「30周年をおかげさまで迎えることができました。噂で聞いたんだけど、今日、1000回目のライヴらしいんです。本当かどうかわからないけどね(笑)。ちゃんと数えたらわかるんだろうけど噂に身を委ねて、今日は1000回目のライヴということにしておこうと思います」、草野の序盤のMCによって一際和やかなムードとなった会場内。そして、30年間の足跡を辿れる様々な曲たちが披露されていった。

ツアーはこの先も続くので、言及する曲名は最小限にとどめておくが……スタートするや否や観客の手拍子が加わり、心地よい空間を生み出していた「ヒバリのこころ」、美しいアルペジオとハーモニーでうっとりとさせてくれた「ロビンソン」、穏やかなアンサンブルを構築していた「運命の人」など、長年に亘って愛されている曲の数々は、ファンの心の内にある大切な思い出を喚起していたのではないだろうか。7月にリリースされた3枚組のシングルコレクション『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』に収録された新曲「ヘビーメロウ」も披露されたが、互いのフレーズを実に楽しそうに交わし合っていたメンバーたちの姿が印象深い。スピッツの核にあるピュアなエネルギーに触れたような気がする素敵な演奏だった。

そして、メンバーそれぞれのキャラクターが滲み出ていたMCも心温まるものだったので、いくつか紹介するとしよう。
「俺ね、子供が好きなんだよ。けどね、俺を見ると絶対に泣くんだよね。今日、スタッフの赤ちゃんが来てて、“泣かないだろうな”と思ったら泣かれました」(三輪)
「昔、おばあちゃんと一緒に俺たちの撮影を見てた女の子が“わたし、あのおじちゃんきらい”って言って、“またテツヤ、嫌いって言われてるよ”と思ったら、俺のこと見てた(笑)」(草野)
「スピッツって、曲はわかりやすいけど歌詞が変とか、ギターが何であんなルックス? とか、何でライヴでベースがあんなに不必要な動きをするの? とかあるけど(笑)。でも、俺はそういう歪(いびつ)なところがロックだと思っています」(田村)
「30年の中での恥ずかしい話。深夜にやっているテレビ番組に出た時、“ドラムス担当、龍男です!”って、気合が入った北関東のノリで言っていて、今観ると顔から火が出るくらい恥ずかしいんです(笑)。そういうのを養分にして今日があります」(﨑山)
「私が今日着ているTシャツは、30年前に買ったザ・キュアーのTシャツなんです。穴とか開いてないし、色も褪せてないねって言われるんですけど、“それはあなたたち(スピッツ)のことでしょ”って言うことにしています(笑)」(クジ)
時々、お互いにツッコミを入れ合ったりもしつつ、彼らは明るい笑顔を浮かべていた。このような和気あいあいとしたメンバー同士の関係性も、スピッツがファンから深く愛され続けている理由の1つなのだと思う。

「30歳のバースデー、良い感じでお祝いしてもらいました。本当にありがとうございます。バンドにとって通過点だと思うので、これからも、もっとオモロい曲とか変な曲とか(笑)。微妙に期待を裏切ったりもしながら、精一杯やっていきますので、末永くよろしくお願いします」、アンコールで草野がメンバーを代表して挨拶。そして、心のこもった演奏を最後まで届けてステージから去った彼らを、爽やかな歓声が見送っていた。

ツアーは今後も続き、10月1日の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)公演でファイナルを迎える。そして、先日発表されたのでご存知の方々も多いと思うが、スピッツの関西エリアでの主催イヴェント『ロックロックこんにちは!』と、長年に亘ってこのバンドのアートワークを手がけてきたCentral67とのコラボ展示会『SPITZEXPO2017』が、10月3日から10月8日に大阪で開催されることが決定した。アルバムのジャケットで実際に使われたリリエンタールグライダー(14thアルバム『小さな生き物』)、謎の生物モニャモニャ(15thアルバム『醒めない』)が関西初上陸。その他にもCDジャケットにまつわる制作物、アートディレクター木村豊(Central67)のアイデアスケッチ、ツアーで使用したセットの一部や楽器、『ロックロックこんにちは!』のダイジェスト映像など、たくさんの貴重な展示を見られる機会になるという。スピッツの30周年は、まだまだお楽しみが続きそうだ。

【取材・文:田中 大】
【撮影:内藤順司/石橋俊治】

※掲載写真は8月24日公演のものとなります。

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リリース情報

『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』

『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』

2017年07月05日

ユニバーサル ミュージック

【DISC 1】
CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

1.ヒバリのこころ
2.夏の魔物
3.魔女旅に出る
4.惑星のかけら
5.日なたの窓に憧れて
6.裸のままで
7.君が思い出になる前に
8.空も飛べるはず
9.青い車
10.スパイダー
11.ロビンソン
12.涙がキラリ☆
13.チェリー
14.渚
15.スカーレット


【DISC 2】
CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

1.夢じゃない
2.運命の人
3.冷たい頬
4.楓
5.流れ星
6.ホタル
7.メモリーズ
8.遥か
9.夢追い虫
10.さわって・変わって
11.ハネモノ
12.水色の街
13.スターゲイザー
14.正夢
15.春の歌


【DISC 3】
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection

1.魔法のコトバ
2.ルキンフォー
3.群青
4.若葉
5.君は太陽
6.つぐみ
7.シロクマ
8.タイム・トラベル
9.さらさら
10.愛のことば-2014mix-
11.雪風
12.みなと
13.ヘビーメロウ
14.歌ウサギ
15.1987→

お知らせ

■ライブ情報

SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”
09/16(土) 北海道総合体育センター北海きたえーる
09/17(日) 北海道総合体育センター北海きたえーる
09/30(土) 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)
10/01(日) 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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