レビュー

若旦那 | 2011.02.01

「お前も大人になったら分かるよ」

思春期には、この言葉を何度両親に言われたことだろう? 好き勝手にやりたいことをやった末にかかる、おやじやおふくろからのストップ。その度に放つ自分の反論に、両親はことあるごとに、説明しにくそうに遠い目をして最後はこの言葉で締めた。そして、その言葉を言われる際に、当時はその意味が理解できず、納得できない自分が居た。正直、"逃げてる!!""ごまかしている!!"とさえ思っていた。しかしあれから齢を重ね、今の自分だったらハッキリ言える。「大人になれば分かる」、この言葉こそが本当の答えだったのかもしれないことが…。

かく言う自分も今では、子供に反論されて、ことある毎に、"ああ俺もこんなんだったな..."と思い返すことがある。その度に、あの時の自身の親たちのように、同じ言葉で子供たちを諭す自分と出会う。そして、"この子も自分の子にきっと近いことを言われ、同じような答えをするんだろうな..."と微笑ましくなってくる。

あの頃は、いくら言われても、いくら説明されても理解できなかったことが、今ではいつの間にか理解しており、言う立場が言われる立場になっている...。ああ、なんかそれって凄く摂理のような気がする(笑)。

そして、若旦那のソロ第一弾ナンバー「いのち」を聴くと、上記の場面がブワッと蘇ってくる。 親への感謝、そして自身の子への想いの引き継ぎ等々、命や想いの果てしなきリレーさえ感じる同曲。

リリックの所々に韻を踏みながらも、あの野太い、どっしりとした、存在感のある声ながら、湘南乃風でのラガマフィンスタイルとは違い、このソロでは完全に歌として歌い切っている。

自身の半生がストーリーテリングされているような同曲は、ピアノをメイン楽器に、ストリングスやホーンを大フィーチャー。湘南乃風とは違ったサウンドタイプに、上述の若旦那の歌声がイキイキと伸びやかに広がっていくもの。ラストではブワッと広がっていくように、母親の愛にも似た包容力たっぷりのゴスペルライクな歌声が聴くものに生命力を与えてくれる。

不器用でぶっきらぼうで、美しいところなんて一つもないはずなのに、非常に美しさを感じる同曲。そこには、この若旦那が歌うからこその信憑性に満ちている。

「因果応報」という、身も蓋も無い例えではけっしてない、成長して行く摂理や大きなサイクルを想い起させてくれる今回の若旦那の「いのち」。いつか気づく、"ああ、あの時の言葉はこういう意味だったのか…"は、自身の成長と捉えたい。 自分と同世代の父親に、そして、その子供たちに是非聞いてもらいたい曲だ。

【 文:池田スカオ和宏 】

tag一覧 男性ボーカル 若旦那 配信限定 着うた

リリース情報

「いのち~桜の記憶~」(配信限定/着うたフル(R))

「いのち~桜の記憶~」(配信限定/着うたフル(R))

発売日: 2011年01月26日

価格: ¥ 400(本体)+税

レーベル: Tank Top Recoreds

収録曲

「いのち~桜の記憶~」

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