レビュー

桑田佳祐 | 2011.02.23

 先行シングル「EARLY IN THE MORNING~旅立ちの朝~」を聴いたとき、「また桑田佳祐の季節が始まるのだな」とふと思ったことを思い出す。9年ぶりとなるソロアルバムの水先案内チューンとして、相応しいエロ・ソング(笑)。実際、この歌を子供たちが歌っているのを聴いてヒヤッとするのは、僕だけではあるまい。

 90年代半ば、サザンが「マンピーのG★SPOT」で活動を再開したとき、正直、僕は「国民的バンドが、こんな曲を出していいの?」と思ったのだった。だが、そのとき、桑田は「休んでたんだから、これくらいのことをやんないと、世間がこっちを見てくれないの」と語ってくれた。そのときと同じ匂いを「EARLY IN THE MORNING~旅立ちの朝~」に感じた。だから、絶好調のソロを期待していた。そのとき、彼の病の報せを聞いた。

 ひと安心したところに『MUSICMAN』が届いたのである。

 第一印象は、初期のサザンを彷彿させるアレンジであることだった。70年代のアメリカン・ロックの持つ柔らかな明るさが身上だった、1~3rdアルバムの頃のサザンのニュアンスがそこにあった。もちろん全曲がそうであるわけではないが、今の時代の音楽として聴くとき、このアルバムのサウンドが与えてくれる安心感は貴重なものだと思った。それは簡単にいえば、桑田と心を通じ合わせたミュージシャンたちの生演奏だからこそのもので、このアルバムの重要なファクターであることは間違いない。

一方で、歌詞は、まさに21世紀の日本に山積みされている問題へ、正面から切り込む。それは“上から目線”ではなく、庶民目線の桑田節。舌鋒は、ふがいない政治指導者や、アホな官僚に容赦なく向かっていく。

 このアルバムは、ちゃんと世の中を歌っている。そこが大事。もともと桑田の持ち味である“ノスタルジー”と“アグレッシブさ(攻撃性)”が、作品を成り立たせている。そして、それらはそれぞれバラバラにあるわけではなく、お互いに補完しあっている。サウンドのもたらす安堵が、シビアな現実をありのまま受け入れることを促してくれる。それは、そこにある怒りや不安も同時に受け入れることでもある。普段なら忘れてしまいたい憂鬱な事実が、桑田の声を通すとスルリと入ってくる。いまさら、音楽の持つ力を再認識してしまう。

 このアルバムには、桑田独自の境地である“アグレッシブなノスタルジー”の開花があると思う。“MUSICMEN”ではなく、“MUSICMAN”という一人称のタイトルの意味は、その独自さの象徴なのだろう。いい意味で、穏やかではない一枚だ。

【 文:平山雄一 】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 桑田佳祐

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MUSICMAN

発売日: 2011年02月23日

価格: ¥ 3,143(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

1. 現代人諸君!!
2. ベガ
3. いいひと ~Do you wanna be loved ?~
4. SO WHAT ?
5. 古の風吹く杜
6. 恋の大泥棒
7. 銀河の星屑
8. グッバイ・ワルツ
9. 君にサヨナラを
10. OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~
11. EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~
12. 傷だらけの天使
13. 本当は怖い愛とロマンス
14. それ行けベイビー!!
15. 狂った女
16. 悲しみよこんにちは
17. 月光の聖者達

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