見どころ満載のDVDだが、なんといっても吉田美和の“女優”っぷりには毎度ながら驚かされる。特に、隠れた人気曲をピックアップした“裏ドリ”だから、“表”の顔とはまた別の美和キャラが全開になって、その千変万化の表情が普段以上に楽しめるのだ。

　たとえば悲しいラブソングばかりをずらりと揃えた“どん底 コーナー”では、恋愛の深い謎を歌声ばかりでなく、目線や仕草で見せてくれる。傑作1stソロアルバム『beauty and harmony』からの「バイバイ」は、他の女性に心を移した彼に“こんなに楽しい私と、もう逢えないんだよ”という気持ちを込めて♪ばかだな♪とつぶやくように歌うシーンは必見だ。

　一方で、セクシーな美和が堪能できる“黒ドリコーナー”も凄い。グルーヴィーなサウンドに乗ってのダンス・パフォーマンスは、男子なら思わず「ワルい女だなあ」とため息が出る。たぶん、女子は 「美和さん、カッコいい！」と叫ぶに違いない。観た反応に、こんなに男女差が出るライブ映像は滅多にないだろう。

　また“表じゃやれないモンキーガール・シリーズ”では、モンキーのしっぽを付けた美和のチャーミングな“演技”が楽しめる。

　かわいい女の子がいるから、バッドガールのセクシー度がアップし、そのバッドガールがあるから、ファンキーなお姉さんの面白味が増す。すべてのキャラの魅力は、美和の女優っぷりにその源泉がある。歌ばかりでなく、普遍的な表現者として、吉田美和はやはりシーンの中で頭抜けた存在なのだ。

　そしてそんな女優・美和を盛り上げているのがダンサー陣。 単に踊りだけではなく、美和の演技をサポートする名脇役を見事に務めいて、それが映像として細かい顔の表情まで収録されていることも、このDVDのストロング・ポイントだ。

　おっと、もちろん中村正人の男優っぷりも忘れちゃいけない。“アンドレ中村とオホーツク・ボーイズ”の迷演技も徹頭徹尾笑える。

　“裏ドリ”だけに、音だけでなく映像があると３倍楽しいのは間違いなし。って、なんで３倍？　そのワケが知りたければ、見るべし！

【文 : 平山雄一】