レビュー

木村カエラ | 2013.10.30

 このアルバムを聴くと、木村カエラが熱心な音楽リスナーであることがわかる。普段から様々な音楽を聴いているのだろう。そう思わせるほど、耳がいい。楽曲の魅力、特にボーカルのニュアンスやムードをすくい取るのが、ものすごく上手いのだ。
 ツイッターで“カバーして歌って欲しい曲”を募集したコラボカバーアルバム『ROCK』。60年代、70年代、80年代の洋楽ヒット曲12曲を、12組(国内10組、海外2組)のアーティストとコラボした作品。木村カエラは、自分の声の特徴を生かしながらも多様なジャンルの12曲を歌い分けている。

 特筆すべきはくるりの岸田繁とコラボレートした「MY GENERATION」(The Who)。この曲の特徴でもあるボーカルの“ちょっと前のめりになるような、ため過ぎギリギリ一歩手前”なディレイ感を、見事に再現している。しかも“そこまでやるか”と思うくらいに、オリジナルに忠実に大胆に歌い切っている。しかし嫌味はまったく感じられない。この絶妙なニュアンスが出せるのは、彼女自身が、音楽にリスペクトし、常日頃から様々な音楽を聴いている結果だ。体に染み込んだニュアンスを自然にアウトプットしている感じ。

 ところで。a-ha(岡村靖幸とコラボ)やLipps,Inc.(石野卓球とコラボ)あたりの80年代が大好物の私なのですが、これらの曲での彼女のボーカルは、時にソウルフルでもあり面白かった。元々、高中音のロングトーンなどは、心地よく伸びるし上手いなぁと思っていたが、今作を聴き歌い手としても、奥深さがあると思った次第。選曲、コラボしたアーティストと、音楽好きの注目を集めること必至の内容だが、この“ナイスなアイデア=コンセプト”を上書きするクオリティーが魅力。名盤です。

【文:伊藤亜希】

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リリース情報

ROCK(初回盤A)

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ROCK(初回盤A)

発売日: 2013年10月30日

価格: ¥ 4,572(本体)+税

レーベル: ELA

収録曲

1. Take On Me
2. Girls Just Want To Have Fun
3. FUNKYTOWN
4. Two Of Hearts
5. Heart Of Glass
6. Crazy Little Thing Called Love 
7. SUNDAY MORNING
8. You Really Got Me
9. Fight For Your Right To Party
10. SWEET DREAMS (ARE MADE OF THIS)
11. MY GENERATION
12. RAINY DAYS AND MONDAYS

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