レビュー

松任谷由実 | 2013.11.27

連載 第2週
松任谷由実 『POP CLASSICO』


 40年前にリリースされたデビュー作「ひこうき雲」が、今年、宮崎駿監督のラストムービー『風立ちぬ』の主題歌として再ヒット。ユーミン楽曲の新鮮さと生命力に改めて驚かされた。というより、この名作は詞曲歌唱編曲演奏録音のすべてに渡って日本のシーンを前進させた画期的な作品だった。それだけに当時は“進み過ぎ”ていて、意義が理解されるまでに何年もかかった。たとえば“サウンド”という言葉は、大瀧詠一の『A LONG VACATION』(1981年)で一般にも知られるようになったが、アルバム『ひこうき雲』はその先駆だったのだ。そしてそのタイトル曲は、今もまったく色褪せていないことが、『風立ちぬ』によって証明されたわけだ。先日、テレビのドキュメントで、宮崎監督が『風立ちぬ』の試写の場で「自分の作品を観て、初めて泣いた」と語っていたが、僕はその涙は「ひこうき雲」の力だと思っている。

 さて新作『POP CLASSICO』は、そんな“ユーミンの聴き方”を久しぶりに思い出させてくれた。先駆者・ユーミンは、初期から“コンセプト・アルバム”を作り続けてきた。『POP CLASSICO』ではオープニングの「Babies are popstars」で、“子供たちこそ未来”というコンセプトを明確に打ち出す。さらにそれを抽象的なものとせず、きちんと具体像を示してくれる。「頑張ろう」とか「キミが世界の中心」とか、安っぽいコンセプトが横行しているシーンに一石を投じる気迫がある。ちなみに僕はこの「Babies are popstars」を聴いて、 ユーミンの9thアルバム『時のないホテル』を思い出した。“時代”というものに対する独自の向き合い方に、共通項を感じたのだ。

 またユーミンはラブソングの名手と言われることが多いが、彼女は情景描写の達人でもある。「雨に願いを」という曲では、雨の遊園地が目の前に浮かんできて、歌詞の筆致の確かさに心を動かされた。

 そうしてユーミンは、言葉だけでなく、アレンジやサウンドでも情景を描こうとする。その際、肝要なのはミュージシャンの選択だ。今回はマイケル・ジャクソンやスティーリー・ダンのレコーディングに多数参加しているディーン・パークスが、半数の曲でギターを弾いている。これが的確なプレイで素晴らしい。さらには、別の曲でギターを弾いている鳥山雄司が、ディーン・パークスそっくりに弾いていたりして、感心するやら、笑えるやら。

 アーティストが思い描くイメージを具現化することに、ミュージシャンやスタッフ全員が協力する。これがユーミンのアルバムを聴く醍醐味なの だ。アルバムのジャケットに書かれているギタリストやドラマーや、ビジュアルを作ったアート・ディレクターなどの名前から、いろんな想像が膨らむ。それは“アーティストの心に触れる”ことに他ならない。マニアックと言えばそれまでだが、こんな楽しみを知らないリスナーは、もったいなぁい(きゃりーぱみゅぱみゅ調で)。

 ということで、今回の素晴らしいヒビは、鳥山くんの愛情あふれるミュージシャンシップでした!

【文・平山雄一】

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リリース情報

POP CLASSICO(初回限定盤)

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POP CLASSICO(初回限定盤)

発売日: 2013年11月20日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: EMI Records Japan

収録曲

01.Babies are popstars
02.Laughter
03.愛と遠い日の未来へ (Album Version)
04.今だけを きみだけを
05.雨に願いを
06.Your Eyes Are Magic ~ 終止符をおしえて
07.Hey girl ! 近くても
08.Discotheque
09.Early Springtime
10.夜明けの雲
11.シャンソン
12.MODELE

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