レビュー

the pillows | 2014.02.27

連載 第14週
V.A.
『ROCK AND SYMPATHY
 -tribute to the pillows-』


メビウスの帯を歩け

 the pillowsは、洋楽と邦楽の境目をずっと綱渡りしてきた。その25年の軌跡は、ある意味でJ-ROCKの“裏ヒストリー”と言える。いや、25年経った今、もうそれは裏とは言えず、表になっている。そんなことを言うと、山中さわおに叱られそうだが、このトリビュート・アルバムを聴くとますますその実感が強くなる。彼はきっとこう言うだろう、「表は裏で、裏は表なんだよ」と。

 そう、the pillowsは、メビウスの帯なのだ。一本道をずっと歩いていくと、いつの間にか裏通りは表通りに、またしばらくすると、表通りは裏通りになる。洋楽のカッコよさに憧れて始まったJ-ROCKは、日本を活動の拠点にする限り、洋楽テイスト一点ばりではやっては行けない。それでも山中は自らの美意識に忠実にバンドを続けてきた。それを指してPUFFYは「さわおさんの曲は、どこかに絶対、洋楽のカッコよさが隠れてる」と発言していた。

 このアルバムのトップを飾るのはWHITE ASH。バンド名と同じ「White Ash」をカバーしているのだが、やり方はthe pillowsの“洋楽”部分に焦点を当てているように聴こえる。一方、2曲目「この世の果てまで」を、グッドモーニングアメリカはとても“邦楽的”に解釈してカバーしている。トリビュートに参加した後輩バンドたち は、それぞれの感性でthe pillowsの重層的な魅力のひとつに焦点を当てる。どれもが確かにthe pillowsの楽曲なのだが、それぞれのカバーがそれぞれの輝きを放っているのが興味深い。the pillowsがシーンに与えた影響の多様さは、今、特筆されるべきだろう。

 個人的にはBase Ball Bearの「Funny Bunny」が好き。♪地面は続いているんだ 好きな場所へ行こう♪という歌詞は、まるでthe pillowsの生き様そのもののように響く。メインストリートとバックストリート、どちらもが魅力的なのだが、その昔、ロックはバックストリートにあった。そういえば、さわおくんと最初に出会ったのは、まだ高校生だった彼が札幌にストリート・スライダーズを観に来た時だった。以来、the pillowsは、ずっとストリートを歩き続けている。

【文:平山雄一】

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リリース情報

ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-

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ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-

発売日: 2014年02月26日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: avex trax

収録曲

1.White Ash/WHITE ASH
2.この世の果てまで/グッドモーニングアメリカ
3.インスタント ミュージック/9mm Parabellum Bullet
4.Funny Bunny/Base Ball Bear
5.スケアクロウ/WEAVER
6.エネルギヤ/Scars Borough
7.ノンフィクション/東京カランコロン
8.開かない扉の前で/カミナリグモ
9.Fool on the planet/UNISON SQUARE GARDEN
10.カーニバル/シュリスペイロフ
11.Blues Drive Monster/a flood of circle
12.ハイブリッド レインボウ/ふくろうず
13.ストレンジ カメレオン/髭
14.No Substance/THE BOHEMIANS

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