レビュー

さかいゆう | 2014.09.03

 さかいゆうは、マニアだと思う。
 リスナーとして音楽マニアだし、楽器マニアだし、機材マニアだし、アレンジもマニアックだし。過去の作品や活動展開からも、マニアっぷりがぷんぷん匂う。

 しかし、このマニア・フレーバーが、まったく鼻につかない。かなり上質のいい香りなのだ。アロマに例えるなら、選りすぐりの材料で作られた純度の高い上質なエッセンス。上質だと、ラベンダーひとつとっても、空気への滲み方がまったく違うのです。おっと、熱くなっちまった。

 デビュー以降、前述したマニアっぷりを極上のポップスに昇華することが、さかいゆうというアーティストの使命だったのではあるまいか。
 この使命の元、彼は多くの質の高い作品をリリースしてきたが、初のEPとなる新作『サマーアゲインEP』は、その中でも屈指のポップス作品に仕上がった。
 ひとことで言うならば、さかいゆう的シティ・ポップス。新作のタイトルよろしく“夏の終わり”をテーマにした新曲3曲(収録曲は6曲)が秀逸だ。R&B、ファンク、AOR、ソフトロック、フィリーソウル、ジャズなど、さかいのルーツであるブラック・ミュージックの“キラキラ”を抽出したような曲ばかり。ジャジーなティストのM3の歌詞にもニヤリ、だ。♪ヘッドホンしながら タツローを聴く~ や、♪JBばかり聴くファンキー妊婦~ など、リスペクト&オマージュを素直&コミカルに表現した言葉のチョイスが面白い。ハッとしてグッド!

 インパクト大のジャケットから一目でわかるように、海が舞台。国内なら横浜・湘南あたりになるのだが、そこをしっかりウェスト・コーストにして聴かせるあたりが、マニアの実力だ。しかし彼の声は、シティ・ポップスにとても似合うな。透明感と主張が絶妙。リズムにメロにその声(コーラスワークも含)に、心がスウィングするヘビロー決定の1枚です。

【文:伊藤亜希】

tag一覧 シングル 男性ボーカル さかいゆう

リリース情報

サマーアゲイン EP

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サマーアゲイン EP

発売日: 2014年09月03日

価格: ¥ 1,389(本体)+税

レーベル: アリオラジャパン

収録曲

1.サマーアゲイン
2.あの夏の僕にグッバイ
3.Headphone Girl
4.時季(とき)は巡る(Remix at big turtle STUDIOS)
5.薔薇とローズ(Remix at big turtle STUDIOS)
6.サマーアゲイン(backing track) 

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