レビュー

降谷建志 | 2015.05.20

連載 第71週
降谷建志「Stairway」


降谷は「Stairway」=らせん階段を昇る“旅”に、何を見ようとしているのか?

 配信シングル「Swallow Dive」でその一端を見せたDragon AshのKjこと降谷建志のソロ・プロジェクトの第2弾作品がシングル「Stairway」だ。

 ソロとしてバンド・ミュージックの枠を取り払った降谷は、いち音楽家として自由な創作活動を開始した。「Stairway」のイントロでエキゾティックなテイストのシンセが聴こえたとき、僕は直感的に“アイリッシュ・ミュージック”の香りを感じた。しかしその香りはそれ以上、強くなることはなく、歌が始まる。ところがBメロに差しかかったとき、バックでアイリッシュ・ロックの雄“U2”を彷彿とさせるディレイを駆使したギターが鳴り出した。同時に、胸を大きく響かせるボーカリゼーションで、声の低域を効かせる。これは今までなかった手法である。爆発的なシャウトをするのではなく、抑えた声で歌うことで、降谷は独特の“静かな説得力”を獲得することに成功した。

 さらには、同じニュアンスのハーモニー・ボーカルを自分で付けることで、その“静かな力”に美しさを与えたのだった。この短いフレーズが、この曲の最大の聴きどころになっている。バンドで鳴らすべき音楽と、ソロでなくては表現できない音楽がある。その区別を、降谷がはっきり自覚しているからこその新しいボーカル・サウンドが誕生したのだった。

 このシングルのタイトルの意味は“らせん階段”だ。手すりの付いた、回る階段を想像してくれればいい。それは、同じところを巡っているようでいて、確実に高度を上げる仕組みを持つ。その階段に降谷は何を託しているのだろう。高く上がれば上がるほど、目に見える景色は広くなる。しかし、自分が出発した場所からはどんどん遠くなっていく。

 もしかしたら降谷は、そうしたバンドの状況をソロの角度から眺め直すためにこの「Stairway」= らせん階段を書いたのかもしれないと思った。♪いくら歩いたって 自分からは逃れられやしないよ♪というフレーズは、上から見れば同じと ころを回っているように見えることを言っているように思える。だからラストの♪この肩の荷物も その中の記憶も 自分を成す一つとして  愛そう♪というフレーズが輝く。それは“精神のミクスチャー”と呼ぶべき態度だ。

 このシングルの後、いよいよソロアルバム『Everything Becomes The Music』の全貌が明らかになる。ワクワクしながら待ちたい。

【文:平山雄一】

tag一覧 シングル 男性ボーカル 降谷建志 Dragon Ash

リリース情報

Stairway(完全生産限定盤)

Stairway(完全生産限定盤)

発売日: 2015年05月20日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

1. Stairway
2. Skin & Bones

生産シリアル番号入り紙ジャケット仕様/KENJI FURUYAロゴステッカー封入

スペシャル RSS

もっと見る

トップに戻る