レビュー

Mr.Children | 2015.06.03

連載 第73週
Mr.Children『REFLECTION』


ミスチルの足音を聞いてる誰かがきっといる

 その時の思いや感情と、メロディや歌詞を書く力、歌の表現力、演奏能力などが合わさって一つの楽曲が誕生する。それらのバランスが良いとき、その楽曲はリスナーの胸を打つ。どれか一つ欠けても、そうはならない。同じように、何かが多過ぎてもバランスは崩れて、歌は伝わらない。

 このところ、ミスチルは“新しいバランス”を探す旅に出ていたように思う。2年7カ月ぶりとなるニューアルバム『REFLECTION』からは、その旅の日々が聴こえてくる。

 素直に胸の内を歌い上げる「忘れ得ぬ人」は、彼らの原点に戻ったようなバランスのラブソングとして聴こえてくる。その原点を意識化して、“いくら名曲をリメイクしても、オリジナルを超えることはない”とポップスの法則として歌う「You make me happy」は、時間軸に二重の仕掛けがしてあって、さすがベテランのソングライティングだ。

 また「斜陽」は、桜井和寿がリスペクトする甲斐バンドを彷彿とさせるナンバーで、センチメンタルな描写がリスナーを揺さぶる。

 それらのどれもがミスチルなのだが、歌の“大きさ”を彼らの技術が遥かに上回っているので、余裕があり、リスナーとしては楽に聴けるのだが、切迫感は伝わってこない。

 一方で「運命」は、これまでの言葉とメロディの関係に変化を求めていて、ギリギリの勝負に出ている。しかし、そのトライはやや力まかせで、バランスが整っていない。そこがいいとも言えるのだが、おそらくミスチルは今後もっと完成度を上げてくるだろう。彼らはベテランの域に入っても、過去を繰り返すのではなく、新しい境地を目指しているのだ。

 その潔さに敬意を払うと同時に、僕は個人的には「足音~Be Strong」が好きだ。この歌は“ミスチルの今”を歌っていて、曲調やアレンジと歌詞のテーマが同じ重さで、バランスがいい。♪この足音を聞いてる 誰かがきっといる♪というリリックはその典型で、僕は『REFLECTION』を象徴するフレーズとして嬉しく聴いたのだった。

【文:平山雄一】

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リリース情報

REFLECTION{Drip}(初回盤)[CD+DVD]

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REFLECTION{Drip}(初回盤)[CD+DVD]

発売日: 2015年06月04日

価格: ¥ 3,213(本体)+税

レーベル: トイズファクトリー

収録曲

01. 未完 
02. FIGHT CLUB 
03. 斜陽 
04. Melody 
05. 蜘蛛の糸 
06. Starting Over 
07. 忘れ得ぬ人
08. Reflection 
09. fantasy 
10. REM 
11. WALTZ 
12. 進化論 
13. 幻聴 
14. 足音 ~Be Strong

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